臨床研究について

がん療法研究開発室

がん療法研究開発室 平尾素宏室長


がんが日本人の死因のトップとなって久しい。国立がん研究センターのがん情報サービスによれば、2019年の年間がん罹患数は99万人を超え、2021年のがんによる死亡者数は約38万人と報告されている。最近、がん免疫治療法が脚光を浴び、臨床の場において使用され、その評価が明らかになってきたが、すべてのがんに効果があるわけではなく、がんに対する有効な治療法の開発の重要性は依然変わっていない。

免疫治療を含め従来の多くのがん治療法の有効性は、症例ごと、施設ごとの経験から得られたものであり、複数施設における大規模な臨床試験による治療効果の検証が必須となっている。そのような状況において、現在、がん治療成績向上を目的として科学的根拠に基づいた効果的ながん治療法の開発が求められている。さらに、発がん、増殖、転移といったがん自体やそれに伴う病態に関わる遺伝子や蛋白、糖鎖といった数多くの分子の異常が報告され、これらの分子の特徴や機能が新しいがんの診断法や治療に応用され、個別化医療やオーダーメイド医療という語に代表されるような各個人のがんの種類や病態の特徴に応じた医療が進められつつある。実際、2019年よりがん遺伝子パネル検査が保険診療可能となった。

本研究室では、このような最新の基礎研究や臨床研究によって得られた成果を利用した科学的根拠に基づいた新しい癌治療法の開発を目的として、がん細胞やがん組織を用いた基礎的研究から科学的根拠を確実にするための全国規模の多施設共同臨床試験への参加、自主的臨床試験研究の企画を進めている。特に、新たながんの診断や治療戦略の開発をめざし、外科手術時などに得られたがん組織を利用してがんにおける分子異常を探り、それに基づいた臨床において利用できる医療技術や医薬品として確立することを行う目的とした研究(橋渡し研究、トランスレーショナルリサーチ)を行っている。
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