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メールマガジン「法円坂」No.284 (2024/12/19)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)




 2024年も残すところあと少しとなりました。年末は、一年の成果や反省を整理
するとともに、来年に向けて新たな目標を見つける時期でもあります。皆さま、
日々お忙しくされていることと思いますが、ちょっと一息、今年最後のメルマガ
をお楽しみください。
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   メールマガジン「法円坂」No.284 (2024/12/19)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院  長  松  村 泰  志
 ・日々の診療で思うこと
 ・病院の薬剤部から保険薬局へと繋ぐタスキ
   ~薬剤管理サマリーによる薬薬連携~ 
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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               院長  松村 泰志     今年の振り返り
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 今年も年の瀬が迫り、さすがに寒くなって来ました。近くの神社の銀杏の木も、
いっせいに黄色の葉を落とし、境内が黄色の絨毯が敷かれたようになっていまし
た。
 今年を振り返ると、元日に能登半島地震があり、2日には羽田空港の飛行機の
衝突事故と、ものものしい雰囲気の中で年が明けました。大阪医療センターでも、
医療班、DMATを能登地区に送り込み、予定していた新年会をキャンセルする等、
緊張感のある1月を過ごしました。
 年度末には、副院長、看護部長を始め、重要な役割を担って来られた病院幹部
の方々が退職され、病院全体でも大きく人事が動きました。本部でも理事長の楠
岡先生が退任され、新たに新木先生が理事長になられました。今年の新年度は、
これまでになく改まった気持ちでスタートを切りました。
 私にとって大きく変わったのは、5月に国立病院機構の近畿グループ担当理事
となったことでした。それまでは大阪医療センターのことだけを考えていれば良
かったのが、一気に近畿内にある20の病院の状況を把握しなければならなくなり
ました。また、毎月本部で開催される理事会に出席する等、かなり忙しくなりま
した。しかし、その立場のおかげで国立病院機構全体の状況を知ることとなり、
更には日本病院会の理事にもならせていただき、日本の医療全体の状況、課題、
課題に対する議論の様子を知る機会を頂きました。医療に関わる多くの情報が入
ってきますので、日本の医療についての視野が一気に広がりました。街中をうろ
うろして街の様子を把握していたのが、小高い丘に登って街全体を見渡すような
感覚です。自分に何ができる分けではないのですが、それまで、それなりに医療
を見ていたつもりでいましたが、その範囲が小さかったことに気付かされました。
 今年はコロナ感染症が他の疾患と同等の扱いになり一息ついたのですが、病院
経営状況が、かつてないほど悪くなり、経営責任者としては気をもむ年でした。
年度始めは患者数がコロナ禍前に戻っていないためと考えていましたが、7月以
後は患者数が確保できて過去最高の収益、粗利を出したにもかかわらず、費用が
それを上回り、収支は赤字となりました。どうも尋常でないことが起こっている
ようです。国立病院機構全体でも、日本病院会の全国の病院の調査でも同様の状
況が報告されており、当院固有の問題では無さそうです。そうは言っても開き直
っている場合ではありませんから、何とか乗り切ろうと、病院スタッフが皆で知
恵を出し合って、取り組めるところから取り組み初めています。二次救急体制を
強化して救急患者の応需を増やし、開業医の先生から紹介のFAXを受け取ってか
ら予約日時を伝えるまでに時間がかかっていたところを様々な工夫をして時間短
縮を図る等、急性期病院としてのサービスレベルの向上に努めました。こうした
危機感があったからこそ、できたように思います。
 今年は、国立病院総合医学会を主催するとの大仕事がありましたが、スタッフ
が完璧な準備をしてくれて、成功裏に終えることができました。特にN1グランプ
リを企画し、大好評を得て終えることができたことは、生涯残る思い出になると
思います。
 11月には娘の結婚式を無事終えました。結納式や写真の前撮り等、結婚式に向
けての準備のイベントがありましたが、先方のご家族も含め、家族がそろって楽
しいひと時を過ごすことができ、皆さんから祝福の言葉を頂きました。
 今年は、朝の通勤時間に「ブッダの教え一日一話」(アルボムッレ・スマナサ
ーラ著)の本を読んでいました。365のブッダにまつわるエッセイの構成で、1日
1話ずつ読み進めるようになっています。今日のエッセイでは、「チャレンジを
する気持ちで一日を過ごせば、人生は楽しい」とありました。振り返れば、今年
1年いろいろなことがありました。能登半島の地震、病院経営の悪化と一見悪い
こともありましたが、病院職員が、何とかしようと、皆で協力しながら頑張って
くれる姿を見ることができました。振り返れば、これらのことも良いことであっ
たと思います。何よりも、自分自身、家族、身近な人達が、大きく健康を損なう
ことなく元気で過ごせたことは、ありがたいことと思います。今年もあと少しと
なりましたが、年内にやろうと決めていた仕事をやり終え、お世話になった人達
に感謝して、今年を締めたいと思います。

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                  日々の診療で思うこと         
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                                               精神科 科長
                               田宮 裕子 

 当科は摂食障害専門外来を開設しています。地域の先生方からご紹介していた
だき、最近では発症間もない若い患者さんのご紹介が増えております。早期に発
見し早期に介入することで身体的にも社会機能的にも機能低下をきたすことなく、
早期に回復につなげることができております。
 摂食障害とは、心の病が食事の問題として現れてくる疾患です。単なるダイエ
ットと違い体重や食事のこだわりが強くなり、一日中食事や体重のことばかり考
えてしまうようになり、日常生活が破綻していきます。いろいろな要因が組み合
わさって発症する疾患ですが、もともと摂食障害に陥りやすい体質であり、そこ
にいじめや挫折などの心理的に大きなストレスが加わることで発症してくること
も多いです。その根底には、自分は何をやっても人より劣っているといった自己
評価の低さやうまく人と付き合えないなどの生きにくさが潜んでいます。治療は、
栄養療法や認知行動療法などの心理的治療が主体となりますが、身体的に合併症
がある場合は身体治療も必要となります。
 体重が戻れば治る病気ではなく、体重が戻ったとしても、自己評価の低さや自
分に自信が持てないといった状態のままであれば、すぐにまた元の状態に戻って
しまいます。患者さんにとってこの病気は、生活上のストレスによって心が傷つ
くのを保護する役割を担っていますので、なかなか病気を手放すことができませ
ん。回復するには、外部からのストレスを上手に対処できるようになることが重
要です。ストレスの受け取り方の癖を自覚し、その対処方法を学習し、社会で実
践するといったプロセスが必要となります。診察室では、日常生活でうまくいか
なかったことや人付き合いでの嫌な経験など日常的に起こる出来事を共有しなが
ら、感じ方の癖を探り、自分にとってもっと楽になる考え方を一緒に考えていき
ます。失敗と成功を繰り返しながら少しずつ学校や会社に適応していき、社会の
中で居場所ができ、傷ついた心が癒され、自分に自信が持てるようになっていき
ます。そうすることで社会の一員としての責任感が芽生え、もう病気は必要ない
かなって思える時期が来ます。
 根気と忍耐が求められる治療ですが、患者さんのこころが成長し逞しくなって
いく様子を傍らでみることができるのは、精神科医の醍醐味だと日々感じながら
診療しています。

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           病院の薬剤部から保険薬局へと繋ぐタスキ
                   ~薬剤管理サマリーによる薬薬連携~        
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                                薬剤部 
                                                            海家 亜希子

 大阪医療センター薬剤部では、2022年4月より退院時薬剤情報連携加算の算定
を開始しています。退院時薬剤情報連携加算とは、病院薬剤師が薬剤情報を共有
するための薬剤管理サマリーを作成し、入院中に変更のあったお薬などの情報を
かかりつけの保険薬局へ情報提供する作業につく診療報酬を指します。
 当院の薬剤管理サマリーには、患者さんの身体情報、薬剤性アレルギー・副作
用の情報、入院中最新の検査値に加え、入院時の持参薬、退院時の処方薬、入院
中のお薬の管理者、お薬の投与経路・調剤方法、退院後のお薬の管理者の情報を
記載しています。その他特記事項として、入院中に追加・削除・用量変更等があ
ったお薬については、理由なども含めて詳しく記載を行っています。出来上がっ
たサマリーについては、薬剤管理サマリー専用の封筒に入れて、患者さんから保
険薬局へ手渡してもらう仕組みとしています。その封筒の中には薬剤サマリーの
みではなく、保険薬局からの返書シートを同封しており、算定を開始してから約
2年半の間に42.3%もの返書を受け取りました。また、門前以外の保険薬局からは
特に多くの返書を受け取っており、薬剤管理サマリー交付により、広域での薬薬
連携が実現できていると考えています。
 返書内容としては、検査値や特記事項への記載が特に有用であり、保険薬局で
の服薬指導に役立ったとの回答が多くを占めています。「入院していることを知
らなかったので良かった」「かかりつけ医から以前と同じ内容で処方が出ていた
ため疑義照会に繋がった」「抗がん剤のレジメンが良く分かった」などの回答も
あり、薬剤管理サマリーによる情報提供は、保険薬局にとって患者情報を得る重
要な手段(タスキ)となっていると考えます。
 保険薬局から医師への疑義照会については、プロトコールを組み簡略化されて
きているとは言えまだまだハードルが高いようで、返書の中には医師に対する質
問事項が記載されているものも散見されますので、病院薬剤師が代理で確認を行
い、保険薬局へ返答しタスキを繋いでいます。
 現在の算定要件では、入院時に服用していたお薬(内服薬)の内容に変更があ
った場合のみ加算対象となっており、注射薬、外用薬については加算対象外とな
っています。算定を取ることが全てではないですが、薬剤管理サマリーによる薬
薬連携がより活発になるためにも、今後対象薬が拡大されていくことを望んでい
ます。

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                   看護のこころ
                       ~看護師として大切なこと~     
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                             東7階病棟 副看護師長
                                杉本 直子

 師走に入り寒さも本格的になってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょ
うか。体調を崩しやすい季節でもありますので、お体には気をつけてお過ごし下
さい。
 私は看護師12年目で今年度から副看護師長として循環器内科・心臓血管外科病
棟に勤務しております。11年間消化器外科病棟で勤務をしていた私にとっては、
看護師12年目でも慣れないことばかりであっという間に時間がたっています。時
には心が折れそうな時もありましたが、そんな時に患者さんから元気付けられた
一言がありました。その場面について、お話しようと思います。
 私は11年間の消化器外科病棟で勤務を行い、がん看護に自信をもっていました。
しかし、循環器という新しい領域に足を踏み込んだ当初は、不安な気持ちでいっ
ぱいでした。ある日、受け持ちだったA氏に「あなたは副師長さんなんだね、ベ
テランさんだから安心だね。」と言われました。しかし私はまだ循環器看護の知
識に自信がなく「4月に異動してきたので、まだ至らない点もたくさんあると思
いますが頑張るのでよろしくお願いします。何か気になることがあれば教えて下
さい。」とお伝えしました。するとA氏は、「大丈夫だよ。看護師さんは看護を
するんだよね、それはどこに行っても変わらないことなんだから自信をもってい
いんだよ。お医者さんは治療をしてくれる、でも看護師さんは私たちの近くで支
えてくれるのが一番嬉しいんだから。」と話してくれました。その言葉は、看護
とは何かについて振り返る機会となりました。循環器の知識ばかりに気を取られ
ていましたが、患者さんのベッドサイドに行き、お話をしながら今患者さんが抱
えている問題やニーズはどのようなことなのか、必要な看護は何であるかについ
て考えることの大切さを再認識しました。もちろん、知識や技術の習得も大切で
すが、患者さんに寄り添う心を持つことが最も大切であることに気づくことがで
きました。
 まだまだ学ぶことは多く、今回のように患者さんから学ばせて頂くことも多く
あります。これからも副看護師長として、看護師のモデルとなれるよう看護実践
とスタッフ教育に精進して参りたいと思います。

ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html 

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             研 修 医 日 記        
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                               研修医2年目
                                                              白羽 亮

二年目研修医の羽白です。現在は選択期間で志望科の循環器内科をローテーショ
ンしております。当院循環器内科について申しますと、虚血・心不全・不整脈領
域にエキスパートがおられ、TAVI, Mitra clipといった構造的心疾患に対するカ
テーテル治療も取り組みつつある場であり初期・後期研修の場として良い環境と
考えております。指導医の先生方に教わりながらではありますが、心不全患者さ
んの治療やカテーテルの操作を一生懸命頑張っております。確かな技術と知識を
持った人材になれるよう研鑽を積んでいく所存です。
研修医の大部分を占める業務として当直があります。タフガイではない自分にと
って、1か月あたり1年目3回、2年目5回程度といった当直の頻度は本当に適度だ
と感じております。またこの冬からは、当直で研修医がみた症例について救命科
の先生と振り返る場が新しくでき、専門家の存在のもと臨床で出会う困った症例
について相談・意見交換できるようになりました。
病院は昭和の風かおる建物ではありますが、日々実践される医療水準・スタッフ
は一流のものであると思います。ぜひ皆さん見学にいらしてください。一緒に働
けることを楽しみにしております。
                    
臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/kyujin/syokikensyu/nikki/index.html
 
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総編集長:院長 松村 泰志
編 集 長:副院長 平尾 素宏 渋谷 博美
     看護部長 水戸 祥江
編   集:池永 祐子
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 2025年の干支は、乙巳(きのとみ)で、これまでの努力や準備が実を結び始め、
新しいことが始まる年になると言われています。来年が皆さまにとって、輝かし
い一年となりますよう願っております。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

408-osaka@mail.hosp.go.jp


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