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メールマガジン「法円坂」No.281 (2024/9/18)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)




 今年の夏は、平均気温が平年と比べて1.76度高く、35度以上の猛暑日が40日、
という厳しい暑さの連続でした。9月に入り、秋の味覚が店頭に並び、少しずつ
秋の訪れを感じるようになってきました。では、今月のメルマガをお楽しみく
ださい。
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   メールマガジン「法円坂」No.281 (2024/9/18)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院  長  松  村 泰  志
 ・総合診療科科長就任のご挨拶
 ・病理医徒然日記(臨床検査科医長就任のご挨拶)
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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                  院長  松村 泰志     心の鏡
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 9月の半ばとなりましたが日中は暑い日が続いています。それでも散歩をして
いると、虫達の鳴き声が聞こえてきて、秋の訪れを感じさせてくれます。虫達は、
少々暑くても、その時期がくれば鳴いてくれるようです。
 以前に松下幸之助さんの「道をひらく」をご紹介しました。私は、現状の病院
の厳しい経営状態を目のあたりにし、また、病院の内外のあちこちから様々な不
協和音が聞こえてきて、どうしたものかと思い悩むことがあります。そうした折、
ふとこの本にあった一遍を思い出していました。「心の鏡」とのタイトルで記載
された一遍です。
 「自分の身なりを正すためには、人はまず鏡の前に立つ。鏡は正直である。あ
りのままの姿を、ありのままそこに映し出す。自分のネクタイは曲がっていない
と、がんこに言い張る人でも、鏡の前に立てば、その曲直は一目瞭然である。だ
から人は、その過ちをみとめ、これを直す。
 身なりは鏡で正せるとしても、心のゆがみまでも映し出しはしない。だから、
ひとはとかく、自分の考えやふるまいの誤りが自覚しにくい。だから、人はとか
く、自分の考えやふるまいの誤りが自覚しにくい。心の鏡がないのだから、ムリ
もないと言えばそれまでだが、けれど求める心、謙虚な心さえあれば、心の鏡は
随所にある。
 自分の周囲にある物、いる人、これすべて、わが心の反映である。わが心の鏡
である。すべての物がわが心を映し、すべての人が、わが心につながっているの
である。
 古の賢者は「まず自分の目から梁を取りのけよ」と教えた。もうすこし、周囲
をよく見たい。もうすこし、周囲の人の声に耳を傾けたい。この謙虚な心、素直
な心があれば、人も物もみなわが心の鏡として、自分の考え、自分のふるまいの
正邪が、そこにありのままに映し出されてくるであろう。」
 なかなか奥深い洞察と思います。そうは言っても突然の事故に巻き込まれる人、
思いもよらなかった病気になって苦しむ人もいます。その瞬間のその人の状態が、
その人の心を反映したものとは言えないと思います。しかし、パラリンピックで
活躍している人を見ていますと、こうした不幸な出来事があったとしても、その
後のその人の状況は、その人の心を反映したものであるように思います。多様な
考えを持った人が交わる社会で、瞬間的に不協和音が起こるのは自然なことです
が、その後、その人が身を置く状況は、その人の心を映し出したものになってい
ると思います。パーフォーマンスの悪い人にどうしたのかと尋ねると、周囲に自
分の足を引っ張る人がいるとか、何かの状況がけしからんなどと言います。そう
言いながらも、どこかで自分に原因があることが分かっており、自分のパーフォ
ーマンスの悪さを情けないと思っているものです。この状況から抜け出すために
は、心の鏡を見て、心のねじれている部分に気付き、そこを正して、自分で「こ
れで良し」と確認するしかないと思います。自分の周囲の人、物が自分の心の鏡
であるとの認識は、ものごとを改善させるヒントになります。
 当院の経営状態が悪いと様々な経営指標が示しています。それを日本の医療政
策が悪いからだなどと大言壮語を言う前に、自分の病院の姿を見つめなおし、ね
じれている部分に気付き、それを正していくことが先決だと教えてくれているよ
うに思います。救急隊からの搬送依頼が減っているのは、要請があった時に直ぐ
に応需の返事をしなかったり、理解できない理由で断ったりするからだと指摘さ
れました。開業医の先生からの紹介数が思うように伸びないのは、せっかく紹介
があっても、すぐに来てくださいと返事をせずに待たせてしまっているケースが
あるからだと聞きました。こんなことをしていて病院が繁栄するはずはありませ
ん。当院の医師たちに、慣れない患者は診たくないとか、突発的な仕事は避けた
いといった保身的な心理が働いていることが背景にあり、外からの連絡を受ける
職員が、そうした医師に気遣っている構図があるようです。保身的になるのは誰
しもあることです。しかし、急性期を担う病院で働く以上、不慣れな患者や突発
的な患者にも対応しなければならないとの覚悟を持つ必要があります。一方、病
院幹部は、過度に医師や職員に負担を強いることがないよう状況をモニターし、
適切にコントロールしていかなければなりません。こうして病院内のねじれ部分
を正すことができれば、経営状態も上向くと思います。
 人にしても組織にしても、自分から見える物事、人の様子、自分達に関する集
計データ等を、自分を映し出す鏡と認識し、見えない自身の心理のゆがみに気付
き、これを正すよう努めることは、改善のための近道であるはずです。松下幸之
助さんは、こうして会社を発展させていったのだと思います。また、松下幸之助
さんから、重要なことを教えていただいたと思います。

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                総合診療科科長就任のご挨拶         
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                                               総合診療科科長
                                宮本 智

 2024年4月1日より総合診療科科長に就任しました宮本 智です。
 私は1992年に兵庫医科大学を卒業し、兵庫医科大学第三内科に入局しました。
 大学病院で研修を終えた後に、国立泉北病院・国立療養所千石荘病院に勤め、
国立千石荘病院と国立大阪病院の統合に際し、2003年に国立大阪病院に異動して
参りました。
 それまでは消化器内科を中心として働いていましたが、大学の講座にて呼吸器
内科にも携わっていたこともあり、国立大阪病院では呼吸器内科医として働くこ
ととなりました。
 2023年からは現在の総合診療科で、消化器内科や呼吸器内科とはまた違った診
療を日々経験させて頂いております。
 当院に異動してきてから、すでに20年以上経っていることに驚いていますが、
当院で知り合った縁で結婚し、生まれた子供も色々とお世話になり、大阪医療セ
ンターが私の人生の中心になっています。
 話は変わりますが、当院の総合診療科は現在 総合診療・プライマリケアの部
分とER(ER型救急医療)の部分を担っています。
 残念ながら、総合内科ではなく人員の問題もあり、全ての疾患に対応して診断・
治療をすることはできませんが、当院の多彩な専門医への橋渡しができる様に頑
張っていきたいと思っております。
 当院で対応できない疾患も、少ないながらもあるためご迷惑をお掛けすること
もあるかとは思いますが、地域の先生方の期待に応えることができる様に日々努
力していきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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        病理医徒然日記(臨床検査科医長就任のご挨拶)         
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                             臨床検査科医長
                                                            廣瀬 由美子

 本年度4月に臨床検査科医長を拝命しました、廣瀬由美子と申します。このメ
ールマガジンについて平尾副院長からご連絡いただいた際、「まじめな着任のご
挨拶もいいけれど、何か面白い先生独自の視点のものを書いていただけたらあり
がたいです。趣味とかなんでもいいですよ。」とのお言葉をいただきました。そ
うおっしゃられましても、信州の大自然を満喫し、弓道にも手を出していた学生
時代ならまだしも、現在は日々仕事と子育てに追われ、ご紹介できる趣味などあ
りません。むしろ病理医の仕事自体、臨床科の先生方や他部署の方々にとっては
あまりなじみがないのではないかと思い立ち、今回は平凡な病理医の日常をご紹
介したいと思います。
 当院の臨床検査科病理部門の大まかなスケジュールは、午前中は「切り出し」、
午後は「病理診断」となっております。そこに、不定期に病理解剖業務が加わり
ます。
 「切り出し」とは、手術標本などの比較的大きい検体を、2×3×0.5cm大のブ
ロックに入るように切り分ける作業です。診断のためにどの部分を細かく観察す
る必要があるかを肉眼的に判断し、適切な部分を切り出すのも、病理医の大切な
業務です。その工程の中で、「わかりやすいシェーマを書いておいてくれたらい
いのに」「しっかり依頼内容と必要な情報を依頼文に記載しておいてくれたらい
いのに」「大事なところに変な方向に割を入れないでほしいのに」などと感じる
こともあります。しかし、初期研修期間に臨床科での研修を経験させていただい
た私たち病理医は身をもって知っています。臨床の先生方はとてもお忙しい。ま
ず優先されるべきは患者さんへの対応であると。それに病理医が求めていること
を完全にわかってもらうことも難しい。でもどうしても直接聞かないとわからな
いことがある場合には、お伺いせざるを得ない。ということで、恐る恐る依頼医
のPHSを鳴らします。その際に快く応じていただけると非常にありがたく、「あ
の先生感じよかったよ」と病理部門のなかでひっそりと情報共有されます(実益
はありません)。切り出し後のスライドガラス標本作製までの工程は、臨床検査
技師が担ってくれています。必要に応じて脱脂、脱灰などを追加してパラフィン
ブロックを作製し、ブロックを3~4μmの厚さに切る薄切、染色などの工程を経
て、HE標本が出来上がります。臨床検査技師による切り出し補助や標本作製の匠
の技により、病理部門は支えられています。
 次に、顕微鏡をのぞいてスライドガラス標本を観察し、病理所見や診断名を記
載する「病理診断」です。学生実習で見たあの「ピンクと紫の世界」のなか、ま
ず低倍率で正常構造から逸脱する部分をおおまかに認識し、その原因について、
顕微鏡の倍率を上げて詳しく探ってゆくのがセオリーです。腫瘍であれば、組織
型や周囲組織の破壊の程度、広がり、断端などを評価します。病理診断時に病理
医が迷うポイントと、臨床的に挙げられる鑑別疾患は往々にして異なります。ま
た顕微鏡像から得られる情報は限られているため、とくに臨床的に想定されてい
た疾患と乖離した組織像である場合、症例の背景から採取時の状況までをカルテ
でチェックし、総合的に診断するよう心がけています。ただし、すべての症例に
ついてカルテの隅々までチェックすることは不可能なので、「既往歴や治療歴を
ちゃんと依頼書に書いておいてくれたらいいのに」「臨床所見や正確な採取場所
をわかるように書いておいてくれたらいいのに」などと思うこともあります。し
かし、初期研修期間に臨床科での研修を経験させていただいた私たち病理医は身
をもって知っています(以下略)。診断過程で必要な情報がある場合や、臨床科
で想定されていない疾患であるなど、直接担当の先生にお伝えしたほうがいいと
思うことがある場合には、またお電話が必要になります。しかし、いわゆる陽キ
ャが少ない病理医にとって、この電話自体、かなりハードルが高いのです。恐る
恐るPHSを鳴らし・・・以後は切り出し時と同様です。
 このように書くと代わり映えのしない毎日のようですが、当院では提出される
検体は多岐にわたり、多臓器に関する知識を細かく刷新していく必要があります。
またいつまでたってもズバッと診断できないお悩み症例も尽きません。日々、医
療者としての責任感と真摯な気持ちをもって診断に邁進し、また必要なコミュニ
ケーションをとるようにも心がけてゆく所存ですので、今後ともどうぞよろしく
お願い申し上げます。

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                   看護のこころ
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                                  SCU病棟 副看護師長
                                大福 美香

 暦の上では秋となりましたが、とても厳しい残暑が続いております。皆様変わ
りなくお過ごしでしょうか。私の2人の息子は野球に励んでおり、私は毎週末に
はグラウンドに足を運んでいます。昼間はとても暑いですが、朝晩は涼しい風を
感じることもあり、夏の酷暑から少しずつではありますが過ごしやすい季節にな
っていることを肌で感じるようになりました。
 私は昨年、10年以上勤務した手術室から異動となり、SCU病棟で副看護師長と
して日々奮闘しています。同僚にも恵まれ、手術室とはまた違う看護を行うこと
の大切さ、楽しさを感じています。
 病棟での看護で「うれしいな。」と感じたエピソードを紹介したいと思います。
私が病棟での勤務に少し慣れてきた頃、小脳梗塞という疾患で緊急入院されたA
氏を受け持ちました。脳梗塞は梗塞の部位によって現れる症状が異なります。A
氏は幸いにも梗塞の範囲が狭く、麻痺や認知機能の障害は軽症でした。しかし、
小脳梗塞特有の歩行時のふらつきや吐き気などの症状がありました。また小脳に
通じる血管が細くなっていることも検査で分かっていました。入院1週間経過後
ふらつきなどの症状が出現したり、消失したりを繰り返す状態でした。入院当初
は自宅に帰ることを考えられておられたA氏は「この状態では家には帰れない」
とあきらめかけておられました。そんなある日、検査のための点滴を行った際に
私はA氏の症状が改善していることに気が付きました。A氏は小脳に通ずる血管が
細くなっているために、体の中の水分が不足すると小脳に流れる血流が悪くなり
ふらつきなどの症状が出やすいのではないかと考えました。私は、そのことにつ
いて他の看護師やA氏とも共有しました。そして、1日1ℓ以上の水分摂取を心がけ
るという目標をA氏とともに立てました。その後、トイレに行く際やリハビリの
後などに、意図的に水分摂取をされているA氏の姿が見られました。看護師間で
は、看護師に対して気を使われるA氏が遠慮なく水分摂取できるように、常にコ
ップに水やお茶が入っている状態になるように援助の統一を図りました。
 その後リハビリも順調に進み、A氏は無事自宅に退院することができました。
また、A氏は退院時に病棟のスタッフ一人一人にも感謝のメッセージを書かれた
手紙をくださいました。私は、スタッフととてもうれしい気持ちを共有できまし
た。
 この事例から、根拠に基づいた看護を行うことの大切さ、患者本人とも目標を
共有することの大切さを改めて感じました。これからも、病棟のスタッフはもち
ろん、患者や家族とともに考え、患者にとってよりよい生活を目標に看護を行え
るようにしていきたいと思います。

ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html 

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             研 修 医 日 記        
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                              研修医2年目
                                                             笹倉 桃子

研修医2年目の笹倉です。
この研修医日記を読んでくださってる方の中には大阪医療センターをマッチング
先に考えてくださってる医学生の方が多いのではないでしょうか。普段の日誌で
は当直やローテのことについて書いている日記が多いので、今回はイメージしや
すいように普段の研修生活がどのような感じかお伝えしようかと思います。

私にとってけっこう大きいのは研修医ルームの存在です。病院によっては大きな
医局の一角が研修医ブースだったりするところも多いですが、うちの病院は研修
医ルームが病棟や上の先生の医局から離れたところにあり、研修医だけの空間が
あります。病棟業務で疲れたり、長いオペが終わって帰ったときに誰かがいて、
ほっとひと息つくことができます。1人ひとつデスクがありけっこうみんな自分
色のデスクなので個性が出るな〜と思います。電子レンジや電気ポットもあるの
で、鍋とかしない限り大抵のものは食べられます。

仕事は科によりますが8時から9時の間に始まり、だいたい18時すぎには終わって
いることが多いです。真面目な人や内科3科目同時ローテの人は20時ぐらいまで
残っていたりもしますが、基本的には残業1時間ぐらいです。近くに住んでいる
人が多いですし、美味しいご飯やさんが沢山あるので、「今日ちょっとあのカレ
ー屋さん行こうよ」とか「今から集まっていつもの居酒屋さん行こうよ」と仕事
後も同期や後輩とご飯に行ったりできます。

また、当直明けは8時半(遅くても10時ぐらい)に帰れるのもいいところだと思
います。当直は1、2時間ぐらいしか寝れないことも多いですが、朝まで頑張っ
たら帰って寝れるので、研修医になるまで片手で数えるぐらいしか夜更かしをし
たことがなかった私でもなんとか頑張れています。2年目になると月4、5回当直
があるので、なかなかハードですが、当直明けはちゃんと帰れるので、体力さえ
あれば夕方ぐらいから飛行機に乗って旅行にも行けます。実際木曜日当直で、金
曜日明け、そこから沖縄旅行に行ったこともあります。笑

とまあカジュアルに書いてきましたが、当院の研修では、当直は研修医主体で動
くので、勉強した分が診療にすぐ活かせてやりがいがあります。マッチングで気
になる一つである手技に関しても、やる気を見せていれば中心静脈カテーテルや
Aラインなど沢山させてもらえます。ローテによっては時間があって自分がした
い勉強を十分に進めることもできます。総合的に見て、メリハリがあってすごく
バランスのいい研修をさせてもらっているなと思います。
医学生のみなさん、ぜひ見学に来てみてください、そしてマッチング先に選んで
いただければと思います。
                     
臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/kyujin/syokikensyu/nikki/index.html
 
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総編集長:院長 松村 泰志
編 集 長:副院長 平尾 素宏 渋谷 博美
     看護部長 水戸 祥江
編   集:池永 祐子
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 9月は防災月間です。地震や台風、豪雨など、いつ起こるかわからない自然災
害に備え、防災対策をしておきましょう。

408-osaka@mail.hosp.go.jp


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