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研修計画 乳腺認定医・専門医カリキュラムでは、基本的領域診療科(外科、産婦人科、内科、放射線科のいづれか)の認定医または専門医であることがまず最初のステップになる。腫瘍学は従来から外科学とともに進歩してきた経緯もあり、全身疾患であることも鑑みると、基本的には外科専門医の修練を基盤としてつむことを期待する。日本外科学会専門医取得に関しては、当院外科研修プログラムに沿い、臨床研修医の2年と後期研修の3年で取得できるように工夫されているので、詳細は外科カリキュラムを参考にされたい。 乳腺認定医の条件には、その他に「継続4年以上学会会員であること」「臨床研修医終了後、本学会が認定した認定施設において所定の修練カリキュラムにしたがい通算2年以上の修練を行っていること。ただし、平成15年迄の医師免許取得者は、医師免許取得後4年以上修練し、そのうち2年以上は認定施設において所定の修練カリキュラムに従い修練を行っていること」「乳腺疾患に関する業績を有すること」が必須である。 また、専門医の取得条件については、「継続5年以上学会会員であること」「臨床研修医終了後、認定施設において所定の修練カリキュラムにしたがい通算5年以上の修練を行っていること。ただし、平成15年迄の医師免許取得者は、医師免許取得後7年以上修練し、そのうち5年以上は認定施設において所定の修練カリキュラムに従い修練を行っていること」がある。逆に、解釈すると、認定医には最速で卒後5年(外科専門医と同時期に取得も可能)、専門医には卒後7年で取得可能であることから、乳腺専門医を志す先生には、外科後期研修の3年の期間に、乳腺研究カリキュラムを前倒しして行うことにより、早い時期での取得ができる(図参照)。各自の目標の応じて、大阪医療センターでは、後期専修医3年および5年コースを選択できる。 また、乳腺臨床は、外科学一般のみならず、放射線診断学、病理学、放射線治療学などの横断的知識と経験の修練ならびに看護師・薬剤師などの医療スタッフとの「チーム医療」の実践が不可欠であることより、それらの部門との協調のもと、研修プログラムを実践する。 詳細は別添付表を参考にされたいが、当院における初期認定医取得目標と専門医取得目標を各年毎に記す。
<2年目>
(B)専門医研修期間(5年) <1年目>
<3年目>
<4年目>
<5年目>
指導体制 外科科長である関本貢嗣が、全般に指導責任者となる。増田慎三(平成5年卒)、山村順(平成9年卒)が乳癌学会専門医として指導医である。増田慎三は大阪大学医学系研究科乳腺内分泌外科の臨床准教授も兼任し、医学生の実地臨床研修の指導も担当する。 外科は疾患毎に専任スタッフ制をとり、初期研修医ならび専修医の指導を担当する。水谷麻紀子(平成15年卒)、八十島宏行(平成15年卒)も加わり、乳腺専任スタッフは4名である。 現在、外科においては常時9-12名の専修医が勤務している。専修医は前期研修医と同様に入院患者の担当医となるが、外科専門医を標傍するための専門教育を受けている。また、病棟病務や患者管理の実務においては、研修医の直接指導を担当し、その術も習得する。 乳腺疾患領域では、特に関係の深い他診療科として、病理部門(真能正幸・児玉良典)、放射線診断(栗山啓子・金澤達)、放射線治療(田中英一)、形成外科(吉龍澄子)などからも乳腺疾患の専門医として指導を得る。
研修カリキュラム到達目標 1.認定医取得のための細則を表1と表2に示す。乳癌学会HPより抜粋。
表1;乳腺認定医が理解しなければならない基礎的事項
項 目
理解度
解剖
(正常乳房の基本的な組織像、乳房腋窩領域の解剖)
生 理 (性ホルモン と乳腺)
性周期と乳腺
妊娠・授乳期乳腺
加齢による乳腺の変化
その他(食事,肥満,HRT など)
疫 学
一般的事項(罹患率、死亡率、再発形式)
家族性乳癌
危険因子
その他( )
病 理
先天異常と発達異常
良性疾患
炎症
乳腺症
乳管内乳頭腫
乳頭部腺腫
腺腫
線維腺腫
葉状腫瘍
乳管拡張症
炎症性偽腫瘍
女性化乳房症
悪性疾患
非浸潤性乳管癌
非浸潤性小葉癌
乳頭腺管癌
充実腺管癌
硬癌
特殊型
Paget病
炎症性乳癌
男子乳癌
妊娠・授乳期乳癌
非上皮性腫瘍
病理組織悪性度の分類
バイオロジー
自然史
増殖・進展
ヘテロジェナイティ
ホルモンレセプター
癌関連遺伝子
検 診
集団検診
自己検診
診 断
間診と病歴の取りかた
視触診
病期分類
乳房画像診断(マンモクラフィ,超音波診断,サ一モグラフィ,CT,MRI)
骨シンチグラフィ
CT(乳房外)
MRI (乳房外)
超音波診断(乳房外)
腫瘍マーカー
細胞診
針生検
外科的生検
治 療
治療方針の適応決定
局所療法
手術
乳房切除術
乳房温存手術
リンパ節郭清
放射線療法
全身療法
化学療法
内分泌療法
治療効果の判定方法
薬物有害反応
リハビリテーション
緩和・終末期医療
医療倫理
インフォームドコンセント
クオリティオブライフ
カウンセリング
臨床試験
医療保障,医療経済
表2;乳腺認定医が経験しなければならない外科的事項
診療対象
A(件)
39以下
40~99
100以上
乳癌
□
10以下
11~50
51~100
101~200
201以上
B(確認)
思春期早発症
巨大乳房
副乳
陥没乳頭
乳汁漏出症
周期性乳房痛(月経依存性)
急性乳腺炎
肉腫
11~20
21~50
マンモグラフィ(乳管造影法を含む)
超音波診断
サーモグラフィ
乳管内視鏡
切開排膿術
腫瘤摘出術
再発巣切除
乳房再建術
乳房形成術
卵巣摘出術
植皮術
医療相談(カウンセリング)
■一般目標1 乳腺認定医としての医療技術、知識を基礎にし、さらに乳腺専門医として乳腺疾患の診療を実践できる医師を養成するための到達目標を定め、研修を実施する。認定施設における研修期間は、通算5年以上を必須とする。 1) 乳腺疾患全体を包括した専門医としての知識、臨床的判断能力、問題解決能力を習得する。 2) 各専門分野における診療を適切に遂行できる技術を習得する。 3) 医学、医療の進歩に合わせた生涯学習を行う方略、方法の基本を習得する。 4) 自らの研修とともに上記項目について後進の指導を行う能力を習得する。
■到達目標1(基礎的知識) 各専門分野の乳腺診療に共通して必要な下記の基本的知識を習熟し、臨床に即した対応ができる。 1) 解剖 正常乳房の組織像、乳房腋窩領域の解剖を理解している。 2) 乳腺の生理とホルモン環境 性周期と乳腺、妊娠・授乳期乳腺、加齢、肥満、ホルモン補充療法(HRT)、ピルなどによる 乳腺の変化に関する知識を習得している。 3) 疫学 乳癌の疫学に関する一般的事項(罹患率、死亡率、再発形式)、家族性乳癌、危険因子などに関する 最新のデータを認知している。 4) 病理 下記乳腺疾患のマクロ・ミクロの病理を理解し、画像診断との対比ができる。 (1) 先天異常と発達異常 (2) 良性疾患:炎症、乳腺症、乳管内乳頭腫、乳頭部腺腫、腺腫、線維腺腫、葉状腫瘍、 乳管拡張症、炎症性偽腫瘍、女性化乳房症、その他 (3) 悪性疾患:非浸潤性乳管癌、非浸潤性小葉癌、乳頭腺管癌、充実腺管癌、硬癌、 特殊型、 Paget病、炎症性乳癌、妊娠関連乳癌、非上皮性腫瘍、病理組織悪性度の分類、その他 5) バイオロジー 乳癌の自然史、増殖・進展、ヘテロジェナイティ、ホルモンレセプター、癌関連因子などの バイオロジーに関する最新の知見を習得している。 6) 検診 (1) 世界および我が国における乳癌集団検診の考え方と現状を把握している。 (2) 乳癌の自己検診法を理解している。
■到達目標2(基本的診療技術) 乳腺疾患の診療に必要な知識、検査、処置に習熟し、EBMに基づいた診療を行うことができる。 A.診断 1) 問診・病歴・視触診 乳腺疾患患者の問診・視触診を行うことができる。 2) 病期分類 乳癌取扱い規約およびUICCによる乳癌の病期分類ができる。 3) 画像診断 (1) マンモグラフィ:画像評価および読影(カテゴリー分類など)ができる。 (2) 乳房超音波検査、乳管造影、MRマンモグラフィ、乳腺CT、胸部CT、上腹部CT、 腹部超音波検査、骨シンチグラフィ、頭部CT、頭部MRI、骨MRI:適応を決定し、 読影することができる。 (3) 上記画像診断の各種検査法の特性を理解して検査計画を作り、総合診断ができる。 4) 腫瘍マーカー:適応を決定し、検査結果を評価できる。 5) 擦過細胞診・穿刺吸引細胞診、針生検、吸引式組織生検(マンモトーム)、外科的生検:適応 を決定し、結果を理解することができる。 6) センチネルリンパ節生検の実施方法と意義を理解している。 B.治療 1) 乳腺の良性疾患および悪性疾患に対して問診・視触診・画像診断などの結果に基づいた 適切な治療方針を決定することができる。 2) 乳癌に対する外科治療、放射線治療、化学療法および内分泌療法の役割を理解し、 それぞれの適応を決定することができる。 3) 乳癌に対する緩和医療の内容を理解し、適応を決定することができる。 4) 乳癌根治術後リハビリテーションの意義を理解している。 C.医療倫理など 1) 最新のEBMを検索し、その結果を臨床応用できる。 2) 患者側に診療方針選択の権利があることを理解し、適切なインフォームド・コンセントを得ることができる。 3) セカンドオピニオンを求めてきた症例に対し適切な説明を行うことができる。 4) 臨床試験の意義を理解し、参加することができる。
■到達目標3(専門的診療技術) 行動目標 下記の各専門分野別に乳腺疾患の診療内容を理解し、EBMに基づいた医療を実施できる能力を習得し、臨床応用できる。(外科の内容のみ記載)
<外科> 担当医として乳腺外科に包含される主要な疾患に対する診断と治療をもれなく経験することを必要とする。 1) 診療対象:下記の乳腺疾患の定められた症例数以上の診療経験を必要とする。 (1) 乳癌100例 (2) 乳腺症30例、線維腺腫20例、女性化乳房症5例 (3) 思春期早発症、副乳、乳管拡張症、乳汁漏出症、周期性乳房痛(月経依存性)、乳瘤、 急性乳腺炎、産褥乳腺炎、乳輪下膿瘍、乳管内乳頭腫、乳頭部腺腫、腺腫、葉状腫瘍、 Paget病、肉腫:これらの疾患について合計20例 2) 診断:下記の検査について定められた件数以上の診療経験を必要とする。 このうち、1つの項目について200例以上の経験を有しなければならない。 (1) マンモグラフィ:読影経験100例 (2) 乳房超音波検査:読影経験100例 (3) MRマンモグラフィまたは乳腺CT検査:読影経験30例 (4) 穿刺吸引細胞診:実施経験20例 (5) 針生検(または吸引式組織生検):実施経験10例 3) 治療:下記の治療法について定められた件数以上の経験を必要とする。このうち、乳房切除術、 乳房温存手術などの乳癌手術は、術者または指導者として100例以上経験しなければならない。 (1) 乳房切除術30例、乳房温存術30例 (2) 切開排膿術、腫瘤摘出術、再発巣切除術の合計20例 (3) 内分泌療法30例 (4) 化学療法30例 (5) 乳癌根治術が必要な患者を担当し、術前評価、術前管理、インフォームド・コンセント、 術後管理ができる。 (6) 乳癌術後リハビリテーションの患者への指導ができる。 (7) 乳癌に対する術前化学療法の適応を決定し、実施することができる。 (8) 乳癌術後の補助療法の適応を決定することができる。 (9) 乳癌術後の適切なフォロー・アップができる。
■到達目標4(生涯教育) 乳腺疾患診療の進歩に合わせた生涯教育を行う方略、方法の基本を習得する。 1)施設内の病理を含む各専門領域が集まる乳腺カンファレンスに出席し、それぞれの専 門的立場から意見を述べることができる。 2)施設内乳腺カンファレンスを司会し、積極的に討論に参加する。 3)最新のEBMを検索する能力を有し、個々の症例に合わせてEBMに基づいた診療を 行う。 4)学術集会、教育集会に参加し、日進月歩の医学、医療の実情に触れる。 5)学術集会、学術出版物に症例報告や臨床研究の結果を発表する。
■到達目標5(医療行政) 医療行政、病院管理(リスクマネージメント、医療経営、チーム医療など)についての重要性を理解し、実地医療現場で実行する能力を習得する。
★基本的な一般外科修練を終えた後(外科専門医取得めどが立った段階で)、乳腺専門コースに入れば、乳腺専門外来の担当、ならびに週1-2単位の病理診断研修をはじめ、希望に応じて他科専門医の直接指導研修のプランも考慮可能である。また将来的には国内関連施設間での他施設交流研修も計画中である。
日本乳癌学会認定施設 マンモグラフィ精度管理中央委員会認定施設 日本臨床腫瘍学会認定施設 高度先進医療実施施設 など
<臨床試験参加グループ> JCOG(日本臨床腫瘍研究グループ) JBCRG (Japan Breast Cancer Research Group) CSPOR(乳癌患者のQALY向上のための治療法開発支援事業) KBCSG-TR(近畿乳癌研究グループ) WJOG(西日本がん臨床研究グループ) KMBOG(Kinki Multidisplenary Breast Oncology Group:事務局) など