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メールマガジン「法円坂」No.270 (2023/10/16)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)




 気候が穏やかになり、スポーツの秋です。昭和生まれの私としては10月の祝日
は「10月10日、体育の日」でしたが、今は「10月の第2月曜日、スポーツの日」
です。体育祭や運動会も秋以外に開催されることも多くなりましたが、皆さん行
楽に出かけて身体を動かしましょう。
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   メールマガジン「法円坂」No.270 (2023/10/16)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  松村 泰志
 ・ご存じですか?減量代謝改善手術
 ・国病で事務職として働く10
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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 院 長  松村 泰志 スポーツ世界大会での日本代表チームの活躍で思うこと
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 今年は、各スポーツ競技の世界大会が開催され、日本代表チームが素晴らしい
活躍をしてくれました。野球ではWBCが開催され、日本が優勝しましたし、バス
ケットボール男子、バレーボール男子とも、見事パリオリンピックの切符を手に
入れました。バスケットボール女子、バレーボール女子もパリオリンピックの最
終予選に進むことになっており、望みをつないでいます。ラグビーは残念ながら
決勝リーグに進むことはできませんでしたが、強豪チームを破り、世界の中での
存在感を示してくれました。十分な成果だと思います。
 こうした世界大会で日本チームが勝つと、理屈無しでうれしいものです。何か
元気がもらえます。日本では、どの競技でも、日本の総裁選よりも盛り上がりま
す。企業はグローバル化していますし、政治の世界でも、経済の世界でも日本と
しての一体感をあまり感じることはありません。卒業式で国旗を掲揚し、国歌斉
唱することに異を唱える人がいたり、日本人は愛国心を失ってしまったと嘆く人
がいたりします。しかし、スポーツの世界大会では、日本人全体が心を同じくし
て日本チームを応援し、「日本!、日本!」と声を上げて声援し、頬に日本の国
旗を描いている人までいます。日本の国旗が掲揚され国家が流れる時には、神妙
に聞き入ります。日本人は、心の底では皆日本が好きなのだと感じます。また、
日本人は外国人を排除する国民性があると言う人がいますが、外国生まれの人で
も日本国籍を取って日本チームのために貢献している人には、まったく日本人と
して受け入れている様子が伺えます。特にラグビーでは、半分ぐらいの選手が外
国で生まれ育った人ですが、日本に親しみを持って来てくれたことを国民が歓迎
するムードがあるからこそ、世界で戦えるチームを作ることができたことが良く
分かります。
 過去に遡ると、日本チームが世界の強豪チームを相手に互角に戦えるレベルに
なったことはめったにありませんでした。それが、今は、どの競技においても、
徐々に実力を付け、世界ランキングを上げ、こうした大会で順当に勝ち進めるよ
うになっています。今の強さは本物であり、簡単に崩れるものではないと感じま
す。
 スポーツでは勝つか負けるか結果はシンプルです。しかし、勝つためにやるべ
きことは沢山あり、簡単ではありません。才能のある人が拾い出され、若い時か
らトレーニングを受ける機会を得、指導者の下で正しくトレーニングされること
が必要です。そもそもスポーツ選手になろうとする人が現れるのは、そのスポー
ツで活躍している人が居て、その人に憧れを持ち目指そうと思うのでしょうから、
初期にはパイオニア的な人が活躍することも必要です。また、外国生まれの人で
も、受け入れ育て上げようとする人達がいてこそ良い選手に育っていきます。ラ
グビーではリーチマイケルが日本チームを引っ張っていますが、リーチマイケル
はニュージーランド生まれで、日本に来た時には細くてか弱い男の子だったそう
です。それを我が子同然にかわいがり育て上げた日本の第二の家族の下、立派な
体格となり、立派な選手になっていきました。
 日本は戦後しばらくまでは、国民に余裕がなく、とてもそのような雰囲気では
なかったと思います。それが経済成長に支えられ、国民の生活が安定したころか
ら、スポーツにも関心が持たれるようになっていったと思います。しかし、私が
子供のころは、日本人は体格が外国人に劣っており、スポーツで世界と互角に戦
うのは無理だと誰もが思っていました。経済は絶好調で、バブル期にはジャパン
アズナンバー1などと言っていましたが、それでも国民の気持ちは内向きであり、
どこか劣等感のようなものを秘めていたと思います。その後、バブルが崩壊し、
日本人は自信を失ってしまったかのように見えました。しかし、スポーツの世界
では、バブル崩壊後にもグローバルの視点が広がり、海外から指導者が来たり、
海外に渡って活躍する人達が増えたりと、海外の一流の人達との交流が増え、レ
ベルが少しずつ上がっていったと思います。その成果が、今年の日本チームの好
成績に繋がっていると感じます。経済の世界では、バブルのようなことが起こり、
本当の成長が見えにくかったですが、スポーツの世界では、ゆっくりではありま
すが、着実に成長してきており、その成果が見えてきていると思います。スポー
ツの世界大会で勝つためには、日々の努力、自信を持つこと、どのような場面で
も前向きでいること、仲間を信じ大切にすること、外国人も受け入れる寛容さを
持つこと等、あらゆることが必要になります。
 先日は男子バレーのオリンピック出場を掛けたスロベニアとの戦いを観戦しま
した。日本が世界レベルになったとは言え、高さがものをいうバレーにおいて、
平均身長は10㎝ほど低く体格的には劣っていました。それでも勝つためには、強
打だけでなく、様々な工夫をした攻め方をしていました。こうした頭を使った細
かな技は日本らしく思いました。バレーでは、各セットの後半になると、手に汗
を握るような展開になります。競っている場面で、選手達は強烈なジャンプサー
ブを打つのですが、相手コートに入るか否かは紙一重のところがあります。普通
にサーブをしていたのでは、確実に相手側にスパイクを決められてしまいます。
観戦している方が普通ではない精神状態のところ、選手たちは平然とジャンプサ
ーブを打つのを見て感心しました。観戦している方は、後3点とれたらオリンピ
ックに行けるなど、様々な雑念を思いながら観戦しますので、ハラハラドキドキ
しますが、選手達はおそらくそのようなことは考えず、眼の前のことに集中して
いるので、緊張で体が動かないなどということがないのだと思います。禅にも通
じるマインドコントロールです。
 先日、サッカーの本田圭佑さんがインタビューに答えている番組があり見てい
たのですが、面白いことを発言していました。本田さんは、10才以下の子供達を
対象に自身で考えた4v4のリーグ戦を開催し、毎年多くのチームが参加して、し
のぎを削っているとのことでした。独自のルールというのは、4人対4人のサッカ
ーの対決なのですが、指導者を置いてはいけないというものなのです。つまり、
子供達だけで戦略を考え、自分達だけで試合をします。何故、そのようなことを
しているのかと問うと、本田さんは、日本がワールドカップで優勝できるチーム
になることを本気で目指していると言います。では、日本がワールドカップで勝
てるようになるには何が必要なのか。それはスター選手だと言うのです。今でも
日本人が海外のチームに属して徐々に頭角を現している選手はいるものの、日本
で育ち日本でプレーしている人の中で、世界に通じるスター選手がいないことが
問題だと言うのです。なるほどと思います。ですから、10才以下の少年を集め、
そこからスター選手になる人を育てるための活動をしていると。そのためには、
指導者に管理されているのではいけないというのです。スター選手になるために
は、自分でどうすれば良いかを考える力がまず必要で、指導者に言われてその通
りにやるだけの人はトップにはなれないと言うのです。インタビュアーが、その
ように育った人達ばかりになると、チームワークが乱れることになるのではと質
問したところ、本田さんは、そこはバランスが必要ですねと答えていました。と
ても納得の行くお話しでした。単に評論的なことを言う人が沢山いる中で、独自
ルールの4v4のリーグ戦を作り上げ、実際に多くの優れたサッカー少年を集めて、
思った以上の成果を挙げていることを聞き、素晴らしいことと思いました。
 チームで戦うスポーツ競技において、常に世界のトップにランキングされるた
めには、国民の意識、文化が醸成され、人を育てるための体制があることが条件
となります。日本では、野球においては、こうしたものが出来上がってきており、
世界で常にトップの座を占めています。これに対して、サッカー、バスケット、
バレーについては、まだ歴史が浅いですが着実に醸成されてきており、その成果
が今現れてきています。ラグビーはもっと歴史が浅いですが、これから期待でき
ると思います。
 スポーツは注目を集める分、報道もされ、誰からも背後にあることも含め様子
が良く分かります。一方スポーツが特殊な世界かと言えば、意外と他の社会にも
通じることが多くあります。私達が、優れたスポーツ選手や監督の発言を熱心に
聞き入るのも、そこで発言されている内容は自分達の領域にも当てはまると思う
からだと思います。日本のスポーツ界は、それぞれの領域において日本が世界の
トップにランキングされるため何をすべきかを教えてくれています。

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             ご存じですか?減量代謝改善手術
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                           上部消化管外科科長
                                                              竹野 淳 

 突然ですが、減量代謝改善手術をご存じでしょうか?高度な肥満患者さんに対
する外科的治療で、かつては肥満手術や減量手術などと呼ばれていましたが、現
在の正式名称は減量代謝改善手術といいます。
 この手術は日本ではまだまだなじみがない手術ですが、世界では実は上部消化
管の手術として最も多く、年間5万件以上行われている手術です。日本では2014
年から保険適応になり、以降増加傾向にあり、現在では年間約1000件程度行われ
ています。海外からのエビデンスでは、この手術によって、内科的減量と比べて
長期の減量効果が期待できるだけでなく、死亡数を減らし、予後を改善する事が
知られています。また、糖尿病を合併している症例では長期的な糖尿病の改善効
果も高く、RCTの結果では25%程度の患者さんで一切の薬物治療が不要になること
が報告されています。
 手術の対象は6か月以上の内科的治療によっても十分な効果が得られないBMI
(体重kg ÷ (身長m)2)が 35 以上で、糖尿病、高血圧症、脂質異常症又は閉塞性
睡眠時無呼吸症候群のうち 1つ以上を合併している患者さんです。手術は腹腔鏡
下に行い、胃の大彎側をスリーブ状に切除し、バナナ1本約100ml程度の容量に制
限して摂食量を減らすスリーブ状胃切除術と呼ばれる術式を行います。
 この治療で最も大事なポイントは患者教育です。手術はあくまでも減量しやす
くする手段の一つであると患者さんに認識してもらい、術前から食生活を含めた
生活環境の見直しによる減量を行っていただきます。そのためこの治療は複数の
診療科と専門職の関与が必須となります。当院でも2021年から糖尿病内科、精神
科、麻酔科、管理栄養士、看護師、薬剤師、理学療法士が参加する減量代謝改善
チームを立ち上げ、定期的にカンファレンスを行ってきました。そして当院では
これまで2名の患者さんにこの手術を受けていただきました。まだ短期間のデー
タですが、いずれも20%以上の体重減少効果が得られています。今後手術をうけ
る予定の患者さんが数名待機しておられます。
 高度肥満の原因は複数あり、大部分が自己制御できないものであるにも関わら
ず社会的に偏見をうけている、”obesity stigma”と呼ばれる問題もあります。
またこの手術自体が社会的に十分認知されていないために依然として多くの肥満
患者さんが苦しんでおられます。もしこの記事を読まれている方、お知り合いの
方、患者さんの中にBMI35以上の方で減量の意欲があるのにうまくいかないとい
う方がおられれば、是非一度当方までご連絡ください。

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                 国病で事務職として働く10
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                             事務部長 
                               田中 英之

 3月号では、大阪医療センター採用後1年が経過する事務職員を紹介しました。
 今月は半年余り前までは学生だった職員から「大阪医療センターで仕事を始め
半年経過しての感想」をお届けします。

  *** 大阪医療センターで仕事を始め半年経過しての感想 ***  

    池田美優(R5.4.1大阪医療センター採用/管理課給与係配属)    

 国立病院機構大阪医療センターに入職してから約半年が経過しました。管理課
給与係に配属され、給与という間違いが許されない業務に携わっています。(実
際に間違いを起こしていないかは別として…)
 お役に立つかわかりませんが、現在の私の仕事と休日を下記に記します。仕事
内容も働き方も配属された病院や係に大きく左右されるので、あくまで一例です。
就職活動にあたって、皆さまが働く姿をイメージする一助となれば幸いです。
 現在、大阪医療センターの給与係員は給与担当・人事担当で構成されています。
私は、給与担当の1人として ①給与 ②雇用保険 ③社会保険 の仕事をして
います。

①給与
 職員が働いた実績を給与システムに入力。主に非常勤職員・退職者・医療従
  事者の夜勤*を担当。
  (*大阪医療センターには宿日直と夜勤という夜間・休日に病院で働く制度
    があり、その回数や時間に応じて給与が追加で支払われる)
 大阪医療センター全職員の給与明細書を印刷し、部署ごとに仕分ける。
 通勤・住居・扶養手当の認定補助や支給など。

②雇用保険
 採用・退職された職員についてハローワークへ届ける。
 給付金の手続き(例:育児休業中の職員は病院から給与が支払われないため、
  ハローワークから「育児休業給付金」を受け取ることができる。そのための
  手続きなど)
 紙面で必要書類を用意し、直接ハローワーク大阪東へ持参。

③社会保険(年金のこと)
 採用・退職された職員について年金事務所へ届出を提出。
 社会保険料が正しく徴収されているか確認。
 紙面で年金事務所へ郵送。

④その他
 証明書の作成(例:就労証明書。保育園への申し込みに必要)
 ファイリング(紙で保存する資料が多いため)
 問い合わせ対応。

⑤いろいろ
 残業:月18時間程度(R5.4-R5.8の平均)。
  ※あくまで私個人の勤務実績なので、事務職全体とイコールではありません。
   一例です。
 Excel:毎日お世話になるソフトウェアです。
 休日:カレンダー通りに土日祝と休んでいます。平日の作り置きやクッキー
  を焼いて過ごしています。料理をすると家が美味しい香りになって幸せです。
  休暇の制度も沢山あります。半日休暇や時間休暇で少しずつ休まれる方、有
  給により5連休を作り旅行に行かれる方など様々な方がいます。自分に合っ
  た仕事とプライベートの両立が出来ると思います。
 ご飯:食堂やカフェ、お弁当販売があります。売店の塩から揚げがおいしい
  です。

   釘宮麻衣(R5.4.1 大阪医療センター採用/管理課庶務係配属)    

 今年4月に国立病院機構大阪医療センターに配属となり、約半年が経ちました。
学生時代とは生活が大きく変化し戸惑うこともありましたが、徐々に社会人生活
にも慣れてきたように感じます。
 私は「自分に何の仕事が合っているかわからない。どれも経験してみたい!」
という思いで、業界、職種を絞らず就職活動を行っていました。そこで目に留ま
ったのが、国立病院機構の事務系総合職です。国立病院の事務職の業務内容は多
種多様であり、ジョブローテーションをすることで、病院の運営面をトータルで
学ぶことができるという点は他の業界の事務職に比べて珍しく、とても魅力的だ
と思い、エントリーしました。
 4月から庶務係に配属となり、主に職員の方々の出張旅費の精算や、保険料等
の引き落としなど幅広い業務を行っています。事務職と聞くとデスクワーク、ル
ーティーンワークというイメージでしたが、実際は他職種の方々とコミュニケー
ションをとる場面が多いことに驚きました。直接、他職種の方々と関わることで、
職員の働きやすい環境を整えるという面から病院を支えていると、やりがいを感
じながら働けています。
 また、比較的自分のペースで仕事を進められるため、休みの計画が立てやすい
です。連休を取り実家に帰ったり、早めに帰宅して友達と会ったり、仕事と休日
のメリハリをつけることで、充実した生活を送れていると感じます。
 入職半年が経ち、就活生の皆さんに伝えたいことは、「社会人って思ったより
悪くない」ということです。一生懸命仕事をして、頑張った自分へのご褒美は格
別です。就職活動中は不安でいっぱいだと思いますが、様々な可能性を想像し、
前向きに頑張ってください。応援しています!

 お二人と一緒に仕事をして、もう半年が経過しました。まだまだ知らないこと
だらけで日々大変な思いで仕事に取り組んでいるのだと思いますが、そういう雰
囲気を見せることなく、落ち着いて仕事をしているように見て取れます。恐らく、
上司である係長がしっかりと育ててくれているからなんでしょう。日々勉強で立
派な国病人になっていくのが楽しみです。

✓国立病院機構では、毎年秋に国病職員を対象とした「国立病院総合医学会」を
開催しています。この医学会は、医学及び医療に関する研究等を発表する場とし
て開催され、発表する職員はもちろんのこと視聴する職員も参加し、例年約6,000
名もの職員が全国から集まる大きなイベントになっています。
 開催会場は6つのグループ(北海道・東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国
・四国、九州)が持ち回りとなり、昨年は熊本県で、今年は広島県で、来年は大
阪府での開催です。
 今年10月20日(金)~21日(土)に広島県で開催される「国立病院総合医学会」の
様子を来月(11月)に紹介する予定です。

 
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    看 護 の こ こ ろ (患者、家族の思いに寄り添う看護)    
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                                 西11階病棟副看護師長 
                                瀬平 享子

 夏が終わり秋の涼しさを感じる季節となり、皆様いかがお過ごしでしょうか。
時が過ぎるのは早いもので、看護師になって20年が経ち、様々な患者や家族と出
会い看護を行ってきました。患者や家族に病状説明する場面に同席する機会もあ
り、そこでは病気の診断や病状経過、治療や予後の話がされます。患者や家族は
ショックを受けたり、今後のことで不安を感じたり、決断しなければいけないこ
ともあります。今回、自宅退院希望があるものの気持ちが揺れ動く家族に出会い、
思いに寄り添う看護について考えました。
 A氏は当院に代謝性疾患で通院中、妻と2人暮らしでADLは歩行器で歩行されて
いました。今回、食欲と筋力低下、肺炎を認めたため入院となり、筋力低下して
いるため車いすでの来院でした。食事は経口から摂取していましたが、入院1週
間後に嘔吐されその後経口摂取が困難となり、鼻から栄養を入れるチューブが挿
入されました。肺炎の治療を行っていく中で状態が悪化し、医師より妻に病状説
明がされました。病状説明では、今日明日急変するリスクがあるほど状態が悪い
ことが話され、妻は涙を流していました。妻は自分のせいで患者の状態が悪化し
たという思いが強く、自分を責める発言がみられました。妻からは自宅に連れて
帰って2人で過ごす時間を持ちたいとの話でしたが、医師からは現時点で自宅に
帰るのは難しく療養型病院への転院の話がされました。妻の反応は医師からの話
に頷いているが、状態を十分に理解しているとは言い難かったです。そこで、妻
が面会に来ている時には、患者の状態を伝えて妻の理解の程度を確認、妻の思い
を傾聴、患者と妻が2人で過ごせる時間を大切にするような介入を行いました。
妻は現実を受け止めつつもよくなることへの希望を持っており、妻は面会時「お
父さん頑張ってるな、手を握って、目を開けて」と積極的に声をかけたり、手な
どをさすっていました
 その後、患者の状態は改善を認め、患者の思いを確認し、自宅退院の方針で進
めていくこととなりました。退院に向けて、訪問看護など在宅側の方々とカンフ
ァレンスを実施、患者や家族の状態や意向について確認し自宅退院の共通認識が
なされました。患者は在宅側のスタッフと久しぶりに会うと満面の笑みであり、
「家に帰ろうね。」と声をかけられると嬉しそうに頷いていたのが印象に残って
います。妻からは退院できることに喜ばれ、「本当にありがとうね。」という言
葉をいただき、自宅退院されました。
 今回の関わりを通して、家族の希望が患者の状態とかけ離れている場合であっ
ても家族の思いを知り寄り添いながら家族に合わせた関わりを行うこと、患者や
家族の思いを多職種や在宅側と共有し、考えていくことの大切さを学ぶ機会とな
りました。これからも患者や家族の一番近くにいる存在として、思いに寄り添い
看護を行っていきたいです。

ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html 

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             研 修 医 日 記        
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                              研修医2年目
                                                              西嶋 吉継
 
 研修医2年目の西嶋です。私たちの代の研修医日記も後半にさしかかりました。
10月はマッチング結果発表の時期であり、この文章を読んでいる方の中には当院
にマッチされた医学部6回生もいらっしゃると思います。来年からの研修に胸を
膨らませつつつ、漠然とした不安を感じていらっしゃるかもしれませんが、心配
はいりません。
 忘れもしない1年目の5月、私が怯えながら当直をしていると、それまで初療室
のベッドで落ち着いていた患者さんが突然痙攣し始めました。突然の出来事にパ
ニックになった私は「患者さん痙攣してます!」と叫びながら右往左往するほか
ありませんでした。その後、脳当直の先生が降りてきて、「どんな痙攣だったか
説明して」と聞かれました。そこで私は「こんな感じです!」と白目を剥いて手
足をガクガクさせる迫真の演技をかましたところ、「お前は素人か」と一蹴され
てしまいました。
 当時はなんとも情けない1年目でしたが、1年半たった今では、問診と身体診察
から必要な検査をオーダーし、その検査結果から最適なDispositionを決定する
ことが出来るようになりました。また、脳卒中、ADHF、敗血症といった緊急性の
高い病態にも速やかに対応出来るようになりました。これもすべて、当院の研修
プログラムが私の肌にあっていたお陰であると考えています。
 当院の研修の特色を2点述べるとすれば、自主性の高さと屋根瓦式の指導体制
です。あまり興味のない診療科では最低限のDutyをこなしつつ、空き時間は自習
中心で過ごすことができます。一方で自分の志望科では無限にオンコールに入る
こともできます。私も脳卒中内科をローテート中に、DSAでカテーテルを操作さ
せていただく機会がありました。自分の志望度や体調に合わせて、メリハリある
研修が出来ると言えるでしょう。
また、研修医の学びにおいて当直が占める割合は高いと考えます。先月までの研
修医日記に記載の通り、当院では1年目研修医と2年目研修医が1人ずつと、外来
当直医(レジデント)が1人の計3人で当直を回しています。入院・帰宅の最終的
な判断は外来当直医にコンサルトして決定しますが、検査オーダー等は基本的に
研修医に任せられており、実質研修医2人で診療する場面がほとんどです。従っ
て2年目研修医が勉強不足だとすべての診療がなあなあで終わってしまいます。
そのような追い詰められた環境が2年目に待っている訳ですから、1年目の後半あ
たりから必死になって勉強し始めます。留年がちらつくとすさまじいポテンシャ
ルを発揮する医学生にとって、当院はぴったりかと思います。
 以上、当院の研修の特徴について述べさせていただきました。幸運にも私がレ
ジデント以降も当院で働けたならば、脳当直として研修医の皆さんと関わる機会
があると思います。夜中でも遠慮なくたたき起こしていただければと思います。
一緒に学びある当直にしましょう。
                        
臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/kyujin/syokikensyu/nikki/index.html
 
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総編集長:院長 松村 泰志
編 集 長:副院長 三田英治 平尾素宏
     看護部長 西本京子 
編   集:池永祐子
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 秋の味覚、今年は軒並み値上げのようです。質はそのまま、量を少し減らして、
胃袋で秋を感じたいと思います。肌寒い日になりましたので、皆様、ご自愛くだ
さい。では、また11月のメルマガでお会いしたいと思います。

408-osaka@mail.hosp.go.jp


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