医療情報研究室
医療情報研究室 松村泰志室長
医療情報研究室では、医療へのIT 応用に関するソフト、ハードの両側面の研究を行っている。病院において実稼働している病続情報統合システムを用いた研究、病院情報システム 本体の機能拡張に関する独自の研究を実施する一方、治験・臨床研究や医療安全に関する システム的検討、シミュレーションや統計などの情報科学の医療応用に関する研究を行っている。また、ネットワーク技術や画像処理技術の応用・改良など、情報処理の基盤技術 に関連した研究も行っている。早急に実用化することを求められている災害時の国内標準 電子カルテについて、あるいはFHIR、SS-MIX、SS-MIX2、MML、openEHRといった標準規格を通して異なる 電子カルテシステム間のスムーズな連携についても研究を行なっている。
国内で行なわれている医療機関間のデータ共有に関する主要な研究プロジェクトのうち代表的な2つのプロジェクト、すなわち、国立病院機構の「電子カルテデータ標準化等のためのIT基盤構築事業」、および大阪大学が主導する「病院情報システムデータを利用した横断的研究基盤構築に関する研究」、に参加している。
さらに、がん登録関連の研究として、「大阪がん診療実態調査」、「癌診療きんてん化のための臨床情報データベース構築と活用に関する研究」、「新型コロナウイルス感染症がリアルワールドのがん診療に及ぼした影響:癌登録を基礎とした調査」に参加している。2014年1月より実用化された救命救急外来経過表は、救命救急外来の診療速度についてける国内で最も進んだ電子カルテとして大きな注目を集め、東京大学、京都大学、沖縄中部病院、国立病院機構名古屋医療センター、松波総合病院など、国内の一流研究・医療機関より見学を受け入れた。2020年1月に更新した電子カルテシステムは、システムの応用範囲が広くなり、データ利用についても 多彩な可能性が考えられる。2022年にはこれに加えて入院患者の急変予測を可能とするRapid Response Systemを実用化した。
2013年度は災害医療研究室と共同で厚労省指定研究「南海トラフ巨大地震の被害想定に対するDMATによる急性期医療対応に関する研究」においてGISの技術を用いたDMAT被災地派遣支援ソフトウエアの開発を行い2014年度に報告書を上梓した。引き続き災害関連の研究として2015年度より厚労省指定研究「首都直下地震に対応したDMATの戦略的医療活動に必要な医療支援の定量的評価に関する研究」を2年間行なった。南海トラフ地震への医療支援に関してはその後も継続的に研究に参加しており、2016年度厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)分担研究「南海トラフ地震に関する研究」に共同研究者として参加し、2017年度,2018年度も引き続き共同研究者として参加した。
医療情報学会において2017年に「災害・救急医療へのユーザーメードITの貢献」、2018年には「医療の質向上に貢献する診療支援システムとその効果分析」というテーマでワークショップを主催した。
2019年には災害時の療養病床の支援について研究を行なった。2020年秋の医療情報学連合大会では、「COVID-19パンデミック対策としての広域および医療機関内情報システムの検討」というタイトルでワーショップを主宰した。
2021年秋の医療情報学連合大会には「COVID-19パンデミックに対し、広域情報システム、単独医療機関の情報システムはいかに 貢献したか」というタイトルでシンポジウムを主宰した。2022年は「RRSへの臨床現場への対応―病院情報システムを用いた診療補助の可能性―」というタイトルでワークショップを主宰した。今後も医療情報学会、災害情報学会などで発表を予定している。