治験ってなんだろう?
新しいくすりができるまで
人はけがをしたり病気になると、くすりを塗ったり、飲んだりします。くすりは多くの人々の努力によって創り出されたものです。では「くすり(医薬品)」はどのようにしてできているでしょうか。
新しい薬の候補
実験室で作ったものや、天然に存在している何千何万という物質の中から、試験管を用いた実験などでいくつかの
「くすりの候補」を選びます
動物で行う実験
ネズミやウサギ、イヌなどの動物を使って効果と安全性を調べます
治 験
動物の試験で十分な効果があって安全だったものが、人でも実際に役立つかどうかを確かめます
厚生労働省の審査
患者さんにご協力いただいた治験の結果は厚生労働省によって厳しく審査されます
新しい薬の誕生
審査により新しい薬と認められたものだけが患者さんのもとに届けられます
『臨床研究』『臨床試験』『治験』とは
人を対象とした医学系研究のことを「臨床研究」といい、病気の予防・診断・治療方法の改善や病気の原因の解明、患者さんの生活の質の向上を目的として行われます。臨床研究のうち、治療や指導などを行ってその結果を評価するものを「臨床試験」といいます。臨床試験のうち、新しい薬や医療機器が国の承認を得て一般の診療で使えるように、客観的なデータを集めることを目的として行うものを「治験」といいます。
臨床研究:人を対象として行われる医学研究
臨床試験:臨床研究のうち、患者さんに対して治療や指導などを 行うもの
治 験:臨床試験のうち、新しい薬や医療機器の製造販売の承認を国から得るために行われるもの
治験の進め方
治験は、4つの相に分けて進められます。それぞれ対象者や薬の使用量が違います。
第Ⅰ相試験
少人数の健康な成人が対象です。薬の量を徐々に増やしていき安全かどうか調べます
第Ⅱ相試験
少人数の患者さんが対象です。薬の使い方・量(用法、用量など)を調べます
第Ⅲ相試験
多くの患者さんが対象です。最終的な効果と安全性の確認を行います
ここで厚生労働省に結果を提出し、承認されたものが医薬品として市販されます
第Ⅳ相試験・製造販売後臨床試験
承認された薬の効果と安全性を引き続き調査します
治験を行うときのルール
治験では、「くすりの候補」を人に使うことになるため、治験に参加していただく方の人権や安全が最大限に守られなければなりません。それと同時に、「くすりの候補」の効き目と安全性を科学的な方法で調べる必要があります。そのため、治験を行うには厳しいルールが国によって定められています。そのルールは「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(GCPと呼ばれています)といいます。このルールに基づいて製薬会社も病院も治験を行っています。
当院でもこのルールに従って、院長が治験審査委員会に審査を依頼しています。治験審査委員会は、医療関係者以外の委員も交えて本当に治験を行ってよいかどうか、倫理性や試験の科学性を審査します。
もし、医師から治験をすすめられたら?
医師から現在の病状や治療方法も含め、治験について文書を用いて説明を受けます。その説明の内容をよく理解した上で、患者さんの意思で治験に参加するかどうかをお決め下さい。説明されたその場ですぐに返事をする必要はありません。持ち帰ってご家族と相談するなどよく考えてから返事をしてください。
治験への参加をお断りになられても、不利益はありません。また、参加を決められた後でも途中で参加を取りやめることができます。
治験に参加したときの費用は?
治験の場合、費用について国の定める制度(保険外併用療養費)が適用されます。これにより、治験薬を使い始めてから、使い終わるまでの期間、患者さんが受けた検査(血液検査や尿検査、レントゲン・CTなどの画像診断)の費用は治験を実施(依頼)している製薬会社から支払われます。
また、この期間に治験を受けている病院の他の診療科で受けた検査費用についても、同様に支払われる場合があります。そのため、普段患者さんが診療を受けた際に支払っている健康保険などの一部負担金が少なくなる場合があります。
治験に参加していただくことで、外来患者さんの場合は決められた日に来院していただく日数が通常の治療よりも多くなることがあります。そのため、患者さんに交通費などにお充ていただく『被験者負担軽減費』を当院からお支払いしています。患者さんが治験のために来院された回数に合わせて月ごとにまとめて、指定の銀行口座に振り込むことになります。
治験参加中に起こった健康被害はどうなるの?
治験はこれまでの結果に基づき、科学的に計画され、慎重に実施されますが、万一予期せぬ副作用等により健康被害が生じた場合には、迅速かつ適切な治療をいたします。また、必要に応じ補償の請求をすることができます。
ただし、あなたの過失や故意により生じた場合、あるいは治験とは無関係と判明した場合には、補償が受けられないこともあります。治験参加期間中は、担当医師の指示をお守りください。
臨床研究コーディネーターとは?
臨床研究推進室では『臨床研究コーディネーター』とよばれる人が働いています。
臨床研究コーディネーターは、臨床研究の開始前から終了までのすべてをサポートする専門スタッフのことをいい、Clinical Research Coordinatorの頭文字をとって『CRC』とも呼ばれています。患者さんが安心・納得して治験に参加できるように、CRCは診察に同席し、体調の変化を注意深く観察し、不安や疑問が軽減できるように支援しています。またCRCは患者さんや医師だけではなく、看護部・薬剤科・臨床検査科・放射線科・事務部など院内の様々な部門や製薬会社と関わり、治験が円滑に実施できるように院内の調整をしています。
現在当院では、薬剤師3名、看護師5名の計8名が臨床研究コーディネーターとして働いています。
主な仕事の内容
・治験の説明を医師からお聞きになった後、臨床研究コーディネーターが治験の内容について再度詳しく説明します
・患者さんの治験に対する不安や疑問にお答えしています
・治験のために来院していただく日や検査の予定をお伝えしています
・患者さんより体調の変化や薬の副作用についてお話を伺い、安全面に注意を払い、適切な対応ができるように努めて
います
・治験が安全かつスムーズに行えるよう、担当医師や病院内のスタッフ、製薬会社との連絡・調整を行っています
当院で取り組んでいる治験・臨床研究
外科、脳卒中内科・脳神経外科、腎臓内科、消化器内科、循環器内科、救命救急センター、整形外科等で治験に取り組んでおります。
※当院では、健康な方を対象とした治験は実施しておりません。