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メールマガジン「法円坂」No.223 (2019/11/15)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 急に寒くなりましたね。それもそのはずで、11月4日に近畿地方で『木枯らし1号』
が吹いたそうです。昨年より18日早い到来です。
皆さん、もう冬支度は万全ですか?さて今月もメルマガでホッコリしてください。
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   メールマガジン「法円坂」No.223 (2019/11/15)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  是恒 之宏 です
 ・脳動脈瘤の最新治療
 ・脳梗塞に対する血栓回収療法
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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      院 長  是恒 之宏(これつね ゆきひろ) です       
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循環器学会近畿地方会

 11月30日に大阪国際会議場(グランキューブ)で日本循環器学会地方会会長を務
めることになりました。ほぼ1年の間、副院長の上松先生、科長の上田先生を始め
循環器スタッフ、大阪大学循環器内科医局の先生方、学会事務局のクレッシーにも
ご協力頂き、ようやく2週間後に開催を迎えることができます。
 循環器学会は総会が年1回3月に、近畿地方会は例年6月、12月頃の年2回と決まっ
ています。会長として、まず決めたセッションは特別講演とアフタヌーンセミナー
企画でした。特別講演は、誰をおいても国立病院機構の楠岡理事長に、最近の臨床
研究の動向についてじっくり会員が聞く機会を作って頂こうとお願いしました。
アフタヌーンセミナーについては、大阪で進みつつある心不全患者さんの病診連携
について、当初から係わっておられる竹谷先生に相談し企画を考えて頂きました。
益々高齢化社会を迎える中で心不全患者さんの高齢化、再入院が増えています。い
かに地域一帯となって高齢の心不全患者さんを見ていくかは非常に大きなテーマで
あり、大阪が全国にお示しできるような素晴らしい病診連携体制を作れるように共
に頑張りたいと思います。
また、学生の発表の場も用意しており、この機会を通じて循環器の道にすすんでく
れる若手医師が増えることに繋がればと期待しています。

 このところ急に朝晩が寒くなってきました。心臓の病気は寒くなると悪くなる方
も増えてきます。かぜ、インフルエンザをきっかけに心不全が悪くなることも多い
ので早めの予防注射、外出帰宅時には手洗いうがいの励行をお願いします。


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       脳動脈瘤の最新治療     
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                          脳神経外科 科長
                          藤中 俊之

 脳動脈瘤は破裂し、くも膜下出血を来す可能性のある疾患です。昔は破裂し、く
も膜下出血を来して発見されることが多かったのですが、近年ではMRI・MRA検査や
脳ドックの普及により未破裂(破れていない状態)で発見されることも多くなって
きました。
 脳動脈瘤の破裂予防のための治療としては、従来開頭手術による脳動脈瘤頚部ク
リッピング術(動脈瘤の入り口部分を特殊なクリップで閉鎖する手術)が行われて
きましたが、近年では開頭を要しない血管内治療(カテーテル治療)も行われるこ
とが多くなってきました。脳動脈瘤に対する血管内治療は動脈瘤内にコイル(プラ
チナ製の細くて柔軟なバネ状の糸)を留置し閉塞する方法が主流ですが、大型の動
脈瘤や入り口が広い場合には完全に閉塞することが困難であったり、時間とともに
コイルが変形したり隙間ができることで再発するといった問題がありました。それ
らの問題への対策として、最近では特殊なステント(金属ワイヤを編んで作ったメ
ッシュ状の筒)を用いた治療が行われるようになってきました。この特殊な脳動脈
瘤治療用ステントはフローダイバーターと呼ばれるもので、動脈瘤が発生した血管
に留置すると、細かいメッシュが整流効果と動脈瘤内の血流停滞を生じさせ、その
結果動脈瘤が閉塞します。この方法により、従来は治療が難しかった大型脳動脈瘤
でも高い確率で完治できるようになってきました。また、フローダイバーターによ
る治療は動脈瘤内にコイルを留置する必要がないため(場合によっては併用が必要
です)、動脈瘤が閉塞した後に縮小することが期待できます。したがって、大型の
脳動脈瘤で神経の圧迫症状を来している場合には特に有用と考えられます。

 フローダイバーターを用いた脳動脈瘤治療は日本国内では2015年末に保険診療と
して認可されましたが、治療の技術難度が高いことなどから適正使用指針が制定さ
れ、専門的なトレーニングを受けた医師、施設のみで行うことができます(現在全
国約50施設で実施可能)。当院は認可直後の2015年末よりフローダイバーターを用
いた脳動脈瘤治療を行っており、本治療の指導的立場にもあります。対象となるよ
うな大型脳動脈瘤の治療については是非当院にご相談ください。


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       脳梗塞に対する血栓回収療法     
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                        脳卒中内科 科長
                        山上 宏

 近年、急速に普及している急性期脳梗塞に対するカテーテルを用いた血栓回収療
法についてご紹介します。
 
 脳梗塞は脳を栄養する動脈が血栓によって詰まることで起こります。脳は酸素を
大量に必要とするため、脳動脈が詰まると最も血流が悪い部分では数分で脳梗塞が
完成してしまいますが、その周辺には脳血流が低下したために脳神経細胞が活動を
停止するものの、まだ脳梗塞になっていない領域(虚血ペナンブラ領域)が存在し
ます。この領域は脳動脈が詰まったままだと3〜6時間以内に脳梗塞になってしまい、
手足の麻痺などの重い後遺症が残ってしまいます。しかし、虚血ペナンブラ領域が
まだ脳梗塞にならない間に、出来るだけ早く脳動脈を通してあげると(再開通)、
脳神経細胞は活動を再開し、脳梗塞は小さく済んで手足の麻痺などの症状を改善す
ることが出来ます。
 脳動脈を再開通させるために、tPAという血栓を溶かす薬が使われますが、太い血
管に詰まった血栓は大きいために薬だけでは充分に再開通が得られない場合が少な
くありません。そこで、細い管(カテーテル)を使って血栓を取り除く道具を脳動
脈の中に進めて再開通させる治療(血栓回収療法)が開発され、2015年に多くの臨
床研究により、この治療が脳梗塞の後遺症を著明に改善させることが示されました。
血栓を取り除く道具として、ステント型血栓回収機器(ステントリトリーバー)や
血栓吸引カテーテルが使われ、これまでなかなか再開通させることが出来なかった
内頚動脈や中大脳動脈といった太い血管が、今では素早く高率に再開通させること
が出来るようになりました。2017年に改訂された脳卒中治療ガイドラインでは、急
性期脳梗塞に対して血栓回収療法を行うことが強く推奨されています。
 しかしながら、この治療を効果的に行うためには症状が出現してから出来るだけ
早く開始する必要があります。片側の手足の麻痺や、言葉がうまく話せないなどの
脳卒中の症状が起きたら、すぐに救急車を呼んで血栓回収療法が行える病院に搬送
していただくことが重要です。国立病院機構大阪医療センターでは、脳血管内治療
を行う医師が5名常勤しており、24時間365日体制で血栓回収療法を行っています。
脳卒中かな、と思ったらいつでも救急受診していただければ幸いです。

 
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           看 護 の こ こ ろ        
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                        西9階病棟 副看護師長
                        林 祐希 

 紅葉も深まり、落ち葉のじゅうたんを踏んで歩く季節となりましたが、皆様いか
がお過ごしでしょうか。朝晩の寒さを感じるようになってきましたので、風邪など
お召しにならないようにご注意ください。

 私は看護師として働き始め12年目になります。そのうちの10年は消化器外科病棟
で勤務しています。手術という大きなイベントを前にし、期待と共に多くの不安を
抱えて入院する方々が手術を無事に乗り越え、退院していく事に喜びを感じていま
す。このような日々の中で、私が印象に残っている患者さんについてお話させてい
ただきます。
 A氏は60歳代男性で、直腸癌の手術のため入院し、人工肛門(ストマ)を造ることを
説明されました。入院当初から“どれぐらいで退院できる?”“ストマの交換はす
ぐに覚えられるか?”と退院についてとても気にする様子がありました。A氏はとて
も娘さんと仲が良く、釣りなどに一緒に出かけているそうです。そんな娘さんの結
婚式が1月後に迫っていました。A氏としては、結婚式後に手術をしたいと希望して
いましたが、がんであることから少しでも早く治療をして欲しいと娘さんにお願い
され今回の入院を決めたそうです。予定通り手術が終わり、少しでも早くに退院出
来るようにストマ交換の手技をA氏の理解に合わせて説明を行いました。A氏は積極
的にストマ交換に取り組まれ予定通り結婚式前には退院できるはずでした。あと数
日で退院というある日、A氏が発熱したため検査をすると創部の下で炎症を起こして
おり治療を継続する必要がありました。結婚式が迫り、状況として退院は難しいと
医師から判断されたため、外泊という形で結婚式に参加できるように調整を行いま
した。結婚式の場所が福岡県と言う事もあり、A氏と妻に外泊中に注意して欲しいこ
と、緊急時に近くにどんな病院があるのか、傷の管理はどうするのかなどを一緒に
確認しました。当日の朝早くに“行ってきます”と明るく出発され、病院に戻られ
たのは翌日の夕方でした。入院が長くなっていた事で体力が低下し、福岡県までの
往復にとても疲れた様子でしたが“無理言って行かせてもらってほんとに良かった
です。無事に終わりました。今思い出しても涙が出そうです”と話されたのが印象
的でした。その後、無事退院され、定期的に外来に来られる時に病棟に顔を出して
くださり“あの時の娘の家族と旅行に行ったんや。”“孫が生まれたんや。”と近
況を話して下さることがとてもうれしかったです。
 他にもA氏のように、外来の際に病棟に顔を出して下さる方がいらっしゃいます。
仕事や家庭があり忙しい中、入院生活を思い出させる病棟に来るのはつらい部分も
あると思います。そのような中でも、“みんな元気かな?と思って”“入院中に色
々聞いていたので問題なく過ごせています”と声をかけてくださる事で、退院後の
患者さんの生活を知ることが出来ます。その半面、“こんなことに困ってて”と聞
くこともあり、退院後の生活を見据えて看護を行う事の大切さを感じます。そんな
反省を生かしながら、ちょっと顔を見せに行こうと思ってもらえるような病棟の雰
囲気作りや患者さんの退院後の生活に寄り添った看護を行えるようにこれからもが
んばっていきたいと思います。

ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html


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          研 修 医 日 記
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                        研修医2年目 澤田 遙奈
 当院の研修の実際について

 令和元年11月分を担当します初期研修医2年目の澤田です。かつては私もこの研
修医日記を閲覧し、未来の研修医生活に思いを馳せたものです。まさか自分の番が
こんなにも早く巡ってくるとは思っておらず、いろんな経験を積み充実した初期研
修があっという間に終幕を迎えつつあることを感慨深く思います。
 記載内容は自由とのことですので、もう幾重にも述べられている当院の魅力につ
いては割愛させていただき、趣向を変えて本来の日記として文章を綴ってみようと
思います。

 例えば、これはとある日の私の1日のスケジュールです。

8:00 	出勤、カルテ確認
8:10 	患者回診
9:00 	手術
12:30  	標本整理、検体提出
13:00  	昼休憩
13:30  	患者さん回診
14:00  	上級医と打ち合わせ and カルテ記載
15:30  	術後カンファレンス
16:00  	カルテ記載 or 病棟業務
17:30	上級医と打ち合わせ and 患者回診
18:00	解散

 この日は診療科の手術日だったので、手術が始まる前に患者さんのカルテを確認
し、前日帰宅後から早朝にかけて患者さんに異変がなかったかを確認しました。
特に当日手術を受ける患者さんや、病態が安定していない患者さんでは、一早く対
応できるように優先してカルテを見て回診します。この日は特に問題なく、簡潔に
カルテを記載して次に手術室へ向かいました。
 研修医が手術室でまず行うことは環境づくりです。バルーンを入れたり体位を整
えたり固定したり消毒したり…と一見裏方仕事のように思えますが、安全な治療を
行う上で本当に重要なことばかりです。手術中には、執刀医や助手の先生が円滑に
手術を進められるよう術野を整えたり、比較的簡単な手技を手伝ったりしました。
手術が終われば検体を保存して病理部へ提出します。
 休憩後には患者さん回診です。この日は午前中に熱を出した患者さんの培養検査
を提出して抗生剤加療を開始しました。また、朝にはなかった腹痛が出現した患者
さんの診察をして担当看護師にも状況を確認し、原因検索や鑑別診断を行い、鎮痛
剤の頓服処方を追加しました。
 術後カンファレンスでは、当日行われた手術の概要をプレゼンします。この日は
術中所見で術式が変更になり、リンパ節郭清を追加施行した症例がありました。
 1日の終わりには必ず上級医とカルテを見ながら振り返りを行います。入院患者さ
んの今後の方針についてはもちろん、予定入院患者さんの予習や手術の注意点など
を確認します。この日は術後麻酔から覚めた患者さんが元気そうに体調について話
してくれたことに安心して解散しました。
 少しでも当院での研修のイメージが湧きましたでしょうか。繰り返しますが、あ
くまでこれは1例です。他の診療科や曜日では仕事内容がまるで違います。また、実
際は緊急入院の対応をする日もあれば、当院のイベントでセミナーなどに参加する
日も多いです。もし少しでも興味があって詳しい話が聞きたい方は、是非一度ご自
身の目で確かめに来てください。


臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/html/kensyu/shoki/nikki.html


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総編集長:病院長 是恒之宏
編 集 長:副院長 上松正朗 三田英治
     看護部長 西本京子 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 テレビ番組が最終回を終了して、番組が観られなくなることや出演俳優に会えな
くなることを「〇〇ロス」と言います。皆さん、「ラグビー・ワールドカップ・ロ
ス」になっていませんか?また新しく夢中になるものを見つけましょう。
それでは来月号をお楽しみに。

メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
408-osaka@mail.hosp.go.jp

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