臨床研究について

レギュラトリーサイエンス研究室

レギュラトリーサイエンス研究室 松村泰志室長


レギュラトリーサイエンスは、科学技術の成果を人と社会に役立てることを目的に、根拠に基づく的確な予測、評価、判断を行い、科学技術の成果を人と社会との調和の上で最も望ましい姿に調整するための科学とされています。また、レギュラトリーサイエンスは、的確な予測、評価、判断によって①限りなく進歩する科学技術を正しく生かして有効に利用する最善の道を見出すことと、②人間の願望から出発した科学技術が、社会や人間を無視して発達することによってもたらされる深刻な影響を未然に防ぐこと、の二つの大きな目的/役割を担っています。当研究室は、レギュラトリーサイエンスの考えに基づき、臨床現場での薬剤・医療機器や技術等の使用を評価するための手法の構築を目的として平成23年に設立されました。

臨床研究は、開発された薬剤や医療機器を始めて人に適応し、その効果を評価するような臨床試験と、既に市場に出された薬や医療機器について、実臨床の場で改めて有効性、安全性を評価したり、適用範囲を再評価したりする等のことを目的とした観察研究に分かれます。臨床試験の進め方については、これまで多くの議論がされ、一定の方法が確立されてきています。一方、観察研究については、電子カルテの普及により可能性が広がっている一方で、個人情報の取り扱いルールが国ごとに違いがあり、その方法が定着している状況にありません。特に、我が国においては、現在は、診療情報を要配慮個人情報として厳しく利用を制限しており、観察研究の実施を困難にしており、見直しすべき状況にあります。そこで、観察研究について、適切なレギュレーションはいかなるものであるかを、内閣府の規制改革委員会でのWGに参加するなどして検討を進めています。

また、今日では、患者中心との概念が重視され、個人の医療への参画の必要性が唱えられています。現在では、スマートフォンが普及してきており、患者自身が自分の診療記録を管理するシステムが技術的には可能となってきており、海外では既に利用されている国もあります。こうしたシステムが導入されると、自分の診療情報を日頃の健康管理に役立て、初めての医療機関を受診した場合でも適切な医療が受けられるようになることに加え、患者自身による臨床研究の参画も可能となってきています。これにより、これまで難しかった長期予後をアウトカムとした研究が実施しやすくなり、より患者の利益となる薬や医療機器の開発につながる可能性があります。また、個人の意思が確認しやすくなりますので、同意の取り方についても、これまでより進んだ方法が考えられます。

当研究室では、こうしたテーマについて取り組んでいます。

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