病院について

病院機能評価について第3回 H20年4月(Version 5.0)認定

第3回 H20年4月(Version 5.0)認定

総括評価

貴院は、全国149の国立病院機構の中で11ある高度総合医療施設の1つである。現在、第三次救急、広域災害に対応する西日本災害医療センター、HIV/AIDS近畿ブロック拠点病院、がん、循環器病の基幹施設など多機能の活動に取り組んでいる。平成16年よりの独立行政法人化後は、職員の意識改革に努められ、とくに幹部職員が中心となり、経営意識の向上に意を注がれていることがうかがえる。 病院機能評価受審も3回目となり、これまでの経験を活かし医療の質向上に努められているところも多く確認された。今後も、全職員が高い目標を掲げ、病院の理念を実践し、名実ともに地域の基幹病院として、さらに発展されることを期待する。

  1. 1病院組織の運営と地域における役割

    病院の理念や年度運営方針などは適切に定められており、職員および患者への周知努力も適切である。国立病院機構の病院としてその役割の認識や診療機能の設定も適切である。中期計画については、組織的検討を経て策定されており適切であるが、職員への周知については、さらに工夫することが望まれる。現場スタッフの意欲は全般的に高く、病院幹部の適切なリーダーシップを反映したものと評価したい。病院組織の運営は、会議や委員会での検討を経て計画的に行われており適切である。情報伝達についても、会議やメールにより周知が図られている。情報管理については、診療データの有効活用の促進および効率化のため、情報収集と分析を一元的に統括する組織体制の構築が望まれる。法令遵守の状況は適切である。職員の教育・研修は、各部署などで個別のテーマに関して行う研修は積極的であるが、全職員を対象にした教育・研修については、今後の充実が期待される。院外の学会・研修への参加は、コ・メディカルの学会・研修参加を支援するような規程に見直し、予算の確保についても期待したい。医療サービス改善については、取り組み体制を強化し、さらに迅速・活発に業務改善に取り組むことが望まれる。地域との連携は、明確な方針が定められており、そのための組織体制および連携を促進するための仕組みもおおむね適切である。地域活動については、ボランティア活動、患者情報室の取り組みなどは優れた事例であり、高く評価したい。広報活動については、患者や地域住民向けの広報手段の強化を図り、さらに積極的に取り組むことが期待される。

  2. 2患者の権利と安全確保の体制

    患者の権利と医療者の職業倫理、臨床倫理、治験に関する倫理、臨床研究に関する倫理は組織的に検討され規程が明文化されており、遵守する仕組みもある。また患者・家族や職員にも院内掲示やホームページなどで周知が図られている。患者-医療者のパートナーシップは、患者の権利をはじめ、自己決定権、病棟におけるカンファレンスへの患者・家族の参加、患者用図書室の整備などに取り組まれており評価できる。説明と同意は方針や体制、手順が明確であり、セカンド・オピニオンの保証も明文化されている。診療記録の開示については体制が確立しており、手順も明確で適切である。

    患者の安全確保については体制・方針が明確であり、重大な医療事故の反省を踏まえた改善策が検討され実施されている。安全確保のための活動では、各職種間でインシデント・アクシデントの報告件数にばらつきが見受けられ、今後の一層の取り組みが期待される。

    病院感染管理は、感染状況の把握や対応手順の整備、感染予防策の実施などおおむね適切であるが、特別な抗菌薬の使用に関しての許可制や届け出制の実践、感染対策委員会の開催については今後の取り組みを期待したい。職員への教育活動、感染予防策の実施はいずれも適切と評価できる。

  3. 3療養環境と患者サービス

    接遇、応対への対応は、言葉づかいや身だしなみなど適切であるが、接遇教育を全職員に実施することが望まれる。担当者名や責任者の紹介は適切に行われている。掲示物には文字が小さいものが一部見受けられるので高齢者等に配慮した対応が望まれる。

    外来待ち時間への対応は、待ち時間の表示やポケットベルの利用など適切に配慮されている。
    相談機能は担当者が決められ相談スペースも確保されており、経済的・社会的・心理的な三側面からの相談を多数受けている。また院内スタッフとの連携が図られおおむね適切であるが、窓口の案内を入院案内に掲載するなどさらに患者が利用しやすいよう対応を検討されたい。

    患者・家族の意見の尊重については、意見や苦情に対処する手順や満足度調査の実施、改善活動などおおむね適切と評価できる。

    患者や面会者の利便性、バリアフリーは新旧混在する建物構造上やむを得ないものを除いて、おおむね配慮されている。

    プライバシーの確保はおおむね適切であるが、病室ドアの開放などには留意されたい。療養環境の整備体制は確立している。患者が使用する設備・備品も整備されているが、病棟の階段に手摺りが設置されていないところがみられるので配慮が望まれる。禁煙への取り組みは、敷地内禁煙の方針を明確にされているが、職員に対してもより積極的な禁煙教育が望まれる。

  4. 4医療提供の組織と運営

    診療部門は基本方針や診療科の目標も明確で、体制も確立しており適切である。業務上の指針・手順も明確で、教育・研修、治療実績や研究業績も豊富であるが、個々の医師の評価と症例データベースを活用した診療情報のさらなる活用を期待したい。

    看護部門は理念・目標が明確であり、それを実行できる環境づくりにも取り組まれており評価できる。管理体制も委員会や会議の定期的開催や業務規程の整備など適切である。また、専門能力を活かした人事配置、精神的・技術的支援がプリセプターを中心に病棟全体に実施されている。教育・育成にも力を注ぎ、看護基準・手順も整っており評価できる。

    薬剤部門は体制が整い、薬剤の保管・管理も適切である。調剤も適切に行われ、とくに病棟における注射薬の調製・混合は移動式クリーンベンチなどを使用して適切に行われている。薬歴管理や服薬管理指導、副作用情報の収集にも積極的に取り組んでいるが、院外処方箋の鑑査について検討が望まれる。臨床検査部門は体制が整備され、おおむね適切に運営されているが、緊急検査のあり方について検討が期待される。病理部門と輸血・血液管理部門は体制が整備され、適切に運営されている。

    画像診断部門、放射線治療部門、手術・麻酔部門は必要な人員が確保され、適切に運営されている。中央滅菌材料部は清汚動線の交差があるので、感染防止に十分配慮し運用されたい。集中治療室の運営は適切である。救急部門は、三次救急としての役割・体制が明確になっており評価できる。また、脳死下臓器摘出施設としての実績もあり、臓器移植の適切な手順も整備されている。栄養部門、図書室機能はいずれも体制が確立し適切に運営されている。

    診療録管理部門は、必要な人員を確保するとともに、教育・研修についても取り組まれたい。訪問サービスは実施しないという方針であるが、地域との連携は適切に行われている。外来部門は体制が確立しており、診療・看護が安全・確実に実施されているが、外来診療録の記載の充実が望まれる。

  5. 5医療の質と安全のためのケアプロセス

    病棟における医療の方針と責任体制については、診療・看護の基本方針や目標が明確であり、臨床における倫理的問題にも適切に対応している。入院診療の計画的対応は入院目的の記載や入院診療計画書の作成も適切に行われている。患者に関する情報の収集と伝達、評価(アセスメント)と計画については、電子カルテを用いて必要な事項の情報収集や指示出し・指示受けなど確実に情報伝達が行われる手順が確立しており、評価できる。ケアの実施では、基本的身体ケア、心理的・社会的支援、診断的検査、投薬・注射、輸血・血液製剤などの投与、手術・麻酔の実施、栄養管理と食事指導などは適切に行われている。

    身体抑制は適用基準に基づいて適切に行われているが、抑制中の観察記録は変わりがない場合であっても観察の都度、記録することが望まれる。緊急時の対応、療養の継続性の確保、終末期ケア、逝去時の対応もおおむね適切である。

    ケアプロセスにおける感染対策はおおむね適切であるが、特別な抗菌薬の使用は届出制や許可制などとすることについて検討されたい。

    診療・看護の記録は適切に記載されているが、診療録の組織的評価に対する取り組みが望まれる。看護記録の監査は適切である。病棟における環境と薬剤や機器の管理はいずれも適切に行われている。

  6. 6病院運営管理の合理性

    人事管理は法定人員、施設基準の必要人員は満たしているが、診療情報管理士、臨床工学技士、MSW、言語聴覚士など一部の職種については充実が望まれる。職員の労働安全衛生への取り組みは、健康診断の実施、事故防止対策など評価できる。

    財務会計は、病院会計準則に基づいた会計処理、予算管理、資金管理など適切である。経営管理は、部門別原価計算などを行い、経営状態のさらなる把握が望まれる。医事業務はおおむね適切に行われているが、未収金の回収努力を望みたい。

    施設・設備管理は、医療ガスの安全管理、給食部門の衛生管理、感染性廃棄物の処理など適切に行われている。医療機器の管理は、臨床工学技士の充実を図り、保守・点検などの整備体制のさらなる強化を期待したい。物品管理は適切に行われている。

    業務委託は、委託業者の選定手続き、契約方法などは適切であるが、受託業者側での従業員教育の実施確認および院内教育の実施が望まれる。

    病院の危機管理への対応は、院内の災害発生時の対応はもちろん大規模災害発生時における西日本災害医療センターであり、「防災拠点病院」として十分機能する体制が整備されており評価できる。訴訟などが発生した場合の対応については、適切に対応できる体制が整備されている。