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メールマガジン「法円坂」No.233 (2020/9/15)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 今年の「特別な夏」はいかがでしたか?長期休暇を取ってもどこにも行けず、静
かな夏となりました。まだまだ続くであろう新型コロナウイルス感染拡大防止策を
取りながら、いつもの生活に一日でも早く戻れることを祈るばかりです。
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   メールマガジン「法円坂」No.233 (2020/9/15)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  是恒 之宏 です
 ・コロナの光と影
 ・コロナ禍のがん放射線治療
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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      院 長  是恒 之宏(これつね ゆきひろ) です       
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 WEBの講演会が増えてきました。

 9月に入って大阪では、新型コロナウイルス感染患者数が少し落ち着いてきまし
た。全国でも第2波がピークを越え、野外での野球観戦や大声を出さないクラシッ
クコンサートなど、最大観客人数の緩和が図られるようです。まだまだ、新型コロ
ナウイルス感染症は治まることはなく長い付き合いとなりますので、個々でしっか
り感染予防をしながら社会生活を送る必要があります。当院では職員はもちろん、
外来患者さん、入院患者さんにもマスク着用をお願いしております。ご協力のほど
よろしくお願いします。

 関連する学会も、そのほとんどがwebでの開催となっていますが、これまで見合
わせていた私が関連する講演会や研修についても9月以降webで行うことが多くな
りました。先日、看護学校の講義もはじめてwebで行いましたが、学生の反応を把
握できず、また本当にしっかり聞いてくれているのかもわからないので、やってい
て寂しく感じました。チャットで質問を受けることが出来ますが、1人も質問をし
てくれませんでした。学校講義については、今後改善の余地有と感じた次第です。
一方、講演会では全国どこででもオンタイムで聴衆することが出来ますし、講演中
にwebでの質問を寄せることができます。講演後、座長の先生から質問を選択して
頂いてそれに回答する形式は定着しつつあり、新型コロナウイルス感染症の波が過
ぎた後もweb講演会の形式は増えるものと思います。演者としても、無観客試合に
慣れる必要がありますし、文字数を少なくしできるだけ見やすいスライド作成を心
がけたいと思います。


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       コロナの光と影      
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                         放射線診断科
                         科長 栗山 啓子 

 コロナは輝く太陽の光冠、明るく暖かいイメージを連想する言葉でした。去年ま
では。
今年の夏はオリンピック開催でTOKYO 2020として世界に輝く年のはずでした。
令和2年の新年会はたくさんの参加者で、ナイフとフォークを持つ肘をぶつけなが
ら今年の抱負を熱く語り合い、盛会に終えました。その1月末に武漢で謎の肺炎が
蔓延しているらしいとのニュースが入り、最初にSNSで問題提起した眼科医が逮捕
され、ただ事ではない予感がしました。インバウンドで多くの中国人観光客が押し
寄せる大阪はもはや対岸の火事ではなく、2月になると中国人観光客が発熱で来院
し、対応に四苦八苦しました。 
 2月中旬にはクルーズ船Diamond Princess号が横浜港をさまよい続け、世界中か
ら政府の対応が注目されました。インフルエンザのように夏に収束するとの噂とは
裏腹に、4月にはヨーロッパからの帰国者がウイルスを持ちこみ、全国に拡散しま
した。緊急事態宣言下に、大手企業は在宅勤務を急スピードで実践しました。5月
末に緊急事態宣言が解除され、待ちに待った夏が来ました。が、7月の記録的豪雨
と8月の殺人的猛暑の中、第2波が倍返しで襲来しました。こうして,2020年の光
のない春と夏が終わりました。
 コロナのもたらした光は何だろう。感染拡大防止の大号令のもと、多くの企業で
ITを利用した在宅勤務が進みました。働き方改革の狙いである「多様な働き方の実
現」が絵に描いた餅ではなくなりました。
 これには放射線診断科は問題なく対応できました。時差通勤を実践し、コロナ関
連助成金で在宅での遠隔診断の実現に取り掛かっています。勤務医である私は画像
診断の最新の情報を発信することが仕事であり、国内外の学会に参加していました。
今年度は行動制限で出張が禁止され、結果として移動時間と出張旅費が節約できま
した。4月の放射線学会はギリギリになってWeb開催となり、職場と自宅で多くの
講演とポスターを閲覧し、ついでに専門医更新の単位を取得できました。地域の研
究会とその世話人会も中止やWeb開催となり、移動時間の節約ができました。
 院内の会議もコロナウイルス関連が最優先となり、三つの密を避けるために必要
性の低い会議はメール会議となり、仕事がはかどりました。結果として夢の定時退
社が実現しました。 
 コロナは働き方改革の柱である「仕事と家庭の両立」と「男女均等推進」する光
になると思いたい。


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     コロナ禍のがん放射線治療        
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                         放射線治療科
                         科長 田中 英一

 2020年9月現在、新型コロナウイルスは世界中で猛威をふるい続け、死者は100万
人に近づいています。新型コロナは、がん診療にも大きな影響を与えています。手
術・放射線治療・抗がん剤など治療の延期や治療内容の変更を余儀なくされていま
す。当院では幸いなことに現在はがん診療はほぼ正常におこなえています。
 放射線治療の分野では、欧米などから、新型コロナ流行期の放射線治療ガイドラ
インが多数発表されています。これらには、がんの発生臓器ごとに新型コロナ流行
期の放射線治療指針が事細かに書かれています。多くの放射線治療は、5−7週間か
けて連日おこなうのですが、患者さんの来院回数を減らすことによって感染を予防
するために1回の放射線量を増やして治療日数を短縮するということもすすめられ
ています。ただし、放射線治療を少しずつ時間をかけてするのには理由があります
。それは、10年先、20年先に発生する晩発性障害を減らすためです。したがって、
当院では過去に治療期間を短縮する臨床試験がおこなわれ、エビデンス(根拠)の
ある疾患のみ治療期間を短縮しています。たとえば、乳がんの乳房温存手術後の再
発予防目的の放射線治療は、従来25回の治療でしたが、1回線量を増やし16回で終
了するようにしています。
 4月に女優の岡江久美子さんが新型コロナ肺炎で亡くなるという残念なニュース
がありました。この件に関して、岡江さんの所属事務所が、「昨年末に初期の乳が
ん手術をし、1月末から 2月半ばまで放射線治療を行い 免疫力が低下していたのが
重症化した原因かと思われます。」とのコメントを出しました。おそらく、多くの
国民のみなさまは事務所のコメントになるほどと納得されたことかと思います。そ
して、多くの乳がん患者さんが、放射線治療を受けること、受けたことに大きな不
安を感じたと思います。実際、不安を訴える患者さんや治療が必要なのに受けたく
ないという患者さんが大勢いらっしゃいました。しかし、乳がんの術後放射線治療
で免疫が低下することはほとんどないと思います。この件に関しては、放射線治療
を専門とする日本放射線腫瘍学会の対応は早く、「早期乳がん手術後に行われる放
射線治療は、体への侵襲が少なく、免疫機能の低下はほとんど ありません」、
「乳癌術後の放射線治療が新型コロナウイルス感染症の重症化を招くという科学的
根拠もありません」、「術後の放射線治療は乳癌の再発リスクを低下させ生存率向
上をもたらすことが科学的に強く証明されている大切な治療です」などの声明を出
しました。放射線治療専門医が適切に対応すれば問題はありませんので安心して治
療を受けていただけたらと思います。


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           看 護 の こ こ ろ        
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                         東6階病棟 副看護師長
                         長尾 奈穂
 
 今年の夏は新型コロナウイルス感染症対策のマスクや換気などで例年以上に暑さ
が身にしみました。残暑も厳しい中、皆様いかがお過ごしでしょうか。
 私は腎臓内科、脳卒中内科などの内科病棟や循環器科病棟、外来を経て今年4月
より副看護師長として整形外科病棟で勤務をしています。

 若い頃に担当した印象深い患者さんをお話しします。その方は50歳台前半の女性
の方でした。大腿部痛で歩行が困難になったと受診されました。検査を受け、肺が
んからの大腿骨への転移と診断され、「完治は望めない」とご本人へ告知されまし
た。ご本人は取り乱されることはなく、肺がんへの治療は望まれず、ただ「歩ける
ようになりたい」と手術を希望されました。
早くに離婚されており、家族は女手一人で育てた娘様1人でした。キャリアウーマ
ンで会社を経営されてきた彼女にとって、「車椅子はみっともない」という思いが
とても強く、「退院の時には歩いて帰りたい」と強い希望がありました。肺がんに
ついても外来で突然の告知でしたが、「最後には、自分で決めたホスピスに入るの
よ」とご自身で病院も探して決められていました。とても不安も強かったと思いま
すが、ほとんど誰にも弱音を吐くことなく入院生活を送られていました。
 手術は無事に終了しましたが、いざ退院が近づいた時には、1人で歩くことは難
しく、歩行するには片側だけですが松葉杖が必要でした。入院時から「歩いて帰る
」ことを目標にされており、松葉杖が必要な現状をなかなか受け入れられず「みっ
ともない姿では帰れない」と何度も話されました。そのたびに話を聴き、話し合い
、その患者さんができないことを否定せず、残りの時間を大切にして、自宅で家族
と好きな事をして過ごし、今できることを少しでも長くできるように考えてほしい
ことを伝えていました。患者さんは「言われていることは充分分かるけど、気持ち
の踏ん切りがつかないの」と話されていました。
 彼女にはもう一つ受け入れられないことがありました。それは、長い入院ですっ
かり白くなった髪でした。松葉杖が必要な歩行は変えることができないけれど、髪
染めは何とか病棟で出来るため、娘さんに手伝ってもらい髪を染めることにしまし
た。髪を染めることで、退院への踏ん切りをつけることを自分で決められました。
たかが白髪染めですが、長年身だしなみに気を遣いバリバリ仕事をされてきた彼女
にとって、白髪染めは病院生活から日常生活へ戻るための大きな一歩でした。退院
時には車椅子でしたが、とても良い表情で娘さんと笑いながら退院されました。 
のちに自分で決められた時期にホスピスへ入り穏やかに過ごされたと聞きました。
 患者さんによって、大切に考えることも現状への受け入れや希望することも様々
ですが、これからも患者さんの希望や話しを聴き、どう考えているのか、どうして
いきたいかを一緒に考えて看護に繋げていきたいと思います。


ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html


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          研 修 医 日 記
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                        研修医2年目 寺川 航基


 はじめまして、初期研修医2年目の寺川航基と申します。医師として当院で働き
始めてから早二年ということで、部活や学業に精を出していた生活が昨日のように
思い返されることを思えば、光陰矢の如しといったところです。さて、この研修医
日記を今見てくださっている方は研修先として当院が気になっていて、「この病院
はどんなところなのかな」「どんな研修をしているのだろう」などといった疑問を
抱いてこのコラムにたどり着いたことと思います。1年半年の研修で当院について
感じたことや知ったこと、経験したことを書き連ねますので、皆さんの疑問に対す
るアンサーとなれば幸いです。
 まず、当院のローテーションの特徴について、当院では選択科が4ヶ月となって
おり、幅広い診療科をローテーションすることになるということが挙げられます。
また、どの診療科の先生方も非常に熱心・丁寧に教えて下さります。そのため、幅
広い知識や多岐にわたる手技を身に付けることが出来るため、臨床医としての能力
の「幅」が大きくなり、救急外来や病棟管理において大きな視野で患者さんに対応
することが可能となります。確かに、同じ一つの診療科を1年間近くに渡って集中
して回る、ということは難しく、レジデント以降の臨床において不安を覚える方も
いらっしゃると思います。しかし、どの科に進んでも患者さんがその科に限定され
た傷病をきたすとは限りません。そのため、当院のローテーションで得た広範なノ
ウハウはレジテント以降の臨床においても非常に強い武器になると考えます。
 続いて、当直業務についてです。救急当直はどの病院でも研修医生活の特徴とな
っていることかと思われますが、当院の救急当直の特徴としては基本的には研修医
二人で看護師さんと共に救急対応を行うということになります。具体的には、2年
目が救急隊や患者さんからの電話対応を行い、必要な診察や検査、輸液や薬剤投与
などの初期対応の方針の決定をし、帰宅が可能か、入院での加療が必要かを判断し
ます。また1年目は2年目の指示をもとに必要な手技や身体診察・問診を行います
(12月からは1年目と2年目の役割は交代します)。そのため、救急外来に来ら
れた患者さんがどういう状態かを考え、緊急性の有無を判断し、診察・検査・初期
治療など何が必要かを適宜把握するといった極めて実践的な経験を蓄積することが
できます。研修医二人だけでの対応ということで不安になる方もいらっしゃると思
いますが、当院では時間外当直としてレジデントの先生が常駐しており、判断にあ
ぐねる時や正しいか不安な時はすぐに相談する事ができます。また、心当直や脳当
直、産科当直や救命当直といったそれぞれの領域の専門科の先生方も常駐している
ので、当該疾患で専門科の対応が必要と判断した場合には相談可能です。
 当院の研修の最大の特徴としては、一年度あたり15人強という研修医の多さに
あります。一つの科を複数人で回ることも多いので、業務を分担したり気軽に相談
したりする事もできます。また皆勉強熱心・向上心旺盛なので、症例について皆で
相談・議論し合うことも度々あります。何よりも、研修中は悩むことや辛いことな
ど多々ありますが、研修医は皆たいへん気がよく他人思いであり、相談すると親身
になって聞いてくれるので気が晴れることが多々あります。同じ環境で切磋琢磨す
る素晴らしい仲間が大勢いることが、この病院の最大のメリットだと感じます。

 以上拙い文章ではありますが、当院の特徴について説明させていただきました。
当院での初期研修に興味を抱かれましたら、是非一度病院見学に来られて当院の雰
囲気を肌で感じて頂ければと思います。研修医皆でお会いできることをお待ちして
おります。

臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/kyujin/syokikensyu/nikki/index.html


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総編集長:病院長 是恒之宏
編 集 長:副院長 上松正朗 三田英治
     看護部長 西本京子 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 今月のメルマガいかがでしたでしょうか?台風シーズンに入りました。近年は非
常に大きな台風が日本列島に上陸しております。新型コロナウイルス対策に加え、
減災準備も日頃から心掛けたいと思います。

メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
408-osaka@mail.hosp.go.jp

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