高度医療技術開発室
高度医療技術開発室 上田恭敬室長
近年における医療を取り巻く情報処理や画像処理の技術革新により、診断、治療における医用画像診断装置の利用範囲は拡大しており、著しいイノベーションを引き起こしている。昨年より新型コロナウイルスの世界的パンデミックによって我々の生活や産業構造は大きな変革を余儀なくされた。そのような変革の中で画像が果たす役割は大きくなってきている。遠隔モニタを用いた遠隔診療などはさらに推進されていくであろう。診断技術に関してもAIなどのサポートを受けながら今まで以上に向上していくものと考えられる。本研究室ではこれまでにない新しい医療技術開発の基盤を構築していく。
平成24年度より循環器系研究室員を配置し、医用画像診断装置の技術開発を大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻機能診断科学講座とともに推進した。
平成27年度より、院内臨床症例(特に心房細動症例、大動脈弁狭窄症症例)の心臓超音波画像解析も並行して推進した。
平成29年度は、院内臨床症例で僧帽弁輪石灰化、大動脈弁石灰化をCT画像から解析し、心臓超音波画像と組み合わせて解析することによって、冠動脈石灰化のリスク層別化が可能であること。また心エコー検査と生体インピーダンス分析を併用することによって心不全患者の再入院リスク層別化が可能であることを報告した。(AHA2017、ACC2018)
平成30年度は、昨年のCT画像検査、心エコー検査に関する研究を進め、それぞれ報告を行った。(AHA2018)この研究が、心エコー図学会に認められ海外発表優秀論文賞を受賞した。
平成31年度(令和元年)は、大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学において多施設で実施している心不全レジストリ登録を行っているデータから、心エコーによるうっ血の指標をスコア化し、層別化することによって心不全患者の予後を予測することを報告した。(AHA2019)さらに、尿検査の結果から心不全患者の予後が予測可能であることも報告した(ACC2020)。
令和2年度は、心臓リハビリテーションにおいて、心不全患者の栄養状態と身体活動性が生命予後に影響していることを報告した(ESC Heart Fail 2020;7:1801-1808)。
令和3年度は、COVID-19パンデミックの影響もあったが、心エコー検査の簡便な指標を用いて、収縮の保たれた心不全患者の予後予測が可能であることを報告した(JACC Asia 2022;1:73-84)。
令和4年度は、COVID-19ワクチン関連劇症型心筋炎の報告(EHJ Case Reports 2022 doi:10.1093/ehjcr/ytac290.)を行うとともに、AMED医工連携イノベーション推進事業で「人工知能による心不全患者胸部レントゲン画像診断支援」に関する提案を行い、企業と連動して医療技術開発を進める準備段階に入った。
メンバー
室長 松村泰志室員 安部晴彦