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メールマガジン「法円坂」No.285 (2025/01/22)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)




 明けましておめでとうございます。
1月に入り、寒さも一段と厳しくなってまいりましたが、いかがお過ごしでしょ
うか?今年は巳年、「成長と発展」の年です。何か目標をもって進んでいきたい
と思います。では1月のメルマガをお楽しみください。
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   メールマガジン「法円坂」No.285 (2025/1/22)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院  長  松  村 泰  志
 ・退 職 の ご 挨 拶
 ・ICLS 
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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                 院長  松村 泰志     今年の抱負
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 明けましておめでとうございます。新年となり、気持ちを新たにして、今年も
がんばりたいと思います。
 昨年は、コロナ禍を脱して一息つく間もなく、物価高の波にのまれて、病院経
営が厳しい状態となりました。私は、日本病院会の理事も務めておりますが、1
月10日の理事会で全国の病院の経営状況についての報告があり、全国の病院がか
つてなかったような経営難に陥っている状況が報告されました。今年は、医療界
では、激変の年になるかもしれません。通常の業種であれば、仕入れ額、人件費
が上がれば、商品やサービス等の価格に転嫁してバランスを取るのですが、医療
界は、公定価格で運用されており、しかも、実施するサービスに細かな規定が定
められており、それを満たさなければコストが請求できません。この公定価格が
一般的な医療機関でのコストを積み上げて定められているのであれば、特に問題
は起こらないはずですが、現状はそうではなく、支払い側の予定する総額が決ま
っており、それを分配する形で各公定価格が定められています。しかも、かなり
恣意的に定められていますので、特定の医療機関にしわ寄せがくる状況が起こっ
ています。
 病院運営においてコストが上がる理由は多くあります。働き方改革を推進した
ことで、人手がより多く必要になりました。リハビリでは、1人の理学療法士が1
日で実施できる件数に制限が設けられています。誰かが産休、育休を取った場合、
子供の急病で休んだ場合に、他の職員がカバーするためには、やや余裕のある人
数を雇用しておく必要があります。看護師の場合も、患者数に対して何人の看護
師を配置する必要があるかが定められていますので、同様の問題があります。今
の若い世代は夫婦共に働く時代ですから、働き方改革は必要な施策であり、これ
を推し進めていくことは正しいことだと思います。しかし、これを実際に適用さ
せるためには人を少し増やさなければならないという当たり前のことを、行政は
見て見ぬふりをしています。また、世の中が物価高になってきているのですから、
各職員のベースアップは必要です。この掛け算で人件費は上がります。医療材料
は海外製品が多く、円安の影響を大きく受けます。卸売り業界は利益を確保する
ために価格転嫁をします。償還材料は公定価格が上限になりますが、それでもそ
のぎりぎりのレベルにまで上げてきますので、公定価格と購入価格の差が小さく
なっています。手袋、ガーゼ、覆布といった非償還材料は、価格増はそのままコ
スト負担となります。より良い医療を実施しようとすると、相応の高額な機器が
必要となります。例えば、ロボット手術により手術の精度が上がりますが、ロボ
ットは高額である上に、消耗材料の価格も高額です。しかし、そのコスト増分は
診療報酬には上乗せされていません。その他にも多くの高額機器が導入されてい
ますが、多くが海外製品であり、耐用年数を過ぎて買い替えをすると、かつての
値段では買えません。それ以外に日常の運営をするために、建物の清掃、ごみの
処分、その他多くの作業が必要ですが、全て外部業者の人手によるもので、値上
げされています。物価が2018年比で7.5%上昇しており、医療の場合、必要とす
る人手の増や円安の影響も大きく受けていますから、実際には、これ以上のコス
トが上がっています。このコスト増に病院の運営に関わる診療報酬点数の増加が
追い付いていないと思われます。コロナ禍の間に、こうした問題は少しずつ進行
していたのですが、入院患者数の変動、様々な補償によりマスクされていました。
これが昨年になって顕在化したものと思われます。
 日本病院会の理事長の相澤先生によると、この苦しい状況を厚労省、財務省に
訴えても、ちゃんとしたデータを持ってきなさいと相手にしてくれないそうです。
では、ちゃんとしたデータを持ってお願いすれば何とかしてくれるのでしょうか。
おそらく、逃げ口上なのだと思います。国民の皆さんに理解してもらって、国民
から声を上げてもらわないと、国は動いてくれないとのことです。ですので、こ
のメールマガジンにも、こうした記事を書きました。
 今年の抱負ですが、今年は経営改善に正面から取り組まなければならないと考
えています。医療機関の場合、できるだけ多くの患者さんを診療し、無駄なコス
トを抑えることしかありません。救急患者さんの応需率を上げられるように体制
を強化し、患者さんを多く紹介してもらえるように、技術レベルを落とさずサー
ビスレベルを更に上げるようにしたいと思います。コスト減については、共同購
入などの仕組みを導入して、できるだけ低価格で購入すること、材料のロスを少
なくすること、請求漏れがないようにすること等、細部に目を届かせるようにし
たいと思います。上記では、診療報酬点数が妥当ではないと申し上げましたが、
原価を積み上げた場合の額を自分達で把握せずに憶測で物を言っても説得力に欠
けます。経営分析についても、トータルの財務指標だけでなく、個別の医療につ
いてコストが出せるようにしていきたいと考えています。また、今年は、病院情
報システムの更新に向けて仕様をまとめなければなりません。できるだけコスト
を抑えながら、効果的に病院業務を支援するシステムを導入したいと思います。
また、病院建て替えについては、北側の土地の土地活用ができるかの調査を進め
ながら、病院設計を進めて、計画を煮詰めたいと思います。
 今年に入ってから、インフルエンザの蔓延で一気に患者数が増えています。大
阪中で搬送困難の状態が起こっていると聞いています。当院は運用病床を550床
としていますが、先週は552人の患者が入院していました。2床部屋を普段は個室
として利用していたところを2床として運用しているとのことです。文字通り空
きベッドがない状態です。当院の職員は本当に一生懸命働いてくれています。
 医療は、何が起こるか先が読めません。その時々でやるべきことを冷静に判断
し、そこに集中したいと思います。いくら厳しい状況でも悲壮にはならず、凛と
して、にこやかで、朗らかでありたいと思います。

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                  退職のご挨拶         
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                                              心臓血管外科科長
                                西 宏之 

 心臓血管外科の西 宏之です。この度2025年1月1日付で東海大学教授として付
属八王子病院に赴任するのに伴い、2024年12月末をもちまして大阪医療センター
を退職することになりましたので、一言ご挨拶申し上げます。
 私は2021年4月に当センターに入職いたしました。当時はCOVID-19が猛威を振
るっており、皆様とあまりお顔合わせができず、入院制限、手術制限がある時期
で実績としても苦戦している中での、非常に不安を感じながらのスタートではあ
りました。そのような中、患者様のために、病院のためにをモットーに、他診療
科の先生方や医療スタッフに信頼していただけるチームを構築し、最新の心臓血
管外科治療を提供して循環器内科とともにあらゆる循環器疾患に対する対応がで
きるようになることを目標にやって参りました。
 まず私の得意とする右小開胸や左小開胸のMICS手術を導入させていただき、大
動脈瘤に対するステントグラフト内挿術といった低侵襲心臓血管手術を多く行う
ようにして、患者さまへの負担を少しでも軽くできるような選択肢を増やしまし
た。循環器内科とも積極的にコラボレーションするように心がけ、症例の増加と
ともに、Impellaという左心補助デバイスの導入、経皮的に僧帽弁閉鎖不全治療
を行うマイトラクリップの導入ができるようになりました。MICS手術だけでなく、
手術ロボットDa Vinciを用いた心臓手術も施行することができるようになり、本
年には念願のハイブリッド手術室完成に伴い経皮的に大動脈弁留置術を行うTAVI
の導入も成功させることができました。この結果開心術数は赴任前の3倍まで増
加いたしました。この間、様々な方々にご迷惑をおかけすることがあったかと思
いますが、皆様には本当に色々と助けて頂き、ご協力いただきました他診療科の
先生方や医療スタッフの皆様にこの場をお借りして深く感謝、御礼申し上げます。
 2025年1月からは東海大学医学部付属八王子病院で勤務いたします。当センタ
ーでの経験を次の職場でも活かして、より多くの患者さん、病院に貢献できるよ
うに努めて参る所存です。何かご協力をお願いすることがあるかもしれませんの
で、その時は何卒よろしくお願い申し上げます。
 最後に、皆様のご健勝、当センターの益々の発展を祈念し、退職の挨拶とさせ
て頂きます。誠に有難うございました。

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                    ICLS        
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                                 臨床工学室 
                               坂上 莉子

11月23日にICLSを受講しました。ICLSでは院内急変を想定した二次救命処置につ
いて学びました。

【午前中の内容】 
蘇生の基本となる以下の手技を個別に練習しました。
 BLS
 気道管理と換気・酸素化
 リズムチェックと電気ショック

【午後の内容】
午前中に学んだ手技を組み合わせたシナリオシミュレーションを行いました。
シナリオシミュレーションでは、院内急変を発見した時点から心拍再開を目標に
以下の6つの役割に分かれて交代しながら繰り返し実践しました。

 役割
①リーダー ②胸骨圧迫 ③気道管理 ④除細動 ⑤記録 ⑥外回り

毎回目標を立て、実践を行うごとに振り返りとファシリテーターからのフィード
バックがあるため、はじめはどのように動けばいいのか、自分の役割が分からな
いことが多かったですが回を重ねるごとに自分の役割を行うことができるように
なっていきました。

【一日の成果】
普段は行うことのない気管挿管やルート確保、リーダーなどの役割も経験するこ
とができました。私たち臨床工学技士は急変時には補助循環の準備を行うことが
多いため急変対応時の他職種の役割や急変対応に関わる人たちの動きを実際に自
分で行うことで総合的な理解を深めることができ、チーム医療の重要性をより一
層理解することができました。

【印象に残った言葉】
ファシリテーターの方の「院内急変に立ち会ったときに適切な行動をとるために
は何度も繰り返しシミュレーションを行い、体が勝手に動く状態になることが重
要である」という言葉が特に印象に残りました。そのため技術を覚えておくため
に定期的なシナリオシミュレーションや講習会へ参加し、習得した技術をより一
層磨いていきたいです。

【今後の目標】
私はまだ院内急変に立ち会ったことがなく、実際の現場を見たことがありません
が、今回のICLSを通して得ることのできた技術や知識を使い、院内急変が起きた
際には救命処置を行い、チーム医療を実践する一員となり、救命の連鎖に参加し
ていきたいです。

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                   看護のこころ
                   患者さんが教えてくれた看護師の役割     
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                             東10階病棟 副看護師長
                                櫻本 夏海

 新年を迎え、春の訪れが待ち遠しいこの季節、皆様いかがお過ごしでしょうか。
私は、小児科・整形外科病棟、救命救急センターで勤務し、現在は消化器内科病
棟で副看護師長として勤務しています。今回は看護師2年目の時に関わらせても
らった患者さんについて書こうと思います。
 小児科・整形外科病棟では、新生児期から老年期までの様々な患者さんが入院
しており、小児科では主に小児がんの患児が入院していました。私が出会った患
児(以下、Aくんと記載)は、小児がんを患い小さなときから抗がん剤や手術など
の治療を行っていました。当時患児は中学生でした。長期治療を終え、自宅へ退
院して楽しい中学生活を送っており、外来受診のときなどにその様子を話してく
れていました。しかし、小児がんが再発し治療のために再入院となりました。再
治療が開始しましたが、Aくんは「退院したら、有名な場所に観光に行ったり、
おいしい食べ物を食べたい。」という希望をもって治療に前向きに頑張っていま
した。しかし病状は進み、予後についての話をする必要がありました。医療者と
家族での話し合いを何度も行い、Aくんはまだ中学生であり現状を伝えることは
難しいのではないかという結論となり、本人には予後については伝えない方針と
なりました。しかし、Aくん自身は「もし今後、退院できないとかあったら絶対
教えてね。」という発言もあり、私は日々の看護の中でジレンマを感じていまし
た。その後、Aくんの病状は進み、「もっと早く教えてほしかった。自分で歩け
るうちにやりたいことがたくさんあったのに。」という発言があり、Aくん自身
の気持ちを尊重し、予後について伝えたほうが良かったのではないかと、考える
日々が続きました。
 この事例を通して、看護師として、24時間患者さんと関わる中で患者さんの思
いや考えなどを理解し、時には患者さんの家族や医療者間で患者さんの思いを伝
えていく役割が看護師にはあるということを考えさせられました。
 現在も、消化器内科病棟で看護師として勤務する中で、病状説明や予後宣告、
退院先の調整など様々な話し合いの場に介入させていただいています。Aくんが
教えてくれた看護師としての役割を考え、日々患者さんとのコミュニケーション
を通して、患者さんと関わり、患者さんと家族や医療スタッフをつなぐ看護師に
なれるよう日々頑張っています。
 寒さ厳しくなるこの季節、また様々な感染症が流行していますので、どうぞお
体に気をつけてお過ごしください。

ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html 

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             研 修 医 日 記        
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                               研修医2年目
                                                             藤平 和秀

 来年度当院消化器内科にて後期研修をさせていただく予定の研修医2年目藤平
和秀と申します。どういう内容を書けばよいのかを考えているのですが、当院を
マッチング先として考えていただいている学生さん向きの当院の研修医の特徴に
ついての内容は出尽くしている気がしますのでここでは詳しい内容は割愛させて
いただきます。
 一言で言わせていただくと、本当におすすめできますし、もう一回マッチング
をしろと言われても当院を第一志望にさせていただくと思います。ということで、
この研修医日記を読んでいただいている学生さんは読み飛ばしていただいて他の
日記をご参照ください(笑)。ここでは、研修医日記をどのような内容を書こうか
と悩んで、過去の研修医日記を読んでいる研修医2年目の方や、おそらく10、20
年先にふとした瞬間に自分の名前をネットで検索しエゴサーチするであろう将来
の自分に向けて、現在自分が考えている悩みについて書いていきたいと思います。
 2025年1月14日現在、選択ローテにて来年から専攻させていただく消化器内科
をローテさせていただいているのですが、業務の多さやレジデントの優秀さに驚
きつつ、来年度自分がこの立場にいれるのか不安に感じています。忙しい日には
一日4.5人の処置をしつつ、20人近くもの患者の病棟管理をしていき、空いてい
る時間を見つけては、外来予習や入院予習を行っていく。レジデントの先生の仕
事量の一部しか担っていないにもかかわらず、ほっと一息をつく暇もあまりない
状況です。ましてや、内科志望には悪名高いJ-oslerという壁が立ちはだかって
おり、症例探しやレポート作成を行っていかなければなりません。そのような多
忙の状況の中でも、仕事をこなしていくレジデントの先生を間近で見て、かっこ
いいなと思う反面、来年自分がこの仕事量をこなせるのか不安に感じています。
もし現在の僕と同じような悩みを持つ人がいれば一回ネットにて藤平和秀と検索
してみてください。消化器内科医として働いていれば、なんとかやっていけるん
やと自信を持っていただければと思います。違う診療科に進んでいればお察しく
ださい(笑)。参考までに僕は休みが必要な旅行という趣味をもっているうえに、
1日平均8時間睡眠が欲しいなと甘ったれた考えを持っています(笑)。
 少し暗めの内容になってしまいましたが、もし僕と同じような考えを持つ人が
いれば、「同じような悩みを持つ人がいるんや」とか、「こんな甘ったれたやつ
でも消化器内科としてやっていけるんや」など思っていただければ幸いです。そ
う思っていただけるためにも最後まで消化器内科として走り抜けれるように頑張
ります!最後までご一読いただきありがとうございました。
                    
臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/kyujin/syokikensyu/nikki/index.html
 
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総編集長:院長 松村 泰志
編 集 長:副院長 平尾 素宏 渋谷 博美
     看護部長 水戸 祥江
編   集:池永 祐子
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 今月のメルマガはいかがでしたでしょうか?次回もいろいろな話題をお届けし
ますのでお楽しみに。

408-osaka@mail.hosp.go.jp


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