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メールマガジン「法円坂」No.212(2018/12/12)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 12月のメイン行事はクリスマスです。大阪医療センターではボランテイアの
方々によるクリスマスコンサートが行われました。歌を合唱するひと時は楽しく
もあり、ストレス発散もできました。病棟ではリースも飾られます。このリース
は日本古来の「しめ縄」のような役割があるようです。リースの輪ははじめも終
わりもなく「命や幸福がいつまでもつづくように」という願いが込められている
とのことです。意味を知ると明日からでも玄関にリースを飾ろうと思います。
それでは今回のメルマガをお楽しみください。
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   メールマガジン「法円坂」No.212(2018/12/12)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  是恒 之宏 です 
 ・最新の診断治療 整形外科 
 ・最新の診断治療 リハビリテーション科 
 ・感染対策(正しい抗菌薬との付き合い方) 
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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      院 長  是恒 之宏(これつね ゆきひろ) です       
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クリティカルパス研修

 国立病院機構は、全国を6つの地域グループに分けそれぞれのグループごとに
研修プログラムを行っています。12月15日にはクリティカルパス研修を当院担当
で行いました。当院では入院診療部長でクリティカルパス委員長でもある上田孝
文先生に企画をお願いし、午前中は岸和田市民病院の加藤裕子看護師長にパスの
基本事項として、その目的、およびアウトカムを考慮した作成方法、そしてDPC
を考慮した入院日数や治療内容について講義をいただきました。また、午後はグ
ループワークで「院内パス推進のための院内活動方法および職種間の協力方法に
ついて」をテーマに活発な討議、発表が行われました。

 クリティカルパスって一体何?と思われる方、医療関係者でご存知の方、いろ
いろおられると思います。元々クリティカルパスはそのまま直訳すると重要な道、
ですが、製造業の業務を効率化・標準化し、作業工程を分析管理する方法として
1950年代にアメリカで開発されたものです。これが医療にも応用され、大辞林で
は医療におけるクリティカルパスについて、治療や看護の手順を標準化し、診療
の効率化や均質化、コスト削減を図るための診療計画と説明されています。
 私のクリティカルパスに対するイメージはパックツアーです。目的地と旅行す
る期間が決まっている。その中でいかに充実したプランが詰め込まれているかと
いうことです。また、パックツアーにありがちな参加者の個々の特性にはマッチ
しなくても押し着せてしまうところもあるでしょう。使用する医療者は、パスを
使う場合にも個々の患者に適応して問題ないか、オプショナルツアーや変則プラ
ンが必要ないかを考えなければいけません。また、DPCの期間が短くなるたびに
その内容を修正することが一般的に行われますが、これは「いままで日本から台
湾への旅行は4日ツアーが多かったですが、おエライさんから今後3日ツアーと
するようにというお達しがありプランを再構成しました」というようなものです。

 ただ、このお達しは3日でも概ねツアーを楽しめるというデータに基づいてい
るので内容を損なうことなく効率的なプラン変更が必要です。昔は海外旅行とい
うと1週間から10日ゆったりと、という時代でしたが、効率的により安く、が主
流になってきたのとクリティカルパスの今後、共通点がありそうですね。


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       最新の診断治療 15 整形外科     
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                       整形外科科長 上田 孝文

 整形外科は運動器疾患を専門として扱う診療科です。運動器といっても、頚部
や体幹、手足の先に至るまで非常に広範な身体の部分からなりますが、全身の骨
・関節、筋肉、靱帯、末梢神経などの各種疾患を主として診断・治療しています。

  専門領域には1)関節外科、2)脊椎外科、3)手の外科、4)リウマチ外科、
5)スポーツ傷害(膝や足関節などの靱帯・軟骨損傷など)、6)骨・軟部腫瘍
(運動器の腫瘍性疾患)、7)小児整形・足の外科などがありますが、当院整形
外科では主に1)のうちの股関節・膝関節変性疾患を中心に、2)各種脊椎疾患
、6)骨・軟部腫瘍および転移性骨腫瘍(がんの骨転移)に対する集学的な高度
専門診療、7)先天性股関節脱臼やペルテス病、大腿骨頭すべり症などの小児股
関節疾患、先天性内反尖足や外傷性・麻痺性など種々の原因に伴う足部変形、脚
長差、骨形成不全症をはじめとする各種骨系統疾患など広汎にわたる小児整形外
科および成人の足の変形に対する専門診療を行っており、その他の3)、4)、
5)などの疾患については、大阪大学整形外科の関連病院ネットワークなどを通
じてそれぞれの分野の専門病院を紹介することにより、総合的に高レベルの運動
器専門診療を網羅できる診療体制を敷いています。

 当院整形外科の特色を挙げると、変形性股関節症や大腿骨頭壊死など進行した
股関節症に伴う股関節痛・歩行障害に対し、手術前の3D-CT画像データを用いた
術中ナビゲーション支援手術による高精度の全人工股関節置換術(THA)をほぼ
全例で行うことにより、術後下肢機能のさらなる向上および術後人工股関節脱臼
の発生頻度減少を実現しています。また、急速な人口の高齢化に伴い増加してい
る高度の変形性膝関節症に対しては、最小侵襲手術法(MIS; Minimally Invasive
Surgery)を応用した全人工膝関節置換術(TKA)を積極的に応用するとともに、
比較的変形の少ない膝関節症に対しては、適応を選んでより手術侵襲の少ない片
側置換型の人工膝関節手術(UKA)も行っており、より早期の社会復帰を目指して
います。脊椎外科としては、腰部脊柱管狭窄症や頸椎症性脊髄症などに代表され
る脊椎変性疾患に対する外科的治療(脊椎除圧・固定術)を中心に行うとともに
、脊椎外傷やがんの脊椎転移、化膿性脊椎炎など種々の難治性脊椎疾患に対して
も、外科的治療の適応があれば積極的に治療を行っているのが特色です。

このように非常に多岐にわたる各種運動器疾患を扱っている専門診療科として、
様々な運動器に関してお困りの患者さんがおられましたら、お気軽にご紹介・ご
相談いただければと存じます


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       最新の診断治療 16 リハビリテーション科    
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                       理学療法士長 西薗 博章

 当院のリハビリテーション科は理学療法・作業療法・言語聴覚療法の3部門か
らなります。リハビリテーション科の部長をはじめ専属の医師1名、理学療法士
12名、作業療法士4名、言語聴覚士3名、助手2名の合計23名が勤務しており
ます。

 理学療法は主に、「立つ、歩く、階段を昇り降りする」といった動作を再び獲
得するために、作業療法は、「食事、更衣、トイレ動作」など身の回りの動作の
再獲得、言語聴覚療法は、「話す、聞く、考える、食べる」など能力を再獲得す
る目的で実施されます。

 当院は急性期の病院であり、急性期に特化したリハビリテーションを実施して
います。診療科別では、整形外科、脳内科、総合内科、脳外科、救命救急科、循
環器内科、外科の順に多く、これらの7診療科でほとんどを占めており、その他、
感染症内科、心臓血管外科、消化器科、総合診療科、口腔外科、形成外科、婦人
科、小児科、泌尿器科等に至るまでほぼ全科にわたり依頼を受けていいます。
平成29年度、各診療科から依頼があった新規件数(人)は3,935件で、入院が
3,860件、外来が75件となり、入院中心のリハビリテーションを展開しています。

 整形外科では、股関節や膝関節の人工関節の術前術後および脊椎疾患術後のリ
ハビリテーションを中心に取り組んでおり、患者様の自宅退院までをみさせてい
ただいております。また脳卒中などのリハビリテーションも発症4日以内開始し、
超早期からの介入によって、後継のリハビリテーション病院に、安全に確実に引
き継げるよう努力しています。さらに近年では、心不全や心筋梗塞その他、心臓
外科術後の「心臓リハビリテーション」の需要が増え、実践しております。
がんやその他の外科的手術後に体力が弱り、歩行困難となった「廃用症候群」に
対するリハビリテーションも積極的に行っています。

 リハビリテーション科は今後も急性期の医療を担う部門として、早期からの介
入により、皆様が安全に、そして安心して在宅に復帰できるよう努力してまいり
ます。


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       感染対策(正しい抗菌薬との付き合い方)      
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                        薬剤部/感染制御部
                        中蔵 伊知郎
                        
 近年、海外のみならず日本においても、抗菌薬が効かない細菌=“薬剤耐性菌
”による感染症の事例が度々報告されており、世界的に薬剤耐性菌に対する対策
の強化が求められています。
英国の報告(https://amr-review.org/)によると、全世界で薬剤耐性菌が原因の
死者は2013年では年間70万人ですが、2050年には1000万人となることが推定され
ており、これは2013年現在のがんによる死者数の820万人を大きく上回ることとな
ります。このような脅威を持っている薬剤耐性菌の出現や蔓延を阻止するために
は、医療従事者が抗菌薬を適切に使用することは非常に重要ですが、一般の方に
も抗菌薬のことを良く理解していただき、抗菌薬を正しく使っていただくことも
非常に重要です。

 今回は、抗菌薬を正しく使っていただくことに関して理解を深めていただくた
めの記事を書かせていただきます。

『かぜに抗菌薬は効果がありません』
 かぜの多くは、ウイルスが原因と言われております。
抗菌薬は細菌を退治するために必要な薬です。ウイルスは細菌と大きさ、仕組み
や成立ちが異なります。このため、抗菌薬はウイルスには効果がありませんし、
ウイルスが原因となるかぜには全く効果がありません。
ただし、細菌が原因となる感染症(肺炎や中耳炎など)には抗菌薬が必要な場合
がありますので、これらの疾患が疑われる場合に抗菌薬が処方された場合は、医
師の指示に従いしっかり服用しましょう

『処方された抗菌薬は最後までしっかり服用しましょう』
 抗菌薬は、細菌を退治する薬で、細菌による感染症に処方されます。細菌には
多くの種類があり、それぞれの細菌の治療に必要な抗菌薬は異なります。また、
飲み方も様々ですし、抗菌薬はそれぞれの患者さんの状態に合わせて処方されて
います。
抗菌薬を処方された量、回数、服用期間を守らないと、あなたの細菌感染症が治
らないだけでは済まず、不適切、不十分な飲み方をすると、抗菌薬が効かない細
菌=“薬剤耐性菌”が生まれてしまうことがあります。
 抗菌薬が余ったからといって、残しておいて後で服用したり、家族へ渡したり
することは、効果が無いかもしれませんし、抗菌薬による副作用が出てしまうこ
とがありますので、抗菌薬が何らかの理由で手元に残っても、処分するようにし
ましょう。

 皆さまも抗菌薬を正しく使って、一緒に薬剤耐性菌に対する対策へご協力くだ
さい。
(本記事を作成する際、AMR臨床リファレンスセンターHPを参考にしました)
 http://amrcrc.ncgm.go.jp/


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      看 護 の こ こ ろ        
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					   外来化学療法室
                          安原 加奈

 あわただしい師走となり、何かとご多用のことと存じます。寒さも厳しくなっ
てまいりましたので、お体には気をつけてお過ごしください。

 私は2年前にがん化学療法看護認定看護師を取得し、外来化学療法室に勤務し
ています。化学療法室で治療を受けている方は20歳代から90歳代と幅広く、仕事
や育児をしながら治療を受けている方など生活背景もさまざまです。薬剤師や栄
養士など多職種とも連携をとり、少しでも副作用や治療による苦痛を軽減し、患
者さんが安心して治療を受けられるよう支援しています。また、ここでは毎日た
くさんの患者さんが治療を受けており、患者さんにとって他患者の頑張っている
姿が互いに励みや支えにもなっています。

 化学療法による副作用には、脱毛の他に皮膚や爪に起こる副作用もあり、外見
に変化が生じることもあります。外見の変化に伴って自分らしさを失うと感じた
り、他者の目に触れる部分であるだけに大きな心理的苦痛を伴うこともあります。
以前、化学療法室で治療を受けていた20歳代女性のMさんは、抗がん剤による副
作用で顔の広範囲に挫創様皮疹が繰り返し出現していました。症状の予防や改善
に向けて、毎回治療時にはケアの状況を一緒に確認しながらセルフケア支援を行
いました。ある日、Mさんから近々友人の結婚式に参加する予定があると聞きま
した。そして、症状が続いており今までのように化粧ができないと落ち込んだ様
子で話されました。顔の皮疹を隠すために普段はマスクを着用されていました。
症状出現時は通常の化粧品を使用することで症状悪化を招くこともあり、こちら
から化粧に関して提案はしていませんでした。Mさんから話を聞き、20歳代の女
性として化粧をしたりおしゃれを楽しみたいという彼女の思いに寄り添えていな
かったことに気づきました。Mさんは皮疹だけでなく色素沈着も伴っていたため、
一般の化粧品では刺激となることや肌の変色部分のカバーが難しいと考え、低刺
激性で肌の色を補正できるカバーメイクについて情報提供を行いました。後日、
Mさんはメイクをして結婚式に参加できたと笑顔で報告してくださいました。
社会で生活をしながら治療を受けている患者さんにとって、身体的症状だけでな
く外見の問題はQOLを維持していく上で重要です。Mさんとのかかわりを通して、
患者さんがひとりの生活者であることを理解し、身体的苦痛だけでなく心理・社
会的な苦痛を軽減し、社会とのつながりや自分らしさを保てるようケアを行うこ
との大切さを改めて感じました。また、そのようなかかわりが治療に対して前向
きに取り組む気持ちにもつながると考えます。患者さんの思いや気がかりに寄り
添いながら、その人らしく過ごすことができるよう今後も支援していきたいと思
います。


ホームページ→http://www.onh.go.jp/kango/kokuritu.html


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          研 修 医 日 記
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                     研修医2年目 西本 渓佑

 研修医2年目の西本です。2年目も後半に入ってきて研修医生活も終わりが見え
てきました。これまでの研修生活を振り返ってみます。一番良かったのは同期に
恵まれたことだと思います。15人同期がいるのでどの科をローテ―トしていても
だいたい一緒に研修する同期がいます。みな優秀でそれぞれの経験した症例を話
し合ったりカルテを見たりして、自分とのギャップに焦ることも多いですが、勉
強になるし大変刺激になります。研修中には辛いことや落ち込むこともあります
が、愚痴を聞いてくれたり一緒に飲みに行ったりしてくれる仲間がいることは心
の支えにもなりました。

 一番大変だったのは当直です。月3〜4回と多いわけではないですが、毎回様々
な学びがありました。当院での当直について説明すると、夜間休日2次救急の初
期対応を基本的に研修医が行っており、1年目と2年目の研修医2人で対応します。
もちろん困ったときにはレジデントの当直の先生や脳、心臓、産科、3次救急の
当直の先生に相談することができます。救急隊からの搬送連絡や患者さんからの
電話での相談を研修医が受けるというのも一つの特徴かと思います。研修医2人
である程度役割が分担されていて、救急隊からの連絡を受けて必要な情報を聞き
出したり、必要な検査を考えオーダーしたりカルテを書いたりといった主に頭を
使う主当直と、点滴を取ったり採血をしたり身体所見を取ったりといった体を動
かすことがメインになる副当直があります。1年目の11月までは副当直で12月か
ら主当直の役割を経験することになっています。この副当直から主当直に役割が
交代した時が一番大変でした。自分で必要な検査を考えたり、検査結果から入院
や帰宅の方針について判断したりするのが難しく感じました。それまで2年目の
主当直の先生に頼っていて、自分で考えて主体的に動く意識が薄かったためだと
反省しました。それ以降は当たり前のことではありますが、まず自分で考えたう
えでわからないことを相談するように意識しています。

 2年間の研修生活で反省することも多いですが、同期や指導医に恵まれたおか
げでかなり成長することができたのではないかと思います。あと数か月でさらに
成長していけるように精進していきたいと思います。
 
 
臨床研修のホームページ→http://www.onh.go.jp/kensyu/index.html


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総編集長:病院長 是恒之宏
編 集 長:副院長 関本貢嗣、上松正朗
     看護部長 伊藤文代 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 師走は忙しいです。一年を振り返り、良い年だったと思うのか、なんだか反省
したりするのか。ともあれ、2019年は年号が変わる年です。日本の国にいい
ことがあってほしいです。個人的には一年を無事に過ごしたいですが、人には時
に変わることが必要です。変わることは成長するチャンスだからです。今年を振
り返りながら新しい年を迎えるにあたり、何もしないよりも新しいことを始めた
いと思います。皆さまも、どうぞよいお年をお迎えください。

メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
www-adm@onh.go.jp

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