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メールマガジン「法円坂」No.292 (2025/8/19)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)




 令和7年8月のメルマガです。今までに経験したことが無い猛暑が続く毎日です
が、皆さんお変わりございませんか。
最近の異常気象が引き起こす「長期エサ不足」で熊の活動に変化が生じて、日本
各地で人と熊の接触リスクも高まってきています。
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   メールマガジン「法円坂」No.292 (2025/8/19)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院  長  松  村 泰  志
 ・就 任 の ご 挨 拶
 ・鳥 を め ぐ る あ れ こ れ
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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             院長  松村 泰志   終戦記念日に思うこと
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 暑い日が続きます。今年の夏は、気温が体温を超える日もあり、特別に暑い夏
になりました。
 8月15日は終戦記念日です。戦争で亡くなられた方々に心より御冥福をお祈り
します。この時期は太平洋戦争のことをテーマとした番組が多く、自然と戦争の
ことに思いを馳せます。日本は、なぜ無謀な戦争を始めてしまったのか。なぜ特
攻隊のような悲壮な戦略を立てたのか。なぜ戦艦大和は撃沈されることが分かっ
ていながら多くの若者を乗せて沖縄に向けて出港したのか。若者たちはなぜ特攻
隊に志願したのか。今の私達が戦争中に起こったことを聞くと、悲しく、やるせ
ない気持ちになります。しかし考えてみると、戦後生まれの私達は、日本が降伏
した後、アメリカのマッカーサーが日本を統治して日本が平和な民主国家になる
ように尽力してくれたこと、日本は戦後7年で主権国家として独立が認められた
ことを知っています。ですので、戦時中の人々が下した決断をやるせなく思うの
ですが、その時代に生きた人達は、戦争に負けたら、天皇陛下は処刑され、日本
は主権を取り戻すことなく、住民は奴隷のように扱われると想像していたと思い
ます。家族を守りたい、日本を守りたいとの必死の思いが、こうした決断をさせ
たのだと思うと理解できます。戦死者の日本への愛国の思いは、今に生きる私達
も受け止めなければなりません。しかし、日本が無謀な戦争を始めてしまったこ
とについては大いに反省すべきです。報道されていることから見えてくるのは、
狂ったリーダーが先導したとの単純な構図ではなく、国民が戦争を支持するムー
ドがあったことが要因であったようです。場当たり的で先が読めないリーダーが、
その機運に乗っかって支持を得ようとしたのだと思います。当時にも、戦争に反
対する指導的立場の人達が沢山いましたが、封じ込められ、抹殺されていきまし
た。こうした歴史から学ぶべきこととして、国民は、苦しい状況にあっても、忍
耐し、安易に短絡的で現実を見ようとしない楽観論に救いを求めてはいけないと
いうことがあると思います。そして、ムードに任せて同調するのではなく、一人
ひとりが自分でしっかり考えて自分の意見を言うことだと思います。私達日本人
は、気持ちを合わせて協力し合える良い特性を持っていますが、この長所が、間
違った方向に向かうと怖いということを頭に入れておかなければなりません。私
達が平和を求めることは当然なのですが、今のウクライナの立場に置かれた場合、
どう対応するのが良いのか簡単に答えは出ません。粘り強さも私達日本人の特性
です。厳しい状況にあっても、辛抱強く、粘り強くありたいと思います。
 話しが変わりますが、プライベートなことでご報告があります。8月5日に二人
目の孫が産まれました。出産にはトラブルがありますので、産まれる前は母子共
に無事であることを祈りましたが、母子共に元気で無事に生まれたとの報告を聞
き、安堵すると共に、孫の写真を見てとても嬉しく思いました。二人の孫は息子
の子で、どちらも男の子です。私も二人の男兄弟の次男ですので自分と重なりま
す。4才年上の子が弟をとても大事そうにしている様子が微笑ましく思いました。
私の兄も私が生まれた時に、こうして大切にしてくれたことと思います。今の私
の立場にある父方の祖父は、遠方に住んでいましたので、めったに会うことがあ
りませんでしたが、祖父も私の誕生を喜んでくれ、思いやってくれていたことと
思います。私も、両親だけでなく、祖父母、兄、叔父叔母からも、多くの祝福を
受けて生まれ、見守られてきたことを改めて思いました。祖父母から孫まで命が
繋がったことに感謝します。

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                    就任のご挨拶         
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                             小児科科長
                               青天目 信

 2025年4月から当センター小児科に着任しました青天目 信(なばため しん)と
申します。私は1999年に大阪大学を卒業し、小児科学教室に入局しました。よく
聞かれますが、名前の由来は福島県いわき市です。
 4年間の初期研修を終えて、一般小児診療で、小児神経疾患の患者さんは多い
のに難解で診療が困難であったこと、小児神経診療の恩師が子どもの神経診察時
には、子どもが生き生きとしていなければ本来の能力を見抜けないと、おもちゃ
を使いながら楽しそうに診察をされていたことから、小児神経診療を志しました。
 大阪大学医学部附属病院、森之宮病院、国立精神・神経医療研究センターで、
それぞれ3年ずつ研修する機会を得て、2012年より13年間、大学で過ごしました。
てんかんや不随意運動、代謝性神経疾患、稀少神経疾患の診療と、評価法として
神経症候学が私の主たる研究分野です。
 小児神経診療は、数千種類を超える疾患を扱い、おそらく全診療科で最も多彩
な疾患を扱います。近年の遺伝子診断の進歩もあって、その数は加速度的に増え
ています。20年診療をしてきましたが、今でも1か月に2-3人は、初めての疾患に
あたります。臨床研究も進み、稀少疾患でも最適な診療方法のために論文検索を
することが欠かせません。Pitt-Hopkins症候群の覚醒時中枢性無呼吸に対して、
延髄の呼吸中枢におけるNaチャンネルの過剰発現が主病態であるという論文から、
Naチャンネルブロッカーであるtopiramateを投与して改善した症例や、KBG症候
群における乳児てんかん性スパズム症候群後の難治焦点てんかんに対して、
perampanelを主剤として複数の抗てんかん発作薬を組み合わせて発作抑制を得た
症例など、希少疾患でも工夫の余地があります。私のライフワークは、脳の重要
なエネルギー基質であるグルコースを脳内に十分に取り込めないglucose
transporter 1欠損症という疾患です。ケトン食療法という食事療法が有効であ
り、この疾患の自然歴解明と成人後も継続できる食事療法の開発についての研究
を継続したいと考えています。
 現在の小児科は、合計3名の小所帯で、重症例の入院診療は困難ですが、研究
熱心な同僚二人にも恵まれました。これまで当院が担当してきた地域の小児診療
に加え、小児神経疾患や発達障害診療に力を入れて、小児神経希少疾患の管理に
ついて、西日本有数の小児科を目指したいと考えています。
 診療科によっては小児科と連携する機会は多くはないかもしれませんが、お役
に立てるように努力をしたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

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              鳥をめぐるあれこれ     
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                        手術部長・呼吸器外科科長 
                                                              髙見  康二
  
子供のころ、我が家は鳥好きな家庭でした。小学生の頃には、セキセイインコや
ジュウシマツ、メジロなど、さまざまな小鳥を飼っていました。ただ、ほとんど
の鳥をつがいで飼育していたため、繁殖が主な目的となり、個々の鳥への愛着は
薄かったように思います。鳥たちも「餌さえもらえれば十分」といった様子で、
飼い主との絆が深まることはあまりありませんでした。
時が経ち、息子が小学生になった頃、「文鳥を飼いたい」と言い出しました。私
は自身の子供時代の記憶や、鳥による呼吸器疾患への懸念から少し躊躇しました
が、息子の熱意に押されて文鳥を迎えることに。すると予想外にも、私自身が文
鳥の魅力に夢中になってしまいました。文鳥は豊かな感情を持ち、家族に寄り添
う存在で、しっかりと家族の一員となりました。ただ、その鳴き声は言語ではな
く感情表現と思っていました。
そんな折、『僕には鳥の言葉がわかる』という本に出会い、鳥が言語を使って情
報を伝えているという事実に衝撃を受けました。著者の鈴木俊貴先生は、シジュ
ウカラの言語を解明するために長年の観察と実験を重ね、その成果をユーモアを
交えて紹介しています。先生の研究は動物言語学という新たな分野を切り拓き、
情熱と独自の視点に深く感銘を受けました。
この本を通じて、自然界にはまだ私たちの常識を覆す事実が隠れていることを実
感し、医療の現場でも、先人の知識に加え、日々の診療での観察力と柔軟な思考
が重要だと改めて感じました。『僕には鳥の言葉がわかる』は、小学校高学年か
ら中高生におすすめの一冊です。夏休みの読書感想文に悩んでいる方がいれば、
ぜひ手に取っていただきたいと思います。
さて、鳥好きの私ですが、6月のある朝、病院玄関前のクスノキの下を歩いてい
たところ、突然カラスに後頭部を襲われ、驚いて逃げようとした際に足がもつれ
て転倒してしまいました。どうやら巣を守る親鳥に「侵入者」と認識されたよう
です。後に知ったのですが、カラスは攻撃前に鳴き声で警告を発するそうで、私
がその「言葉」を理解できていれば、平和的に回避できたかもしれません。
医療においてもコミュニケーションは非常に重要ですが、カラスとも意思疎通が
できれば、もっと穏やかな朝を迎えられたのではと思います。その後、カラスに
は大変申し訳ないのですが、安全のために巣は撤去されました。今は安心して通
院いただけますので、どうぞ患者様をご紹介ください。

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                   看護のこころ
                 ~患者さん自身に目を向ける大切さ~
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                                       西8階 副看護師長
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 気持ちよく晴れ渡った青空に、照り付けるような陽射し。まだまだ暑い夏が続
きます。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 私は病棟の副看護師長として勤務しながら、糖尿病看護認定看護師として1型
糖尿病看護外来も担当しています。入院していた患者さんが、退院後それぞれの
生活に合わせて試行錯誤しながら血糖コントロールをしている姿を外来で見て、
少しでもその支援に携われることにやりがいを感じています。今回は糖尿病看護
に携わる中で、患者さん自身に目を向ける大切さを思い出させてくれた患者さん
との関わりをお話しします。
 その方は1型糖尿病を持つ30歳代の男性、Aさんでした。入院してインスリン
ポンプという持続的にインスリンを注入する器械を導入し、持続的に血糖値をモ
ニタリングする器械も装着されている方でした。外来ではこのモニタリングした
1か月の血糖値の推移のデータを見ながら、患者さんと振り返り血糖コントロー
ルをさらに良くするためにはどうしたらよいか共に考えています。その日もいつ
ものように採血結果を見ながら血糖値が高いところ、低いところ、それぞれの原
因がなにか、Aさんと振り返りを行っていました。すると、ふとAさんが「これを
食べたらこのくらい血糖値があがるな~って、食事のたびに考えるんです。1日
でもいいから健康な膵臓に入れ替えたい。そしたら何も考えずにおいしくご飯が
食べられる。」と話されました。それを聞いて、私は採血結果ばかり見てAさん
自身を見ていなかったことに気づきました。そのあと、Aさんが糖尿病を持ちな
がら仕事を頑張り、生活するうえで困難に思っている事などの話を聞きました。
Aさんは今の生活のこと、また小学生の時に1型糖尿病になり、それまで糖尿病
を持ちながら生きてきた中での様々な経験を語られました。そして、「健康な膵
臓に入れ替えたい」という言葉にいろいろな思いや感情が込められていたことを
知りました。
 医療は日々進歩しており、糖尿病においても最新の器械を使うことでこれまで
見えていなかった血糖値の動きを見ることができ、血糖コントロールを良好に保
つための対策も立てやすくなりました。しかし、どんな便利な道具ができても看
護の原点を忘れてはならないと改めて実感する出来事でした。病気を持ちながら
これまでどのように過ごしてきたのか、またこれからどのような人生を歩もうと
思っているのか、患者さん自身に目を向けることが看護の原点で大切なことだと
思います。私はこれからも、今見えている採血結果だけにとらわれず患者さん自
身に心を寄せ、病気を持ちながらもその人がその人らしい人生が送れるように少
しでも支援していきたいと思います。
 
ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html 

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             研 修 医 日 記        
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                              研修医2年目
                                                          鈴木 英祐

学生時代、まだ研修先を探していた頃にこのページに出会い、先輩方の文章を読
んでいたのが、ついこの間のことのように感じます。
当直と生活環境について書こうと思います。

当直について
時間外救急外来では、研修医が裁量を持って動き、患者さんの診療にあたります。
最近は救急車の台数も増えており1日20人ほど診療する日もあります。もちろん、
上級医の先生方や頼もしい看護師さんたちに支えていただきながらではあります
が、1stタッチを行い、自分たちで方針をある程度決めるという経験を繰り返す
ことで、着実に力をつけていくことができます。

生活環境について
当院は谷町四丁目にあり、立地は非常に便利です。周囲には美味しいご飯屋さん
が多く、敷地内には24時まで開いているスーパーもあるため、忙しい研修生活の
中でも助かっています。また、トレーニングをされる方にとっては、周辺に24時
間営業のジムや個人ジムが豊富に揃っており、好きなマシンのあるジムを選ぶこ
ともできます。現在開催中の万博へも中央線で乗り換えなしでアクセス可能です。
同期の中には、期間パスを駆使して週5で通う猛者も(笑)

日々の研修では、素晴らしい先生方から熱心なご指導を受けることができ、とて
も充実した環境です。ぜひ一度、気になる診療科に見学に来てみてください。そ
の際は、ぜひ研修医ルームでお話ししましょう!
                   
臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/kyujin/syokikensyu/nikki/index.html
 
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総編集長:院長 松村 泰志
編 集 長:副院長 平尾 素宏 渋谷 博美
     看護部長 水戸 祥江
編   集:池永 祐子
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 「暑さ寒さも彼岸まで」と言われますが、気象庁の長期予報では来月も暖かい
空気に覆われ、気温は全国的に高く、猛烈な残暑が続くとのことです。皆さん、
熱中症にもくれぐれもご用心ください。


408-osaka@mail.hosp.go.jp


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