心臓弁膜症(心臓外科)
大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症(大動脈弁輪拡張症を含む)
大動脈弁は左心室と大動脈を隔てる弁であり右冠尖、左冠尖、無冠尖の三尖からなる。
狭窄症は血流通過口が狭くなり左室内圧が上昇し心負担をかける。収縮期圧較差が50mmHg以上で手術適応となる。閉鎖不全症は血流の逆流を認めることであり、高度逆流(Ⅱ~Ⅲ度以上)を認めれば手術適応となる。病因はリウマチ性、粘液変性、石灰化弁、動脈硬化、二尖弁、感染等である。治療法は人工弁置換術がほとんどであり可能であれば形成術を施行する場合もある。
僧帽弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁は左心房と左心室を隔てる弁であり前尖と後尖の2尖からなる。狭窄症は弁口面積が1.0cm2~1.5cm2以下になれば手術適応となる。閉鎖不全症は高度逆流(Ⅱ~Ⅲ度以上)を認めれば手術適応となる。病因はリウマチ性、粘液変性、石灰化弁、虚血性、感染等である。外科的治療法は人工弁置換術、弁形成術等である。
三尖弁狭窄症、三尖弁閉鎖不全症
三尖弁は右心房と右心室を隔てる弁であり前尖、後尖、中隔尖の三尖からなる。狭窄症は先天性心疾患に合併することが多い。閉鎖不全症は高度逆流を認めれば手術適応となる。治療法は弁形成術、置換術、弁輪縫縮術等である。
肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁閉鎖不全症
肺動脈弁疾患は基本的には先天性心疾患に合併することが多く頻度は稀である。治療法は弁作成術、切除術、弁置換術がある。
連合弁膜症
2つ以上の弁に狭窄もしくは閉鎖不全を有する場合であり、治療法は個々の弁膜症の治療法に順ずる。
感染性心内膜炎
抜歯、外傷、手術、麻薬・覚醒剤静脈注射等により血中に細菌・真菌が侵入し弁に付着・繁殖、弁破壊・疣贅形成をもたらす。弁破壊による心不全、菌血症による全身状態の悪化、疣贅剥脱による塞栓症(脳梗塞、心筋梗塞、腎梗塞、四肢塞栓症等)を引き起こす可能性が高い。抗生剤投与による内科的治療にて治癒することもあるが多くは緊急、準緊急下に手術(弁置換術、弁形成術等)を必要とする。
人工弁感染
人工弁置換術々後になんらかの理由で(感染性心内膜炎と同様の原因が多い)菌血症となり人工弁に感染をきたし弁離脱、疣贅形成等をもたらす。多くは緊急、準緊急下に手術(人工弁再置換術)を必要とする。
人工弁機能不全
血栓弁、人工弁破損により急激な心不全の進行を認めることが多く、大半は緊急手術の対象となる。ただし生体弁の自然劣化においては待機手術となる。治療は全て人工弁再置換術となる。