上部消化管疾患

主な治療法

上部消化器外科では食道、胃、十二指腸の疾患に対する治療を担当しています。ここでは当科で扱っている代表的な治療を紹介します。

胃がん治療

切除可能な胃がんに対しては、周囲のリンパ節(胃の周囲と膵臓の一部に接する内臓脂肪にくるまれています)の切除をともなう胃切除術が行われます。術後は摘出組織の病理診断によるステージにもとづいて術後補助化学療法(再発予防のための抗がん剤治療)を行うことがあります。

胃切除後の栄養サポート

胃がんの術後は胃の容積減少や食物通過経路の変更などの結果、食後の症状を生じやすく、食事の摂取方法に注意が必要となります。当科の最大の特徴は、胃がん術後の患者さんの胃切除後の症状と栄養状態を継続的に最大限サポートするために、一般的な術後栄養指導のみならず、管理栄養士による評価(摂取カロリー、体組成計による骨格筋量・体脂肪率の推移)と適切な栄養摂取方法のアドバイスを、術前から術後にかけて定期的かつ継続的に行っていることです。胃がん患者さんの大きな不安の一つである術後の食事に関して専門的チームで共に考えていくことで、患者さんにより安心して治療を受けて頂けるようにしております。

拡大手術

当科では、定型的な胃切除術のみならず、周辺臓器への浸潤(がんが食い込むこと)を有する胃がんに対する多臓器合併切除、高度リンパ節転移を有する胃がんに対する化学療法後の大動脈リンパ節郭清、といった大きな手術にも対応しています。

腹腔鏡手術

早期の胃がんに対して標準的な手術となってきた腹腔鏡手術に関しても積極的に取り組んでいます。腹腔鏡手術は、腹部を大きく切開することなく5-10mm程度の小さな穴を5か所あけて(1か所は組織摘出時に3cm程度に拡張します)胃がんの根治手術を行う方法で、開腹手術とくらべて術後の痛みが少なく、傷も目立ちにくくなります。安全な手術を行うには高い技術が要求されますが、当院では経験豊富なスタッフにより、漿膜面(胃の壁の中で最も外の層)への露出が疑われるような進行胃がんを除いて多くの患者さんに積極的に適応しております。

化学療法

当科では専門スタッフによって抗がん剤治療も担当しております。手術前後にがんの制御目的として行う術前/術後補助化学療法はもちろん、遠隔転移を有する患者さんに対する化学療法も消化器内科と分担して行っております。外科医が化学療法を担当することで、化学療法により遠隔転移が制御できた場合に根治切除を行うコンバージョン治療(主たる治療法が手術へと変わること)も適切なタイミングで狙うことが可能です。最新のエビデンスにもとづいた標準治療のみならず、新規の臨床試験や治験による治療も積極的にご提案しています。

食道がん治療

食道がん治療は病状、ステージに応じて様々な治療法をくみあわせた治療戦略が存在します。当科は「JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)食道がんグループ」にも所属しており、患者さんごとに最新のエビデンスにもとづく最適な治療法をご説明し提供しております。また食道がんに対する手術は消化器外科手術の中でも難易度の高い手術のひとつですが、当院は食道外科専門医認定施設であり、専門医による確実な技術とチーム医療による支援の下、多数の食道がん手術を安全に行っております。

食道がん診断、治療、経過観察への流れまでをまとめた次の冊子をご覧ください。

食道がんについての冊子(PDF)

食道がん手術

食道は頚部、胸部、腹部にわたる全長25cmほどの臓器です。このため胸部食道がん手術では胸部、腹部、(+頚部)の切開から切除と再建を行います。食道がん術後は様々な理由により痰が出しにくくなるため術後は肺炎などの呼吸器合併症に注意が必要です。適応となる患者さんには腹部の切開創をできるだけ小さくした(約6~7cm)用手補助腹腔鏡手術による操作を採用しています。さらに当院では術前から禁煙の徹底+コーチII®(Smiths medical)を用いた呼吸訓練を導入し呼吸器合併症の予防を行っています。加えて、栄養管理部と協力して術前の栄養状態改善+インナーマッスル(呼吸筋などの中枢筋)の強化による合併症予防にも取り組んでいます。

特殊な再建を要する食道がん手術

食道の切除後は通常胃を用いた再建が行われます。胃潰瘍や胃がんなどで胃を切除後の患者さんでは、小腸や大腸を使用した再建が必要となり、ときには顕微鏡下での血管吻合を要することもあります。このようなケースでも当院は形成外科と協力して安全に手術を行う体制があります。

胸腔鏡手術

比較的早く見つかった食道がんに対しては、胸腔鏡による食道切除術を行っています。大きな開胸創のかわりに約6か所の5-10mmの小さな孔をあけて行う方法で、3D内視鏡による立体感、拡大視効果を生かした精密な操作が可能で、肺への負担が少ないことから術後の呼吸器合併症も低減されます。一方で腫瘍の触診が困難なことから、当院では腫瘍が食道外膜に達せず、巨大ではない食道がんに対して適応しています。

写真:胸腔鏡+腹腔鏡による食道がん手術の術後1年目の創部 胸部は小さな孔のみで行い術後もほとんど傷が目立ちません