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メールマガジン「法円坂」No.197(2017/10/17)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 10月になったというのに最高気温が30度近い日があれば、20度を少し超えると
いった日もあり、また、ここ数日は秋雨前線が停滞して鬱陶しい日が続いており、
天高くといった秋晴れの日はなかなかやってません。このような温度差のある気
候のせいか「寒暖差疲労」という聞き慣れない言葉も流行りつつあります。くれ
ぐれも体調管理にお気をつけください。10月号のメルマガをお届けします。
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   メールマガジン「法円坂」No.197(2017/10/17)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  是恒 之宏 です
 ・新任のご挨拶
 ・【 法円坂よもやま話 】
 ・音楽ボランティア「“愛の夢”コンサート・病院コンサート」参加のお誘い
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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      院 長  是恒 之宏(これつね ゆきひろ) です       
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「オーダーメイド実現プログラム」研究が終了

 ゲノム等に関する解析技術やそれを活用した研究の急速な進展により遺伝要因
等による個人ごとの違いを考慮した医療実現への期待が高まり世界的にも取り組
みが進められています。
 例えば英国では、平成18年からUKバイオバンクの構築が勧められ50万人の試
料・情報収集が完了しており、平成24年からは10万人規模の希少疾患、がん等
の患者ゲノム解析を目的とした10万ゲノム計画が開始されました。
また、米国でも平成27年から100万人規模のプレシジョン・メディシン・イニシ
アチブが開始されたところです。
日本では文部科学省が平成15年度からオーダーメイド医療の実現プログラムの前
身となる事業を開始し、世界最大級の疾患バイオバンクであるバイオバンク・ジ
ャパン(BBJ)の構築とゲノム解析をすすめてきました。本研究は、東京大学医科
学研究所、理化学研究所が中心となり全国12協力医療機関が参加し、遺伝情報を
基に個人個人に適合した診断・治療・予防を可能とする医療(オーダーメイド医
療)の実現に向けた取り組みを行うことを目指して、第1期〜第3期の15年にわ
たり行われてきましたが今年度で終了することになりました。
この研究では全国の約25万人の方々にご協力いただき、世界最大規模のバイオバ
ンクが構築されました。
この中で、疾患と関連する遺伝子、薬剤の感受性や副作用に関連する重要な遺伝
子が発見され、これらのエビデンスが臨床的にも有用であることを前向き臨床研
究で実証してきました。
今後はBBJ、ナショナルセンターバイオバンクネットワークや東北メディカルメガ
バンクの3大メガバンクのデータベースを構築活用する人材が情報共有する場を
AMEDが設置し、情報管理における安全性を確保した上で我が国全体のバイオバン
クにおけるデータ管理などの水準向上、研究者の利活用促進などが図られるよう
です。
当院も12協力医療機関の1つとして本研究に第1期より参加し、この間、多くの
患者さんに参加ご協力いただきました。皆様から頂いた血液のサンプルや診療情
報は今後共未来の医療に役立つ貴重な試料となることは間違いありません。この
場をお借りして感謝申し上げます。


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             新任のご挨拶                  
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                      医療安全管理室副室長
                      泌尿器科科長 西村 健作

 2017年10月より医療安全管理室副室長を拝命いたしました泌尿器科 西村健作
です。
 私が研修医の頃は医療安全に対して病院全体が取り組むことはなかったように
思います。
本来は医療においてインシデントやアクシデントがなくなることが理想ですが、
診療自体が多岐にわたり、複雑化している現状ではそれは不可能であると思われ
ます。そのため病院において医療安全への取り組みがより重要になっていると言
えます。
 医療安全管理の推進力となるのはインシデントやアクシデント報告です。イン
シデントやアクシデントが発生した現場では当事者が精神的なダメージや不安を
抱えながらも報告を行わねばならない状況は相当な負担とおかけしているものと
思います。
 しかし、これらを分析し改善策を検討することで、再発防止を図り、患者さん
により安全で確実な医療と提供することが可能となります。また医療の質を高め
るとともに職員を守ることにつながると考えています。
 現場が医療安全の取り組みを実感できるようにこれらの報告への対応や改善策
を現場へフィードバックすることが医療安全管理に携わるスタッフの責務である
と考えています。
 私も微力ながらお役にたてればと思っております。
 今後ともよろしくお願い申し上げます。


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       【 法円坂よもやま話 】       
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                          中島 伸

総合診療部/脳神経外科の 中島 伸 です。前回、前々回に引き続き今回は初期研
修医の外来指導の話、その3をしたいと思います。

今度は発熱と発疹と腹痛を訴えてやってきた20代の女性、旅行中のカナダ人です。
当然、英語での診察になります。現在総合診療部をローテーション中の初期研修
医、△△先生を外来に呼びました。

中島 「新しい患者さんが来たからな、一緒に診よか」
△△ 「御指導よろしくお願いします!」
中島 「よっしゃ、まずは先生が問診をしてくれ」
△△ 「わかりました」
中島 「これが予診票や」
△△ 「えっ、英語ですか?」
中島 「カナダ人やからな。日本語は全然ダメらしい」
△△ 「ちょっと時間をいただいていいですか?」
中島 「ええよ」

そこで予診表を手にしたまま固まる△△先生。
10秒経過。
20秒経過。
固まったまま全然動きません。

中島 「おい、生きとるか?」
△△ 「僕は今、人生で最高に『英語を勉強しときゃ良かった』と思っています」
中島 「世の中そんなもんや。じゃあ患者さんを呼んでくるからな」

そういって待合の方に患者さんを呼びにいきました。母親らしき人と弟さんらし
き人が一緒に入ってきます。以下の会話は英語と日本語ごちゃまぜ。

中島 「コチラハ、どくたー△△デス」
患者 「ヨロシク」
中島 「彼ハ新人デ、とれーにんぐ中デス。御協力頂ケマスカ?」
患者 「モチロン」
中島 「アリガトウゴザイマス」

△△先生は微動だにしません。

中島 「じゃあ先生、問診しよか」
△△ 「……」
中島 「とにかく患者さんの話を聴かないことには始まらんがな」
△△ 「……」
中島 「しゃあないなあ。じゃあ僕が訊くで」

固まったまま動かない△△先生。

中島 「発熱ト発疹ト腹痛ノドレガ最初デシタカ」
患者 「腹痛デスネ」
中島 「おい、せめてカルテを書いてくれ」
△△ 「あ……はい」
患者 「何デスカ?」
中島 「イヤ、コッチノ事デス」

ということで、極端に動きが鈍くなってしまった△△先生を叱咤激励しながらの
汗と涙の1時間。いや、2時間! 後で△△先生を捕まえて言いました。

中島 「今日は大変やったな」
△△ 「もう僕は何をどうしていいか分かりませんでした」
中島 「医学のほかに英語の勉強もせなアカンな」
△△ 「はい」
中島 「スカイプを使ったオンライン英会話がええで」
△△ 「頑張ります」
中島 「明日からやるか?」
△△ 「えっ?」
中島 「ほな今日からやな」
△△ 「ちょ、ちょっとだけ待っていただいてもいいでしょうか?」
中島 「ええよ。でも、先生に必要なのは行動力やろ」
△△ 「行動力ですか」
中島 「とりあえず『はいっ』と返事しておいてから、後で辻褄をあわせるわけ
    よ」
△△ 「分かりました」

といった感じで大阪医療センターの日々が過ぎていきます。もしこれを読んでい
る医学生の読者がいたら、当院で楽しい研修医生活を送ることも御一考ください。


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 音楽ボランティア「“愛の夢”コンサート・病院コンサート」参加のお誘い  
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                    ボランティアコーディネーター 
                    藤本 和彰

 大阪医療センター ボランティアは、平成9年(1997年)1月に導入され、
今年節目の20周年を迎えました。導入後「法円坂」「音楽」「患者情報室」
「園芸」を初めとする多くのボランティアグループに参加していただきました。
今も8グループ、100人を超えるボランティアの方々に、外来・入院患者さん
の院内案内や、音楽コンサートの開催、医療情報の提供、院内外の環境緑化など、
「患者さん・ご家族が病院で快適に過ごせるよう!」その活動は継承されていま
す。
 “愛の夢”コンサートは、「“愛の夢”スプリングコンサート」として、ボラ
ンティア導入の年4月に誕生し、44回を数えます。
 当初の“愛の夢”コンサートはスプリングコンサート、サマーコンサート、大
正琴の夕べ、クリスマスコンサートと称し、年3回のペースで開催していました。
平成12年以降は、毎年2回(6月開催「“愛の夢”サマーコンサート」と12
月開催「“愛の夢”クリスマスコンサート」)の開催が定着しています。
ピアニスト・作曲家でご活躍の佐竹 史子さんは、第1回より参加してくださって
います。ご自身で作曲されたオリジナル曲をいつも聴かせてくださいます。研ぎ
澄まされた音色で、心に染み入る優しさあふれるメロディにいつも気持ちが和み
ます。いつもながらの暗譜演奏と華麗なテクニック。そして作曲家ならではの情
感豊かで、美しいアレンジの旋律に思わず引き込まれてしまいます。

 この二つの“愛の夢コンサート”では、音楽ボランティアの皆さまが、ご来場
くださった患者さん・ご家族の皆さまに、素敵なハーモニーやメロディを聴かせ
てくださいます。また、皆で大きな声で歌ったり、おしゃべりしながら楽しい時
間を過ごさせてくださいます。さぞかしお楽しみいただけることを感じています。
 一方「病院コンサート」は、平成17年(2005年)11月に、大阪府医師
会フィルハーモニーの皆さまを当院に招いての演奏会がきっかけで始められまし
た。その後「オータムコンサート」として継承され、12回を数えます。
 例年10月または11月の土曜日に開催、コンサート会場に足を運ぶことが困
難な入院患者さんや外来通院患者さんに、フルオーケストラの魅力をお届けする
ために行われています。大きなホールの舞台の上でなく、病院のロビーなどで患
者さん・ご家族皆さまと同じ目線で、より親しみやすい形での音楽をお届けしよ
うと、大阪府医師会フィルハーモニー団員一同で取り組んでおられます。
 土曜日午後のひと時を、クラッシック音楽に存分に耳を傾けることが出来ます。
奏者と聴者が同じ目線のホールで、すぐそばに奏者の息遣いをも感じながら、素
晴らしい音色のご馳走を届けていただきます。
 また、「これが病院?」と思えないような笑いをかもし出す指揮者の名司会ぶ
り。小児科病棟、患者さんの名指揮者ぶり・・・、ソプラノ歌手の声量の豊かさ
・・・などに心を奪われます。素敵な音楽とすばらしい感動に心も癒されるでし
ょう。
 患者さん・ご家族のこころが、少しでも和んでいただければ私たちは嬉しく、
「少しでも病状回復のお手伝いが出来ますれば・・・」との思いで開催していま
す。
 この後、11月4日(土)に、第13回・オータムコンサートを、12月12
日(火)には、第45回“愛の夢”クリスマスコンサートの開催を予定していま
す。「素晴らしい音楽とのひと時を、多くの皆さまと共に過ごすことができます
ように!」と願っています。ご来場を心よりお待ちしております。
 人と人との出会いに感謝すると共に、これからも多くの人々の優しさと、熱い
思いに支えられながら、「“愛の夢”コンサート」「病院コンサート」が開催さ
れんことを心から願って止みません。


■「大阪医療センターメールマガジン」ご愛読の皆さまへ・・・
当院では「音楽ボランティア」のご協力により、年3回コンサートを行っていま
す。初夏に“愛の夢”サマーコンサートを、冬12月に“愛の夢”クリスマスコ
ンサートを行います。素敵なハーモニーやメロディを聴いたり、大きな声で歌っ
たりしながら楽しい時間を過ごさせて下さいます。

また、秋には「大阪府医師会フィルハーモニー」の皆さまが、フルオーケストラ
を魅力一杯に届けて下さいます。
“愛の夢コンサート”に出演を希望される方、また、MC(master of Ceremonies)
として応援してくださるボランティアを募集しています。楽しい時間をご一緒し
ませんか。
ご希望の方は、管理課ボランティア担当までご連絡下さい。

・管理課ボランティア担当   →TEL:06-6942-1331(代表)
・ボランティアホームページ →http://www.onh.go.jp/volunteer/


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      看 護 の こ こ ろ        
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					  感染管理認定看護師
                                              洲本 師来

 秋も一段と深まり、日だまりの恋しい季節となりました。皆様お変わりなくお
過ごしでしょうか。向寒のみぎり、お風邪にはお気をつけてお過ごしください。

 私は看護師として働き今年で15年目となります。その間内科、外科病棟で看護
の経験を積んできました。数年前に感染管理認定看護師という資格をとり、現在
は病棟を離れ院内の感染予防のための活動をしています。具体的には、院内をラ
ウンドし、感染予防の基本である手指衛生を職員が行えているか、感染症の患者
さんに対して感染防止対策ができているかなどを確認し、必要時指導しています。
この資格をとるきっかけはいくつかありましたが、Aさんとの関わりが一番に頭
に浮かびました。
 Aさんはがんで手術を受けられました。術後の経過を見ている中、ある日Aさ
んを担当させてもらいました。お昼過ぎ、廊下で会ったAさんの表情が明らかに
お昼前と比べて暗く、表情がこわばっているように見えました。どうされたのかと
声をかけると、目が潤んでおられていたため話ができる個室へ案内し、お話を聞か
せてもらいました。Aさんは数日前に痰の検査をとった結果、MRSA(メチシリン耐
性黄色ブドウ球菌)が検出されたことを主治医から聞き、どうしたらいいかわか
らなくて他の人に感染させたらと思うと怖かったと涙を流して話されました。
MRSAはある一部の抗菌薬(抗生剤)が効かなくなる細菌で、健康は人には害はな
く、人の鼻の中や身の回りの環境などどこにでもいる菌です。MRSAによる感染を
治療する薬はあります。Aさんが恐怖や不安を抱いている話をきいて、衝撃を受け
ました。当時看護師3年目だった私は医師から患者さんへMRSAが検出されたこと
を説明する場面に何度か立ち会うことがあり、その時の患者さんは落ち着いて話を
聞いておられる姿に見えたため、患者さんが涙して動揺するほどの強い恐怖や不
安を抱くとは思っていませんでした。いかに自分が患者さんの感覚からズレてい
たのか、患者さんの目線で考えていなかったか、申し訳なく思いました。Aさんの
話を聞いて、MRSAや感染経路、Aさん自身ができる感染予防対策について具体的に
説明しました。Aさんもわからないことを質問され、話が終わるころにはいつもの
表情に戻り、最後には「話を聞いてできることをすれば大丈夫ということがわか
って安心した。」と話されました。お話の後も、手洗いが正しくできているか方法
を一緒に確認し、ちゃんとできていることをお伝えしました。その後Aさんは術後
の経過もよく、無事退院されました。
 Aさんとの関わりを通して強く感じたことは、MRSAやインフルエンザなどの感染
症はもともと患者さんが持っていた、患者さんが外からもらってきたなどの例もあ
り発生を0にはできないのですが、少なくとも院内感染を発生させたくない、院内
感染でAさんのように不安や恐怖を抱かせたくないということでした。院内感染が
おこらなければその患者さんは感染症に対して不安や恐怖を感じる必要がありませ
ん。患者さんには入院したことを後悔してほしくない。そのために自分は何ができ
るのかを考えると、日頃から手指衛生などの基本的な感染防止対策を確実に行うこ
とでした。自分が見本となるよう行動し、自分以外のスタッフも感染予防対策が確
実に行えるよう関わっていくことで、適切に感染予防対策を行えば院内感染は防ぐ
ことができるという確信とやりがいを感じることができました。
現在は同じ感染管理認定看護師の資格をとっている先輩看護師や各職種の感染予防
専門チームとともに職種を超えて院内の感染予防に取り組んでいます。感染予防の
対象は患者さんだけではなく、面会者、病院の職員、病院に出入りするすべての人
です。それらの人々を院内感染から守るには一人ではできません。職員が一丸とな
り、時には患者さんにも協力してもらいながら院内感染に取り組めるよう、これか
らも活動していきます。


ホームページ→http://www.onh.go.jp/kango/kokuritu.html


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          研 修 医 日 記
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                     研修医2年目 木下 将宏

 始めまして、研修医2年目の木下将宏です。研修も後残すところ6カ月となり、
時がたつのは早いと感じております。
 当院で研修をするメリットとしては、立地の良さ、ローテートでほとんどの診
療科を経験するとこができる、研修医の人数が多く楽しい、上級医の先生方がと
ても優しく相談もしやすい。全てを書き出せば、文字数がオーバーしてしまうの
で、ざっとこんなところとしておきましょうか。
 当病院の研修制度として、他の病院と異なるのは選択科のローテーション期間
が4カ月と短いところです。私は泌尿器科というマイナー科志望で研修生活をお
くっておりますが、逆の発想で初期研修期間くらい他科の勉強もしようと決意し、
非常に多くのことを学ぶことができました。
 充実した研修生活を送らせていただいた、当病院の先生方、スタッフの方々に
は感謝がつきません。皆様もぜひ一度見学に来てみてはいかがでしょうか。


臨床研修のホームページ→http://www.onh.go.jp/kensyu/index.html


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総編集長:病院長 是恒之宏
編 集 長:副院長 中森正二、関本貢嗣
     看護部長 伊藤文代 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 稔りの秋、そして食欲の秋です。体調管理も食事から。秋の夜長を楽しみつつ、
秋の稔りの旬の食物を堪能してください。
寒暖差疲労もなんのそのではないでしょうか。それでは、次号をお楽しみに。

メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
www-adm@onh.go.jp

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