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メールマガジン「法円坂」No.241 (2021/5/17)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 令和3年5月のメルマガです。風薫るさわやかな季節となりました。しかし、新
型コロナウイルス感染第4波の勢いが収まらず、緊急事態宣言も延長され、皆様
不安な日々を送られていると思います。これからの新規感染者と重症患者数の減
少を祈るばかりです。
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   メールマガジン「法円坂」No.241 (2021/5/17)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  松村 泰志 
 ・心臓血管外科科長 就任のご挨拶
 ・胆肝膵外科科長 就任のご挨拶
 ・薬剤部長 就任のご挨拶
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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       院 長  松村 泰志    コロナ対応 続編       
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 先月は、院長に着任して早々、コロナ患者急増に対応するために、重症患者用
病床を6床から23床に増やすまでの経過をお話ししました。「To be continued」
としましたので、今月は、その続きをお話しします。
 4月15日時点で、重症病床の逼迫度が更に高まってきました。新規発生患者数
は増加し続け、重症患者数もそれに比例して増え続ける状況でした。「重症患者
数は少なく見積もっても350人、場合によっては450人まで行くかもしれない」と
の予測で、第三波で準備した重症病床数の倍の患者が発生するとの、何とも非情
な数値がはじき出されていました。さて、どうしたものか。大阪医療センターで
更にできることがあるのか。
 大阪医療センターでは、西8階病棟は、そもそも感染症用の病棟として作られ
ており、病棟の全室が陰圧室となっています。この部屋を有効利用するアイデア
は当初からありましたが、重症患者さんに対応できる医師、看護師の医療スタッ
フがおりません。重症患者の診療に当たるためには、相応の技能と知識が必要と
なります。「重症病床が足りない」と騒ぎになっていますが、正しくは、「重症
患者を診る医療スタッフが足りない」のです。大阪府の事業で、重症コロナ患者
を受け入れるため30床を持つ大阪コロナ重症センターが突貫工事で作成され、第
三波の時には活躍していました。ところが、第四波では、病床が逼迫して大騒ぎ
になっている時点でも、大阪コロナ重症センターの30床がフルでは立ち上がって
いませんでした。診療にあたる医療スタッフを集めることができなかったためで
す。第三波の時は、大阪医療センターでも、阪大病院でも医療スタッフをコロナ
重症センターに送っていましたが、第四波では、それぞれに医療スタッフを派遣
する余裕はない状態でした。
 この事態になる前に、国立病院機構本部から、医療職の派遣要請をすることが
できることを聞いていました。ここぞと思い、看護師の派遣要請を出しましたと
ころ、大阪の窮状を全国でも心配してくれていて、横浜、三重、山口、佐賀から
重症対応ができる優秀な看護師4人の派遣を約束してくれ、その分、もうひとい
きがんばりなさいとのことでした。そこで、4月30日より、西8階の14床程度をコ
ロナ中等症用病棟とし、重症患者である程度回復した人を受け入れ、重症病床を
空けて新たに患者を受け入れることができる体制としました。ただ、やはり看護
師は不足しますので、東10階病棟を休棟して看護師を確保し、医師は、全診療科
から担当医師を出してもらい、コロナ診療チームを結成し、このチームで6床の
重症患者と西8階の中等症患者を担当する体制としました。
 大阪府の報告では、5月6日に重症患者が480人でピークとなり、その後、徐々
に減り始めています。大阪府の重症病床数は、4月7日の報告では161床、この時
の重症患者数は149人との報告でした。その後、重症病床数は372床、つまり当初
の2.3倍まで増やしましたが、100人以上の重症患者は、中等症を担当する病院が
引き受けて何とかしのいだ結果となりました。5月13日現在、ピークを脱したと
は言え、重症患者数は382人です。この間でも、交通事故、急性胆嚢炎等々の緊
急で治療をしなければならない患者さんは発生しています。病床が逼迫している
状態はまだ続きそうです。
 昨日テレビを見ていますと、「東京で新規感染患者数が1000人を超え.....
重症患者数は84人.....病床が逼迫し.....」ん!大阪で1カ月前に経
験したことが、全国の各地で起こりつつあるようです。大阪は、この猛烈な変異
株に対して、私は、府民も医療者も良くがんばって対処したと思います。もし、
時間を遡ることができるのであれば、もう少し早いタイミングで緊急事態宣言を
出して感染の広がりを厳しく抑制すべきだったと思います。結果的には、それし
か善処する方法は思いつきません。他の地域では、是非、大阪を他山の石として
頂きたいものです。各地で緊急事態宣言が早目に発出されているのは正しい対処
と思います。

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          心臓血管外科科長 就任のご挨拶      
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                            心臓血管外科科長
                                西 宏之

 2021年4月1日に新しく心臓血管外科科長に赴任いたしました西 宏之と申しま
す。大阪大学心臓血管外科、大阪警察病院、大阪急性期・総合医療センターを経
て赴任して参りました。国立病院機構大阪医療センターでも精一杯、頑張ります
ので、皆様宜しくお願い申し上げます。今回はご挨拶を兼ねまして、私が大切に
している心臓血管外科診療における二つのモットーについてお話させていただき
ます。
 第一のモットーは、良質な最先端の心臓血管外科治療の提供です。あらゆる心
臓血管外科手技の中から一人一人に最も適した治療を提供するのが第一と考えて
います。あらゆる術式の中から個々の患者背景に応じた治療方針決定を心がけ、
良好な医者患者関係を築き、安全確実な医療を提供することが重要と考えていま
す。
 そのためには進化の著しい心臓血管外科手技の最先端の治療を地域の皆様に提
供すべく、低侵襲心臓手術(MICS)やロボット手術の導入を進め、ステントグラフ
トなどのカテーテル治療やあらゆる最新の心臓血管外科治療にも積極的に取り組
んでいきたいと考えております。過去の施設でもすでに多く経験しており、特に
小切開での弁膜症手術(僧帽弁だけでなく大動脈弁も)、冠動脈バイパス術といっ
たMICS手術、カテーテルによるステントグラフト治療は、得意とするところです
ので、当施設でも積極的に進めていこうと考えております。
 第二には、断らない医療の実践があります。地域の最後の砦としての役割を果
たすためには、あらゆる困難な症例の受け入れが重要です。どんな重症例も断ら
ず、あらゆる重症例を救命できるような体制作りを心がけたいと考えております。
先述の低侵襲心臓手術(MICS手術)から重症心不全外科までの治療提供体制をチー
ムとして確立し、緊急症例にも積極的に対応できればと考えております。
 あらゆる皆様からのニーズに対応し、これらの目標を確実に実行するために、
心臓血管外科だけに留まらず、循環器内科や麻酔科等の他の診療科の先生方、看
護部、臨床工学技士、リハビリテーション部、薬剤師、事務等の各方面との協調
を進めていき、良いハートチーム体制の構築ができればと考えております。皆様、
今後ともご指導の程、宜しくお願い申し上げます。

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           胆肝膵外科科長 就任のご挨拶    
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                             肝胆膵外科科長
                               後藤 邦仁

 2021年5月付で大阪医療センター肝胆膵外科科長に着任いたしました 後藤邦仁
と申します。私は1997年(平成9年)に大阪大学医学部を卒業し、約5年間の外科
初期研修を終了後、2002年、大阪大学大学院医学系研究科 病態制御外科学講座 
博士課程に入学。University of MiamiのLiver/GI Transplantに短期留学をし、
肝移植について学びました。帰国後、2003年より大阪大学大学院医学系研究科 
第一解剖学講座の文部教官助手となり、医学部学生にマクロ解剖を教える傍ら、
主にオートファジー性細胞死についての研究を行いました。2006年より大阪府立
成人病センター(現 大阪国際がんセンター)の消化器外科にて肝胆膵領域癌の
外科診療/臨床研究に従事した後、2015年より、大阪大学大学院医学系研究科 
外科学講座 消化器外科学の助教(2021年より講師)として、さらに肝胆膵領域
癌および肝移植/膵移植の外科診療/研究/教育に取り組んでまいりました。
 さて私たちが担当する肝胆膵外科では、肝胆膵領域の悪性腫瘍や、胆石症など
の良性疾患に対して手術を行っております。この領域は対象となる疾患が多岐に
わたり、また手術に際しては複雑な解剖の把握が必要なため、術前の診断が極め
て重要になってきます。そのため消化器内科、放射線科など他診療科の先生と常
に連携を取りながら、また毎週カンファレンスを行いながら、一人一人の患者さ
んに最適な治療方針を検討しています。手術につきましては、当センターは日本
肝胆膵外科学会が認定している高度技能専門医修練施設でありますので、高度進
行癌に対して肝臓と膵臓を同時に切除する手術や大血管を同時に合併切除/再建
する手術を施行することもあります。一方で肝胆膵外科領域におきましても他の
外科系診療科と同様に腹腔鏡下手術やロボット支援下手術といった低侵襲手術の
導入が進んできております。当センターでも腹腔鏡下手術の割合は徐々に増加し
てきており、出来るだけ負担の少ない手術を提供できるように取り組んでおりま
す。
 これまでの経験を生かして、今後も個々の患者さんの病態を的確に把握し、根
治性と安全性を常に考えながら、低侵襲手術から高難度手術までの幅広い手術を
安全に行えるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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            薬剤部長 就任のご挨拶    
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                             薬剤部長
                                                             吉野 宗宏
                                
 4月1日付けで大阪南医療センターより、配置換で参りました吉野宗宏(よしの
むねひろ)です。当院では平成6年から平成26年まで20年間勤務していました。
今回をあわせると歴代の中で最長勤務記録を更新している薬剤師と自負していま
す。今回、7年ぶりの当院となりましたが、医師、看護師、コメディカルの方々
から患者さんに至るまで「お帰りなさい」と温かく声をかけていただき故郷に帰
ってきた感じを受けています。
 さて、病院薬剤師は、いわゆる「モノ」を対象とした調剤・製剤業務に加え、
「ヒト」を対象とした病棟業務が急速に発展しています。高度化かつ複雑化する
医療のなかで、薬剤師は医療従事者として、より深く薬物療法に係わることによ
り医薬品の適正かつ安全使用に貢献することが求められ、病棟における服薬指導、
医師への処方提案、最新かつ的確な医薬品情報の提供、薬物療法における治療効
果や副作用モニタリング、薬物治療の個別最適化、医療安全確保など業務が拡大
しています。一方、コロナ禍で人との接触を極力避けることが求められる中、非
対面のリモートワーク、オンライン会議、オンライン診療・服薬指導などが急速
に浸透したことで、これまでの働き方やタスクシフティングなど、業務スタイル、
そのものが根底から変わる「新しい風」を感じています。
 薬剤部が一歩ずつ着実に前進できるよう、微力ながら使命を果たしたいと思い
ます。今後ともよろしくお願いいたします。
                                        
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            看 護 の こ こ ろ        
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                           看護部 副看護師長  
                               吉川 啓子 

 新緑が輝く季節となりましたが、新型コロナウィルス感染拡大は第4波を迎え、
外出を自粛する2度目のゴールデンウィークを迎えました。連休をお家時間に費
やすことをもどかしく感じつつ、ワクチンの普及によるコロナ感染の終息を心よ
り願っています。
 近年、外科治療の高度化と低侵襲化が進んでおり、その一例にロボット支援下
手術があります。ロボット支援下手術とは、ビデオカメラで体の中を観察し、鉗
子と呼ばれる複数の手術器具で手術をするのですが、腹腔鏡下手術とは異なり、
術者が直接鉗子を握るのではなく、鉗子を動かす機械を術者が操作することで、
術者の手の動きがリアルタイムに鉗子先端の動きとして再現されるため、柔軟で
細かな動きの手術を行うことができます。2000年にアメリカで広まったそうです
が、日本では2012年にロボット支援下前立腺全摘除術が保険承認されると、急速
に普及しました。そして、当院では2021年1月より、ロボット支援下手術(以下
ダヴィンチ手術)が開始されました。私は手術室で勤務しており、ダヴィンチ手
術に携わることができました。
 ダヴィンチ手術の導入にあたり、ロボット支援下手術ワーキンググループが立
ち上がり、各診療科医師をはじめ、臨床工学技士、手術室看護師による入念な話
し合いと準備が行われました。具体的には、ダヴィンチ手術に対応可能な手術室
の環境作り、使用物品の調整と管理方法や看護師の知識習得と手術介助手順の確
立などです。また、医師とともに他院へ見学に行き、実践における知識を習得し
ました。昨年12月にダヴィンチの機械が搬入され、改めてダヴィンチ手術が実施
されることに対する緊張感と期待感が高まるなか、ベテラン医師が業務終了後の
遅い時間から、シミュレーターを使用したトレーニングに励まれている姿を何度
もお見かけしました。
 1月には、実施予定手術のデモンストレーションが実施されました。それにより、
全体の配置や実際の動きを医師、臨床工学技士、手術看護師が手順に沿って実施
し、ディスカッションしながら当日の動きを確認しました。手術室看護師は、術
中体位による皮膚トラブルや神経障害が発生しないような固定方法、スムーズな
器械出しができる立ち位置などを診療科医師、麻酔科医師とともに検討しました。
 満を持して迎えた当院初のダヴィンチ手術当日、不安もありましたが、患者さ
んに安全な手術が実施できるよう、ダヴィンチ手術に関わるスタッフ全員が一丸
となって手術に入りました。そして、第1例目のダヴィンチ手術は予定通りに終了
し、皮膚トラブルや神経障害を起こすこともありませんでした。手術を受けられ
た患者さんは術後順調に回復され、退院されました。ダヴィンチ手術導入により、
手術室看護師は多くの学びを得ることができ、患者さんとって侵襲の少ない手術
が実施されることの喜びを改めて感じることができました。
 これからも手術を受けられるすべての患者さんに対して、少しでも安心して手
術を受けていただけるよう多職種で取り組んでいきます。
 最後になりましたが、向暑の折り、くれぐれもご自愛ください。

ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html

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             研 修 医 日 記
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                                                         初期研修医 2年
                                                           松尾 剛明

  初期臨床研修医として働き始めた時には想像もつかなかったCOVID-19の流行な
どがあり、目まぐるしく社会環境が変化する中、日々精一杯研修医生活を送って
おります。
 この研修医日記では、私が当院で研修を受けてきた中で良いと感じた点と研修
医生活について書きたいと思います。

1.研修で良いと感じた点
 当院には多くの科が揃っているため、日々の仕事において何か困った時にはす
ぐに相談できる先生方がおられるということが挙げられます。日中の入院患者に
対する治療について悩んだ時は、各科の先生方にコンサルテーションを行うこと
ができますし、救急外来の当直中においても、心疾患、脳疾患、三次救急疾患が
疑われた際は、すぐに心当直、脳当直、救命当直の先生方にコンサルテーション
を行うことができます。また、放射線診断科の先生方が、素早く画像読影をして
くださるので、救急外来症例についてすぐに振り返りを行うことができます。さ
らに、当院には臨床経験豊富な診療看護師(JNP)の方々がおられ、初期研修医が
学ぶべき様々な診療技術や初期治療について教えてくださいます。このように、
多面的な角度から日々学ぶことができるのは、多くのスタッフに恵まれているか
らこそ成し得る最大のメリットだと思います。
 また、当院はコメディカルのスタッフにも相談しやすい環境にあります。入院
患者に対する治療薬の選択に悩んだり、薬の飲み合わせについて気になった時に
は、日中・夜間を問わず、いつでも薬剤師の方に相談できますし、各種画像検査
について分からないことがあれば、診療放射線技師にすぐに相談することができ
ます。特に初期研修を始めたばかりの頃は、右も左も分からないことが多いです
が、どんなに些細なことでも快く教えてくださいます。このように、困った時は
24時間いつでも相談できるコメディカルのスタッフにも恵まれていることが当院
の大きな魅力の一つであると思います。

2.研修医生活
 初期研修は代々、自由闊達な雰囲気が継承されておりますので、自分が興味を
持った内容について、とことん掘り下げて勉強することができます。研修医みん
なが一丸となって、一つのことを成し遂げるというよりも、各々が好きな分野を
それぞれの自由なペースで学んで行くといった感じです。また、研修医を対象に
したレクチャーのみならず、院内で多くの講演会や勉強会も開催されていますの
で、自己研鑽に励むことができます。研修医生活は病院ごとに様々であり、それ
ぞれ特色がありますので、将来当院にて研修を行いたいと考えておられる医学生
の方々は、まずは見学に来られることをお勧めします。見学に来られた際の雰囲
気がまさに将来の自分の置かれる環境に近くなると思います。どの科の見学もス
ケジュールに余裕を持たせてくれているので、科の見学の合間に研修医ルームへ
話をしに来られる方が多いです。研修医ルームで研修医より一歩踏み込んだ話を
聞き、最終的に受験するかどうかの判断材料の一つにしている方が多いように思
います。

当院ホームページをご覧になられた皆様が、将来希望される病院にて研修を受け
られますことを、心より願っております。
                                                                
臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/kyujin/syokikensyu/nikki/index.html

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総編集長:病院長 松村 泰志
編 集 長:副院長 三田英治 平尾素宏
     看護部長 西本京子 
編   集:池永祐子
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 来月の今頃は、新型コロナウイルス新規感染者と重症患者数が激減していること
を切に願うばかりです。また、梅雨に向かう折から体調には十分ご留意ください。

408-osaka@mail.hosp.go.jp

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