診療科・部門

骨・軟部腫瘍クリニック

概要

当クリニックでは、全身の骨・関節および軟部組織(脂肪組織,線維組織,血管・リンパ管,筋肉,腱・滑膜組織,骨・軟骨および末梢神経組織など)から発生する運動器原発の骨・軟部腫瘍(その内、悪性の場合は”肉腫”と呼ばれます)全般に対する診断・治療を行っています。さらに当科では、他科とも連携しながら、様々ながんの骨転移(転移性骨腫瘍)や骨転移(骨病変)で発見される原発不明がん・悪性リンパ腫や骨髄腫などの血液がんに対する診断・治療も行っています。

取り扱っている主な疾患と治療法

1.良性骨腫瘍および骨腫瘍類似疾患

骨軟骨腫(外骨腫)、内軟骨腫、非骨化性線維腫(線維性骨皮質欠損)、線維性骨異形成、骨線維性異形成(骨化性線維腫)、類骨骨腫、骨芽細胞腫、軟骨芽細胞腫、孤立性骨嚢(のう)腫、骨好酸性肉芽腫(ランゲルハンス細胞組織球症)など様々な種類のものがあり、小児や比較的若年者に好発するのが特徴です。また良悪性中間型の骨巨細胞腫や限局型骨髄炎なども含まれます。多くは単純X線検査である程度診断できますが、画像診断が難しい場合には、CTやMRI検査、さらには組織を一部採取して(生検)の病理組織検査が必要となる場合もあります。
診断がついたら、経過観察のみでよい疾患もあれば、病変の増大や病的骨折のリスクがある場合など、病巣掻爬+人工骨移植術(ときに髄内釘などによる内固定術を併用)を行うこともあります。
さらに骨巨細胞腫のように、単なる病巣掻爬術のみでは術後局所再発を来しやすいような腫瘍に対しては、術後の局所再発を減らすために病巣掻爬後の人工骨(ハイドロキシアパタイトなど)の代わりに骨セメントを充填したり、当初から病巣掻爬術が行いにくいような場合、最近ではdenosumab(ランマーク)という薬物治療を併用して手術を行いやすいような方法を選択することも行っています。

2.良性軟部腫瘍

軟部腫瘍は無痛性(あるいは時に圧痛や放散痛など疼痛を伴うことあり)のしこりとして自覚されることの多く、ほとんどが脂肪腫、血管腫、神経鞘腫などの良性腫瘍が多いですが、まれに悪性のこと(軟部肉腫)もあり、注意が必要な疾患です。さらに、手足などに好発するガングリオンや滑液包炎、背部などに好発する粉瘤(アテローム・表皮嚢腫)、反応性リンパ節腫大、静脈血栓、筋肉内血腫(とくに抗凝固薬や抗血小板薬を内服している患者さんに多い)、化骨性筋炎など腫瘍以外のしこりを呈する疾患も比較的多くみられます。

61歳女性、左膝に発生した脂肪腫(左:MRI検査、右:切除された腫瘍)
61歳女性、左膝に発生した脂肪腫(左:MRI検査、右:切除された腫瘍)

51歳女性、左肩甲下部に発生した弾性線維腫
51歳女性、左肩甲下部に発生した弾性線維腫

3.悪性骨・軟部腫瘍(肉腫)

骨肉腫を代表とする、種々の悪性骨・軟部腫瘍(肉腫)は非常に発生頻度の少ない、いわゆる希少がんの一つに入りますが、その種類も多いため(組織型が多彩)病理組織診断も難しく、悪性度も様々ですので、高度専門施設での集学的治療が必要となります。
四肢に発生した限局性の肉腫に対しては、かつては患肢切・離断術が行われていましたが、肺などへの遠隔転移を早期に来しやすく、予後不良な疾患でした。しかしながら現在では、患肢を切断することなく、腫瘍広範切除+腫瘍用人工関節などによる各種患肢再建による患肢温存手術が標準的治療として行われるようになり、また悪性度や病変の広がりなどに応じて全身化学療法(各種の抗がん剤による)や放射線治療を併用することにより、その予後は改善しています。

20歳男性、右大腿骨遠位骨肉腫(MRI検査所見)
20歳男性、右大腿骨遠位骨肉腫(MRI検査所見)

術前化学用法施行後、腫瘍広範切除術を施行
術前化学用法施行後、腫瘍広範切除術を施行

腫瘍広範切除後、腫瘍用人工膝関節インプラントにより患肢再建術を施行
腫瘍広範切除後、腫瘍用人工膝関節インプラントにより患肢再建術を施行

64歳女性、右恥骨軟骨肉腫、腫瘍広範切除後、腫瘍用人工股関節置換術にて患肢再建を施行
64歳女性、右恥骨軟骨肉腫、腫瘍広範切除後、腫瘍用人工股関節置換術にて患肢再建を施行

さらに骨肉腫や一部の軟部肉腫症例に対しては、予後改善を目的とした肺転移巣に対する外科的切除術についても、呼吸器外科と連携しながら積極的に行っており、予後改善に寄与しています。

4.局所進行性・転移性の肉腫に対する新しい治療薬の開発

これまで、希少がんの一つである肉腫のような疾患に対する薬物治療の開発は遅れていましたが、近年ようやく新規の抗腫瘍剤や分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用いた全国規模での多施設共同臨床試験を行うことにより、局所進行性・転移性の軟部肉腫に対する新しい治療薬が保険承認されるようになってきました。当院においても引き続き、肉腫に対する腫瘍免疫療法など新規の治療薬開発を目指した臨床試験にも積極的に取り組んでいます。

 

*当院を含む多施設共同臨床試験により新たに保険承認された軟部肉腫治療薬
・パゾパニブ(ヴォトリエント(ランマーク))(2012年9月保険承認)
・トラベクテジン(ヨンデリス(ランマーク))(2015年9月保険承認)
・エリブリン(ハラヴェン(ランマーク))(2016年2月保険承認)

*当院で現在進行中の軟部肉腫に対する臨床試験(医師主導治験を含む)

治験薬剤名 治験課題名 登録状況
ニボルマブ 切除不能の明細胞肉腫または胞巣状軟部肉腫に対するニボルマブの医師主導治験(OSCAR試験)(NCCH1510) 2016/9/13承認
2019/8現在
症例登録終了・データ解析中
TBI-1301 化学療法剤投与による前処置後のNY-ESO-1抗原特異的TCR遺伝子導入Tリンパ球輸注による滑膜肉腫を対象とした多施設共同第I/II相試験(1301-03) 2017/8/15承認2019/8現在
症例登録終了・データ解析中
CHP:NE1/TBI-1301 難治性軟部肉腫に対するNY-ESO-1抗原を標的としたワクチン併用TCR遺伝子改変T細胞輸注療法の多施設共同医師主導治験 2018/11/27承認
現在症例登録中
5.転移性骨腫瘍(がん骨転移)に対するQOL改善を目的とした治療

原発性の骨・軟部腫瘍に加え当科では、各種がんの骨転移病変に起因する機能障害の改善と疼痛緩和を目的として、主に脊椎、骨盤、四肢長管骨(とくに大腿骨)病変に対する外科的手術および薬物・放射線療法を行っています。
また、骨転移病巣で発見された各種固形がん骨転移や悪性リンパ腫・多発性骨髄腫といった血液がんなど、いわゆる原発不明がんの患者さんが紹介されてきた場合、当科では血液検査による腫瘍マーカーの検索、FDG-PE/CTによる原発巣の検索などにより、出来るだけ早く診断・病期診断を行って、関連各診療科にコンサルトなどして適切な治療を開始できるよう努めています。

診療実績

1.年間腫瘍症例手術件数
  悪性骨・軟部腫瘍 良性骨・軟部腫瘍  その他
2014年 137件 26 87 24
2015年 137件 31 85

21

2016年 128件 31 74 23
2017年 147件 38 88

21

2018年 133件 35 86

12

切開生検術、転移性骨腫瘍手術、腫瘍用人工関節再置換術など

2.当院における40歳未満の通常型骨肉腫の治療成績(2008-2017年, 24例)

無再発生存率(Event-free survival:EFS)

初診時遠隔転移なし(M0)症例 18例   術後3年 81%, 5年 81%
初診時より遠隔転移あり(M1)症例 6例 術後3年 83%, 5年 63%


全生存率(Disease-specific survival: DSS)

初診時遠隔転移なし(M0)症例 18例   術後3年 86%, 5年 84%
初診時より遠隔転移あり(M1)症例 6例 術後3年 83%, 5年 83%


3.当院における悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)の治療成績(2008-2017年, 186例)

全症例の術後生存率(Disease-specific survival: DSS)

術後3年 82%, 5年 77%


初診時遠隔転移なし(M0)症例 170例   術後3年 86%, 5年 84%
初診時より遠隔転移あり(M1)症例 16例 術後3年 38%, 5年 9%


初診時遠隔転移なし(限局性)症例(M0)の組織学的悪性度別の術後生存率

Grade 1 3年 100%, 5年 100%
Grade 2 3年 84%, 5年 81%
Grade 3 3年 65%, 5年 59%


医療機関の皆さまへ

骨・軟部腫瘍(肉腫)の特徴として、発生頻度が少ない割には組織型が多彩で、良悪性の鑑別も難しい場合が少なくないことから、診断時より骨・軟部腫瘍専門医のいる専門施設での診断・治療が必要となります。骨・軟部腫瘍が疑われたら、まずは専門医の揃っている当院整形外科にご紹介頂ければと存じます。
とくに軟部腫瘍が疑われる場合、触視診にて診断がつかない場合には、超音波エコー検査やMRI検査が有用ですが、最大径2~3cm(ゴルフボール大)以上の大きさのしこりの場合には、診療所や一般病院で安易に局所麻酔での腫瘍切除術(生検を含む)は行わずに、骨・軟部腫瘍専門施設にまずはご紹介いただけるようお願いします。