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メールマガジン「法円坂」No.216(2019/4/15)(独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)



 新しい年度が始まりました。病院のみならず、学校や会社でも、フレッシュな新
入生や新人職員を迎えてベテラン組はてんてこ舞い?かもしれません。皆様が受診
される病院では、しっかり医療安全対策をとっていますので、ご安心を。来月はい
よいよ「令和」の幕開けです。それでは、平成最後のメルマガをお楽しみ下さい。
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   メールマガジン「法円坂」No.216(2019/4/15)
          (独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター)
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今月号の目次
 ・院 長  是恒 之宏 です
 ・ごあいさつ 
 ・最新の診断治療 22 眼科 
 ・最新の診断治療 23 耳鼻咽喉科  
 ・看 護 の こ こ ろ
 ・研 修 医 日 記

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      院 長  是恒 之宏(これつね ゆきひろ) です       
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平成最後のメルマガ寄稿です

 皆様、ついに平成も終わりを迎えます。それぞれの平成時代を過ごし、思い起こ
しておられることと思います。テレビでも平成を振り返る番組が多く、これも平成
だったか、と改めて感じています。
 元号でよく使われるのは直近の3元号ですね。私が生まれたのは昭和半ばですが、
当時は明治、大正、昭和でした。それが、令和、平成、昭和となり、昭和生まれが
明治の位置になる、なんとも寂しい限りです。平成生まれもあと10年もすれば令和
生まれを見て時代の流れを感じることでしょう。

 さて、昨日4月14日(日)はまだ4月の気候不順のなか、不整脈ガイドライン改訂
作業のため朝から、東京品川で缶詰になっていました。循環器学会では数多くのガ
イドラインがありいくつかはそれを統合して改訂するようですが、心房細動(薬物)
ガイドライン2013は単独ではなく不整脈のガイドラインに統合され2020年3月改訂
をめざして2018年夏よりその作業が始まっています。日本の心房細動ガイドライン
は、これまでも日本独自のエビデンスから心房細動が原因と考えられる脳梗塞予防
に抗血小板薬を第一選択としないことを2009年より提唱し、その後ヨーロッパやア
ジアのガイドラインにもその流れが出来ました。また、ワーファリンコントロール
の程度についても70歳以上では少し軽めに、という日本独自のエビデンスがあり、
アジア諸国では一般的に軽めのコントロールが行われています。今回のガイドライ
ンではいくつか重要な改訂ポイントもありますが、まだ最終段階ではありませんの
で詳細は来年までお待ち頂きますように。平成最後から令和のはじめにかけての改
訂作業となり、後々印象に残るガイドラインとなりそうです。


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         ご 挨 拶       
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                           副院長 三田英治

 4月1日に副院長に就任いたしました三田英治です。ほぼ3年ぶりのメルマガ投稿
です(前回はNo. 180)。私が果たすべき診療・教育・臨床研究における役割つい
て簡単にお話しします。
 診療においては、専門である肝炎・肝癌診療のほか、医療安全を担当します。高
度に細分化された先進医療を実践する上で、個々人が注意を払うことはもとより、
システムとして安全な医療を提供できる環境を整備できるようつとめています。二
重、三重の備えをすることが重要なのです。また医療側だけでなく、患者さん側か
らの備えもサポートしています。たとえば転倒ですが、リハビリも終盤にさしかか
り、患者さんが日常生活への復帰に自信が出てきた頃に転倒はおこります。これは
転倒のデータを集計して判明したことです。その結果、リハビリで患者さんの動き
がスムーズになった頃、「この時期に転倒が多いので油断しないようにしましょう
ね」と声をかけることで転倒のリスクを減らすことができます。
 教育においては内科新専門医制度の大阪医療センター基幹プログラムの責任者を
つとめています。医師は卒業後2年間の初期研修を行いますが、そのあと3年間専門
研修を受けることが一般的です。高齢者を診療する場合、疾患は単一とは限らず、
複数の臓器にわたって病気を発症しています。ひろい知識と経験を積むことで、患
者さんに安心した医療を受けてもらえるよう優秀な内科医を育てていきたいと思い
ます。指導層が充実しているため、大阪医療センターの内科専門研修プログラムは
大阪府内でも人気のプログラムと評価されています。
 最後に臨床研究ですが、国立病院機構では全国にちらばる専門医集団のネットワ
ークをいかして共同研究を実施しています。大阪医療センター消化器内科は現在消
化管2課題、肝臓1課題の研究を主任研究施設としてリードしています。
 昭和60年に大阪大学医学部を卒業した私ですが、ついに来年からは令和卒世代の
医師が誕生します。時代がかわっても、医療の信念は変わらないので、そのスピリ
ットを伝承していくことが昭和卒世代の役割と考えます。今後とも大阪医療センタ
ーをよろしくお願いします。



                           看護部長 西本京子

 4月1日付けで、国立病院機構京都医療センターより配置換で参りました西本京子
です。当センターは、昭和59年4月に私が看護師(当時は看護婦)として最初に努
めた病院で、手術室に配属されました。その年は、前年度の退職者が多数おられた
ようで、24名のスタッフの内、7名が新人という非常にタイトな状況の中で勤務で
した。
毎日異なる科の、異なる術式を先輩方から教えていただき、いろいろな器械器具が
夢の中にも出てきたことを思い出します。手術室には10年ほど勤務し、様々な医師
や看護師と出会いました。なかでもBIGな出会いは、iPS細胞でノーベル賞を受賞さ
れました京都大学教授 山中伸弥先生と一緒に仕事をさせていただいたことです。
当時先生は、整形外科の研修医でした。手術はあまり得意ではなく「ジャマナカ」
と呼ばれていたと山中教授ご自身が話されていますが、当時はその通りでありまし
た。ただ、患者さんに対しては優しい先生で、私たち看護師も気軽に相談できる研
修医でした。本当に邪魔扱いして呼称していたのではなく、愛情を込めての「あだ
名」であったと記憶しています。何は主あれ、同じ時代に当センターで勤務させて
頂いたことには変わりはなく、手術が遅く終わったときなどは谷町界隈の居酒屋で
みんなと遅い食事をとりながら「今日は○○先生に厳しく指導された。」や「○○
をしでかした。」など日々の愚痴を語り合ったことが思い出されます。
 国立病院機構では役職の昇任時は、他の施設へ異動することが決まりとなってお
り、私の最初の昇任先は和歌山県田辺市にある「南和歌山病院」(現、南和歌山医
療センター)でした。その後、看護教員を経験したのち平成12年4月に看護師長と
して2度目の当センター勤務となりました。看護師長時代は東6階病棟で勤務し、
その後医療安全管理係長、教育担当看護師長を経験して、平成18年4月に吹田市に
あります国立循環器病センター(現、国立循環器病研究センター)に副看護部長と
して昇任しました。そして平成24年4月に当センターの副看護部長として3度目の
勤務となりましたが、まさかの4か月後、奈良医療センターの総看護師長として昇
任しました。そして今春、看護部長として4度目の勤務となりました。
 いま思えば、節目節目に当センターで勤務し、看護師として、看護管理者として
様々な経験をさせて頂き、今に至っていると思います。今まで育てていただいた当
センターに少しでも恩返しができればと考えております。
 看護部長室のドアはいつでも開いております。何かありましたらお気軽に声を掛
けていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

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       最新の診断治療 22 眼 科     
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                        眼科 科長 大鳥 安正

 当科では、白内障、緑内障、網膜硝子体疾患の診断治療を三本柱としております。

今回は、緑内障についての最新の診断治療についてお伝えします。
緑内障は40歳以上の20人に1人、白内障が生じる70歳を超えると10人に1人の
頻度で発症します。白内障と違って自覚症状に乏しく、発見が遅れると重篤な視機
能障害をきたします。緑内障は視神経が障害され、視野障害をきたす疾患で、通常、
眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる疾患とさ
れています。我が国では、緑内障全体の7割は、眼圧が正常範囲(10〜20mmHg)の
正常眼圧緑内障であることがわかっています。緑内障診断には視神経の構造変化を
みることが重要とされてきましたが、従来の眼底写真のみでは極早期の緑内障性変
化を捉えることは緑内障専門家であっても困難なことがありました。近年、光干渉
断層計(OCT)の登場で、視神経乳頭の構造や神経線維層の厚みを定量的に測定で
きるようになり、緑内障性構造変化を来しているものの視野障害がでていない極早
期の段階(前視野緑内障)で発見されることも多くなりました。緑内障の治療は、
眼圧を下降することが唯一有効な治療法とされています。眼圧を下降する方法とし
ては、点眼治療、レーザー治療、手術治療があります。点眼治療は有効な治療法で
すが、効果には個人差があり、多剤併用しても眼圧下降効果が得られないこともあ
ります。一方、手術治療は点眼やレーザー治療よりも眼圧下降効果が高く、うまく
いくと点眼無しで眼圧は10mmHg以下となり質の高い眼圧管理ができます。ただし、
手術治療は術後合併症が大きな問題になってきました。昨今、低侵襲緑内障手術が
注目されています。言葉どおり、低侵襲であり、術後合併症が少ないことは事実で
すが、従来型の緑内障手術に比べると落ち着く眼圧は15〜16mmHgと高めであり、
初期から中期の緑内障が適応になっています。無治療時眼圧が15mmHg以下の日本
人の正常眼圧緑内障患者さんを治療しないで経過観察したところ、5年の経過で視
野障害が66%で進行することが報告されました。視神経障害を起こさない眼圧(目
標眼圧)は個人によって異なりますが、日本人の正常眼圧緑内障は眼圧をかなり低
くすることが理想で、安全性の高い低侵襲緑内障手術では眼圧下降効果が不十分と
いわざるをえません。緑内障の診断治療はこの10年でかなり進歩しましたが、残念
ながら、緑内障は失明原因の1位の眼疾患となっています。早期に発見し、眼圧を
十二分に下降する治療を行うことが病態悪化を抑えるためには極めて重要であると
考えます。
 当科では低侵襲緑内障手術はもとより、従来型の緑内障手術も多数例行っており
ます。新しい治療を取り入れながらも従来の手術方法をさらに洗練し、失明になる
患者さんを少しでも減らせるようにスタッフ一同精進して参ります。


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       最新の診断治療 23 耳鼻咽喉科     
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--メニエール病の画像診断(内耳造影MRI)--                 
    
                      耳鼻咽喉科 科長 西村 洋

 耳鼻咽喉科科長の西村です。私は中内耳手術・神経耳科を専門としております。
特に鼓室形成術を中心とした中耳手術は当院で年間百例近く行っております。この
中耳手術は長い歴史のある手術ですが、内耳手術としては近年の電子デバイスの進
歩により人工内耳(CI)が発展してきております。ただこのCIも日本にきてから
でも30年ぐらいになります。というわけで今日は最新の診断ということで「メニ
エール病の画像診断」について説明します。

 皆さんはメニエール病という病気をご存じでしょうか、めまいと難聴を反復して
繰り返す難治性の病気です。めまい発作を繰り返すと仕事に大きな障害となり日常
生活が非常に困ります。この病気の病因・病態は「内リンパ水腫」であるというこ
とが、われわれの大先輩である山川強四郎 大阪大学耳鼻咽喉科第3代教授により解
剖標本により示されました。しかしながらいま生きている患者さんの内耳で内リン
パ水腫があるかどうかを直接みる方法は今までありませんでした。しかし2007年に
名古屋大学で初めてメニエール病の患者さんの内耳の内リンパ水腫を特殊なMRI撮
像法で撮影する方法が開発されました。この方法はさらに改良されていき、当院で
も一昨年に最新鋭の3テスラMRIが導入されまして、この内耳造影MRIが可能にな
りました。
 ちょっとここで内耳について解説しますと、耳は外耳(耳たぶや耳の穴)、中耳
(鼓膜の奥で耳小骨などがあるところ、子供はよく中耳炎になる)、内耳(中耳よ
りさらに奥で音を感じたり平衡の感覚器があるところ)から構成されます。内耳は
聴覚の働きと平衡機能がありますので、メニエール病の様な、難聴とめまいが同時
に起きるような病気がおきます。この内耳の感覚細胞は内リンパ腔という液体で満
たされた空間の中にあります。メニエール病はこの内リンパ腔が拡大(水腫)する
ことによって起きるのです。しかしながら永らく、生きた患者さんでこれを直接み
ることは出来ませんでしたので、メニエール病の診断は症状による診断でした。こ
れでは本当にその人で内リンパ水腫が起きているのかどうか確証がえられずモヤモ
ヤとしたところがありました。この状況を解決したのがこの内耳造影MRI検査です。
実際の検査としてはMRI検査ですのでMRIそれ自体は非侵襲的(痛くはありません)
です。でも造影剤は必要なのでそれはちょっと注射が必要です。あと造影剤をうっ
てから撮像までに数時間あけるので検査にかかる時間が長く半日がかりになります。
しかし直接的に内リンパ水腫があるかどうかがわかるので診断に非常に有用ですの
で、メニエール病のめまい発作を繰り返している方やそのために手術を検討してい
る方などに、この内耳造影MRI検査を行っています。


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           看 護 の こ こ ろ        
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                         CCU 宮下 大介

 木々もすっかり芽吹き、新緑の葉が茂る季節となりました。出会いと別れの季節
でもありますが、病院で勤めていますと様々な出会いや別れがあり、その中でたく
さんの学びを得ることができます。私は看護師12年目で、これまでICU、救命救急
センター、CCUと生命の危機状態にある患者さんの看護に携わってきました。その
中から私がこれまでで印象に残っている経験をご紹介します。
 患者さんは急性大動脈解離で緊急手術をされました。一家の大黒柱であり、妻や
子供、孫がいる方でした。手術は無事に終わりましたが、大量輸液・輸血や炎症の
影響で全身浮腫を呈しており、顔貌は術前の面影がほとんどない状態でした。術後
にICUで緊急開胸手術も施行し、いつ急変してもおかしくない状態ではありました。
しかし、術後の経過の中で、徐々に回復傾向がみられ、術後1ヶ月ほどでICUにてリ
クライニング車椅子で散歩できる状態まで回復しました。しかしながら、開眼はし
ますが、コミュニケーションは図れる状態ではなく、家族が声をかけても反応せず、
意識の回復は難しいのではないかと感じていました。そのような状態ではありまし
たが、生命の危機状態は脱し、一般病棟へ転棟されました。転棟後1ヶ月ほどした
頃、患者さんの元へ訪問すると、テレビを見てくつろいでおられるところを目の当
たりにしました。声をかけると普段と同じように話すことができる状態まで回復さ
れていました。ICU滞在中の記憶はなく、私たちICUスタッフのことは一切分からな
いといった状態でしたが、「あの時のことは覚えてないけど、よくしてくれてんな、
ありがとう。」といった言葉をいただきました。このような方は他にもたくさん見
てきました。たとえ患者さんは私たちのことは覚えておられなくても、生命の危機
や、疼痛やその他の苦痛を乗り越えるためには私たち看護の力は必要です。あの時
とは想像もできないくらい回復しておられる姿を見ると、自分たちの看護は間違っ
てなかったと実感することができます。
患者さんが回復するためにはどうすればいいかを常に考えながら看護にあたる必要
があります。
 ICUの患者さんは意識レベルが悪化していたり、鎮静されていたり、人工呼吸器
が装着されていたりすることで、自分の思いや希望を表出することができません。
医療者、特に看護師は一番身近にいるため、そのような思いや希望を察知すること
が大切です。しかし、一番良いのは患者さんが直接思いや希望を伝えることができ
ることだと思います。そのため、どれだけ生命の危機状態にある患者さんでも、入
院前の生活に少しでも早く戻るにはどのようにすればいいか、患者さんの声を1日
でも早く聞くには自分たちは何をすればいいのかを常に考え、看護していくことが
大切だと思い、今後もそこを目指していきたいです。
 最後になりましたが、皆さまにおかれましては、新年度を迎えお忙しいとは存じ
ますが、健康に留意され、ご自愛ください。


ホームページ→https://osaka.hosp.go.jp/kango/index.html


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          研 修 医 日 記
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お休みです。


臨床研修のホームページ→
https://osaka.hosp.go.jp/html/kensyu/shoki/nikki.html


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総編集長:病院長 是恒之宏
編 集 長:副院長 上松正朗 三田英治
     看護部長 西本京子 
編   集:百崎実花
発  行:独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター院長室
         (〒540-0006 大阪市中央区法円坂2-1-14)
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 本格的な春が訪れ、気分もうきうき良い季節ですが、社会的環境が変わることも
多く、ストレスから体調を崩しやすい時期でもあります。無理しないよう、体調管
理には気をつけましょう。次号は「令和」最初のメルマガです。お楽しみに。

メールマガジンのご感想をお聞かせ下さい。
408-osaka@mail.hosp.go.jp

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