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メールマガジン「法円坂」No.207(2018/8/15)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 暦の上ではもう立秋ですが、記録的な猛暑が続いています。皆様いかがお過ご
しでしょうか。地震、台風、水害など、各地でいろいろな災害が続きました。
たいへんな経験をされた方もいらっしゃったのではないでしょうか。被災された
方々には心よりお見舞い申し上げます。
さて、連日の猛暑で食欲もなくなりがちですが、しっかり食べて夏バテを吹き飛
ばしたいものです。それでは今月のメルマガをお楽しみ下さい。
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   メールマガジン「法円坂」No.207(2018/8/15)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  是恒 之宏 です
 ・最新の診断治療 「抗HIV療法の最新治療」
 ・最新の診断治療 「血液内科」  
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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      院 長  是恒 之宏(これつね ゆきひろ) です       
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熱中症になったらFIRE

 相変わらず猛暑が続いていますが、皆様なんとかお過ごしでしょうか。熱中症
対策は、クーラーを我慢せず使う、日中の不要外出を控える、水分塩分補給など
言われていますが、年齢を重ねると喉の渇きを覚えない、あるいは室温が上がっ
ていても気づかないなど色々と危険な要因が潜んでいます。

 熱中症の症状って、どんな症状でしょうか。帝京大学医学部の三宅教授「STOP
熱中症、教えて隠れ脱水委員会」によると、熱中症の症状は結構多岐にわたりま
す。めまい、失神、筋肉痛、筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛、不快感、吐き気、
嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害、けいれん、手足の運動障害、高体温など熱中
症を疑う症状をまず覚えておきましょう(チェック1)。そして、1つでもあれ
ば、意識があるかないかを確認して(チェック2)、意識がなければすぐに救急
搬送、意識があればまず涼しい場所に避難し、服をゆるめ体を冷やす。体を冷や
すときは、冷えたペットボトルを使って、首筋、脇、鼠径部に強く当てると効果
的です。水分を自力で摂取できるかどうかが次の(チェック3)になります。
自力で水分補給ができなければ医療機関へ行きましょう。水分補給が出来る場合
は、水分・塩分を補給する。それでも症状がよくならなければ早めに医療機関へ
行きましょう。
熱中症になったらFIRE(F:fluid 適切な水分補給、I:Icing 体を冷やす、
R:rest安静、E:emergency 救急搬送/119番)。

でもまずは熱中症にならないよう予防を心がけてください。


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       最新の診断治療 8      
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抗HIV療法の最新治療 感染症内科
                     感染症内科科長 上平 朝子
                       
 当院は、エイズ治療の近畿地方ブロック拠点病院で、西日本で最も多くのHIV
感染症の患者さんを診療しています。HIV/AIDS先端医療開発センターのホームペ
ージ(http://www.onh.go.jp/khac/)もご覧ください。
 HIV感染症そのものに対する治療は、抗HIV療法と呼ばれます。この治療により
HIV感染症は治療できる疾患となりました。
抗HIV療法は、世界のHIV・エイズの新規感染を減らし、エイズ関連死亡も最も多
かった2005年以降48%減少しています。2017年、ヨーロッパとアメリカで大規模
な研究が行われ、HIV感染者の平均寿命は非感染者と同じ寿命となったことが報告
されました。
抗HIV療法は、多くの人々の予後を改善し、他の人への感染も予防します。現在、
世界中のHIVと共に生きているすべての人々に、できるだけ早く、そして全員に治
療を開始する“Treatment for all”が目標となっています。

 しかし、現時点では治療薬の服薬は一生継続しなければならず、厳密な服薬管
理と長期服用による副作用の問題は続いています。
 以前から、この副作用を軽減する治療方法として、薬剤数の減量や薬の組み合
わせの変更などが検討されていました。2018年、この分野で良好な研究成果が発
表されました。最初の治療は従来通りに治療を行いますが、その後、治療の成功
が維持できれば、薬剤の数を減量しても十分に治療効果が得られることがわかり
ました。
抗HIV薬の数を減らして治療を続ける維持療法は、従来の治療で経過が良好な方に
はなりますが、内服薬と注射薬で研究が進んでいます。
内服薬については、欧米では、従来治療と変わらない治療効果を示した2種類の薬
剤は、一錠に合剤化され、一日一回一錠の治療薬として承認されています。他に
も安全に治療効果が期待できる組み合わせがないか、世界中で複数の研究が継続
されています。
注射薬については、世界各国が共同して研究を続けています。これは2剤の抗HIV
薬を一ヶ月に一回筋肉内に注射する治療です。当院もこの研究に参加しています
が、治療薬として承認されることになれば、日々の厳密な服薬管理と副作用の軽
減がはかれると期待されています。
 今後も、新しい抗HIV薬が承認されていく予定であり、当院では、これからも
最新の治療を提供していきたいと思っています。


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       最新の診断治療 9    
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最新の診断治療 血液内科
                     血液内科科長 池田 弘和

 血液内科では、血液の細胞(赤血球、白血球、血小板)と血液凝固に関わる病
気を診療しています。とくに入院加療を要する主な病気は、白血病や、悪性リン
パ腫、多発性骨髄腫などの血液のがんです。今回は、多くの新規薬剤が開発され
ている多発性骨髄腫の治療について、ご紹介いたします。
 多発性骨髄腫は、Bリンパ球由来の形質細胞ががん化した疾患です。形質細胞は
刺激を受けると抗体を作る役割を担っていますが、骨髄腫ではがん化した形質細
胞が病的に増殖して異常な抗体(Mタンパク)を多量に産生し、進行すると貧血、
腎障害や病的骨折を起こします。この病気の治療は、長い間、メルファランやド
キソルビシンなど古いタイプの抗がん剤の組み合わせによるものしかありません
でした。これらの薬剤はどの細胞にも必要な DNA合成や細胞分裂の過程などを阻
害し、正常な細胞にも副作用を及ぼすため使用量に限界があり、効果も十分では
ありませんでした。
 しかし10年ほど前から、骨髄腫のがん細胞の特性に応じた薬剤が開発され、実
臨床で使用できるようになってきました。骨髄腫細胞は、細胞内のタンパク分解
処理に弱点があることから、この分解装置プロテアソームを阻害する薬剤ボルテ
ゾミブが新規薬剤として承認されました。またサリドマイドがこの病気に有効な
ことがわかりました。サリドマイドは奇形を起こす薬害で有名ですが、免疫調節
作用などを介して骨髄腫に効果があり、きちんと管理した上で使用することが認
められました。現在では同系統の薬剤レナリドミドも使用できます。現行の血液
学会の診療ガイドラインでは、初期治療からボルテゾミブあるいはレナリドミド
とステロイドホルモン剤などを組み合わせた方法が推奨されています。これらの
初期治療後に、65才未満で条件を満たす患者さんには、自家造血幹細胞移植を併
用した大量抗がん剤療法が勧められます。
 上記の薬剤が登場してから治療成績は著明に改善しましたが、治癒させるには
まだまだ至らず、新しい治療薬の探求は続いています。最近では骨髄腫細胞表面
の特殊な膜タンパクを標的に結合して攻撃するモノクローナル抗体製剤のエロツ
ズマブ、ダラツムマブが加わりました。またボルテゾミブと同系統のイキサゾミ
ブ、カルフィルゾミブ、他のタンパク分解経路を阻害するパノビノスタット、ま
たサリドマイドと同系統のポマリドミドも使用が認められました。これらの新し
い薬剤を2剤、3剤と組み合わせたより適切な併用療法を見出し、患者さんの予
後やQOLを向上させることが期待されます。


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      看 護 の こ こ ろ        
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					東10階病棟 副看護師長 
                      小松 裕美

 暦の上では秋となりましたが、まだまだ厳しい暑さが続いております。皆様、
お元気でお過ごしでしょうか?暑くて冷たいものばかりが欲しくなりますが、た
まには温かい食べ物も食べて胃腸をいたわり、夏バテを予防していきましょう。
 私は昨年の4月より副看護師長に昇任し、消化器内科病棟で働いております。こ
れまで様々な患者さんと出会い、たくさんの貴重な経験をさせていただきました。
その中でも2年前に私が退院支援看護師として働いていた時に、担当した患者さん
との関わりの中で感じたことをお話しします。
 Aさんは80歳代の男性の方で、悪性リンパ腫で抗がん剤治療を受け、自宅療養さ
れていましたが、肺に水が溜まり、息が苦しくなり入院されました。病状は進行し
ており、医師からはこれ以上積極的な治療はできないため、今後は症状の緩和を中
心におこなっていくことを説明され、Aさんと奥様もそれに同意されました。
私はAさんに今後どのように過ごしたいかをお伺いしたところ、Aさんは「もう治療
できないんやったら家に帰りたいわ。でも酸素しているし、家のマンションはエレ
ベーターもないから無理かもしらんな。」と話されました。私はAさんが自宅で安心
して過ごすためにはどうしたらよいかを病棟看護師と相談し、自宅の環境の確認や
在宅酸素の使用方法を説明するために、試験外泊の際に看護師も同行し自宅を訪問
することにしました。
 外泊日にケアマネジャーと在宅酸素の業者も訪問できるように日程を調整し、Aさ
んと病棟看護師と私で介護タクシーにて自宅へ帰りました。Aさんは出発時、体調に
不安を感じていた様子でしたが、自宅に近づくにつれ、「いつもこのスーパーに買
い物に行くんやで。」と入院前の生活について話をされ、表情も和らいでいきまし
た。自宅に到着し、心配していた階段もお一人でゆっくり上がられ、在宅酸素の使
用方法について奥様と一緒に聞き、理解されていました。一段落がつき、Aさんは安
心した様子で、奥様が作られたおにぎりをにこにこしながら笑顔でおいしそうに食
べられていたことが印象的でした。
 その後、Aさんは退院され、訪問看護師の支援を受けながら自宅で過ごすことがで
きましたが、3か月後に呼吸状態が悪化し入院となり、病院にて永眠されました。
奥様は「大変なこともあったけど主人と自宅で過ごせて嬉しかったです。」と話さ
れていました。
 私はAさんとの関わりから、患者さんが住み慣れた自宅で過ごし、その人らしく
生き生きとした生活が送れるように支援することの大切さを感じました。今後も患
者さんの思いや希望をしっかり受け止め、看護師としてできることは何かを考え、
患者さんに寄り添いながら看護をしていきたいと思います。また、自分1人だけで
はなく様々な職種の方と協力しながら、患者さんにとってより良い生活とは何かを
考え、支援できるように頑張っていきたいと思います。


ホームページ→http://www.onh.go.jp/kango/kokuritu.html


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          研 修 医 日 記
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                     研修医2年目 中嶋 真理子

 研修医2年目の中嶋真理子と申します。
 当院の初期研修の良いところは色々と頭に浮かんできますが一番は、初期研修医
の人数が多いところだと思っています。救急外来や病棟業務において先輩や同期は
どのような対応をしているのかを知ることで、色んな方法を学ぶことが出来ます。
それぞれの得意分野を教え合い、しかも同期なら余計な遠慮をすることなく、分か
らないところは何時でも何処でも何度でも教えてもらうことが可能です。そして何
より共に頑張る仲間が多いというのは、悩んだ時や疲れた時にとても大きな支えに
なります。また日々の雑談の中でも、人数が多いとその分多くの知識や考え方を吸
収でき、いいこと尽くしだと私は思っています。研修医の人数が多いと症例の取り
合いになるのでは?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、当院は500床を超え
る急性期病院であり症例数も豊富なため、約1年間の研修の中でそのように感じた
ことはありませんでした。以上のような当院の特徴を踏まえると、周りとのコミュ
ニケーションを大事にし、沢山の同期と共に成長しようという心意気のひとに当院
は特におすすめなのかな、と思います。
 次に私が紹介したいのは、救急外来で多くの経験が積めることです。平日の夜間
と土日祝日の一次救急と二次救急のファーストタッチを、研修医1年目と2年目で
担当します。まずはバイタルサインの確認やABCの確保などをおこない、落ち着い
ている患者さんであれば診察と初期検査に移ります。バイタルサインが崩れている
人や、心筋梗塞を強く疑う人などが来院した場合には、すみやかに上級医に報告し
ます。来院することが事前に分かっている場合には、その時点で報告をおこない備
えます。また夜間という人員の限られた範囲内で、安全にかつできるだけ多くの患
者さんを受け入れる、無理だと判断したらすみやかに応援を呼ぶ、そういった夜間
のチーム医療のリーダーとしての役割も経験することが出来ます。もちろん上級医
のバックアップのもと行い、フィードバックも受けることが出来ます。
 それ以外にも、当院は指導医の数が豊富で、どの先生もフランクかつ熱心に教え
てくださること、病院の周りに飲食店が豊富で食に困らないこと、大阪城公園や難
波宮公園など緑も豊富なこと、など良い点が沢山あります。この文章だけでは伝え
きれないので、是非一度見学に来てください。


                      研修医2年目 綿谷 俊介

 初めまして、国立大阪医療センター初期研修医2年目の綿谷俊介と申します。
この文章を書く機会がまわってくるにあたり、過去の諸先輩ならびに我が同期たち
の文章を読み返してみました。
あの先生がこんなことや同期があんなことを書いているのを読んでニヤニヤしたり
しながら、みんな見事に大阪医療センターの良いところを書き上げていて書くこと
がないと感じています。
ですので、今回は僕がこの1年ちょっとで感じたこの病院にしてよかったと思える
最大の点を1つだけ書こうと思います。
それは研修医の多さです。現在2年目15人、1年目14人(歯科を入れると15人)
のどの診療科よりも病院内で多い人員数を誇っています。
診療科によっては同期や先輩や後輩と一緒に研修し、患者さんについてわからない
ことを相談したり、また救急外来で経験したことを話し合ったり、研修医あるある
を共有したりと非常に心強い場面がこの1年間で多かったです。
同期・先輩・後輩が多いとイベントごとも多いです。飲みに行ったり、バーベキュ
ーしに行ったり、結婚したり、出産したりとネタは絶えません。
少しまじめな話をしますと、それだけ同期や先輩・後輩が多くいるということはこ
れから医師として人生を送っていく中でとても大切な人脈にもなると思います。自
分の将来先行する診療科以外の人脈を増やすことはなかなか難しいですが、研修医
時代に多くの同期・先輩・後輩と知り合い仲を深めることで今後の医療人としての
人生での助けになる場合も多いと思います。
研修医数が多いと手技数が・・・とかネガティブな意見がありますが、それを補っ
て余りあるほどこの2年間での研修で得られるものは多いと思います。
最後までこの文章を読んでいただきましてありがとうございました。

ぜひ大阪医療センターに見学に来ていただき、病院や研修医の雰囲気を実際に感じ
てください。


臨床研修のホームページ→http://www.onh.go.jp/kensyu/index.html


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総編集長:病院長 是恒之宏
編 集 長:副院長 関本貢嗣、上松正朗
     看護部長 伊藤文代 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 今月のメルマガはいかがでしたでしょうか。先日、熱中症予防のために塩を持ち
歩いて頻回になめておられる高齢者の方をお見かけしました。炎天下で作業をする
など特殊な環境を除けば、日本人の食生活では普通の環境で塩分不足になることは
ほとんどありません。とくに高血圧の方は塩分の取り過ぎに注意しましょう。
それでは次号をお楽しみに。

メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
www-adm@onh.go.jp

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