胸部大血管疾患(心臓外科)
胸部大動脈瘤
上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤、下行大動脈瘤、Valsalva洞動脈瘤
胸部の大血管に瘤が発生する疾患で3cm以上の最大短径を有する場合をいう。
ほとんどの医療施設では手術適応は5cm以上としている。病因は動脈硬化がほとんどであり他に、大動脈炎症候群、梅毒、感染、マルファン症候群等の先天性動脈脆弱等である。治療法は人工血管置換術である。
複合型大動脈瘤
複数の部位に大動脈瘤が存在する場合である。治療法はそれぞれに人工血管置換術を施行する。
急性大動脈解離、解離性大動脈瘤
なんらかの理由(動脈硬化、中膜の脆弱性等で大動脈中膜が裂け偽腔を形成する。発症部位による分類がありこれにより緊急手術の適応が決定される。治療法は人工血管置換術、血行再建術である。死亡率は高い。
DeBakeyの分類
Ⅰ型:上行大動脈領域に流入口があり解離腔が上行大動脈から腹部大動脈におよぶもの。
Ⅱ型:上行大動脈領域に流入口があり解離腔が弓部大動脈にとどまるもの。
Ⅲa型:下行大動脈への移行部領域に流入口があり解離腔が胸部大動脈にとどまるもの。
Ⅲb型:下行大動脈への移行部領域に流入口があり解離腔が腹部大動脈に及ぶもの。
Stanfordの分類
A型:上行大動脈に解離を認める。
B型:上行大動脈に解離を認めない。
分類上、DeBakey Ⅰ,Ⅱ型及びStanford A型が緊急手術の対象となる。他の形態は基本的には降圧・安静といった保存的療法が第一選択であるが血行再建術が必要になったり破裂を伴えばこれも緊急手術となる。上行大動脈に解離があっても急性血栓閉塞している場合は保存的治療となる症例もある。
大動脈瘤破裂
大動脈瘤が破裂した場合、突然死を招き病院搬送されても間に合わないことが多い。手術による救命率も悪く、救命しえても重症合併症にて遠隔期死亡することも、重篤な後遺症を残すことも多い。