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胆嚢がん(消化器科外科)

胆嚢がん(消化器科外科)

 1.胆嚢がんとは

胆嚢は右上腹部に位置し、肝臓と十二指腸をつなぐ胆管の途中にある袋状の臓器です(図A)。胆嚢には、肝臓から分泌された胆汁という液体が貯まり、食後に胆嚢が縮むことによって胆管を通って十二指腸に胆汁が流れ、消化の役割を担っています。
胆嚢癌はこの胆嚢と胆嚢管から発生する悪性腫瘍で、我が国の全悪性腫瘍の約1.6%を占め、女性に頻度が高く(男性の1.5 ~2倍)、60才代に多くみられます。また主な発生原因として以下のような推測がされています。

・胆石症

胆嚢癌の症例には40~70%の割合で胆石を合併することが分 かっていますが、胆石症においては胆嚢癌の発生率が1~5% (無症候 胆石では1%)といわれています。これは慢性炎症や 胆汁成分の変化が発生の原因と考えられています。

・膵胆管合流異常症

胆管は十二指腸に入る直前に膵管と合流しますが、この部分に 先天的に異常があると本来小腸へ流れるはずの膵液が胆嚢に逆 流して癌 化に関与するといわれています。
胆嚢癌は、早期癌では無症状であり、進行癌になって初めて症状が出るので見つけるのが難しい腫瘍ですが、近年の健康診断や人間ドックでの腹部超音波検査(エコー)の普及で発見される頻度も向上してきています。

 2.病期(ステージ)

胆嚢癌の進行の程度を示すもので、治療方法の決定や今後の病状経過の推測をすることが出来ます。リンパ節は胆嚢に近い順に1,2,3と分類され,4群が胆嚢から最も離れたリンパ節です。

・0期・Ⅰ期

癌組織が胆嚢の中にとどまり、リンパ節や周囲の肝臓や胆管への浸潤が ない初期の癌です。

・Ⅱ期

癌組織が胆嚢の周囲に一部拡がっている状態。近傍のリンパ節(1群) の転移や肝臓や胆管への広がりが疑われる症例を含みます。

・Ⅲ期

癌組織が胆嚢の周囲に中等度に広がり、リンパ節(2、3群)の転移や 肝臓や胆管への広がりが明かな症例を含みます。

・Ⅳ期

癌組織が胆嚢の周囲に高度に広がり、リンパ節(4群)の転移や肝 臓や胆管への広がりが高度な症例や腹膜などへの転移を伴う症例を含みます。

 3.症状

早期癌では症状はありません。進行癌でも、胆嚢癌特有の症状というのはなく、他の胆嚢の病気(胆嚢炎、胆石発作など)と共通する以下のような症状です。

・腹痛

上腹部、特に右側、時に背中の方に痛みが出現します。

・黄疸

皮膚や眼瞼結膜(いわゆる白目)が黄色くなったり、尿の色が濃く茶色 っぽくなります。皮膚がかゆくなることもあります。黄疸が強いときは 便が灰色―白っぽくなることがあります。

・腹部腫瘤

右上腹部にしこりを触れることがあります。
その他、発熱、食欲不振、体重減少など他の病気でもみられる症状があります。

 4.診断

胆嚢癌の進行の程度を示すもので、治療方法の決定や今後の病状経過の推測をすることが出来ます。リンパ節は胆嚢に近い順に1,2,3と分類され,4群が胆嚢から最も離れたリンパ節です。

・0期・Ⅰ期

癌組織が胆嚢の中にとどまり、リンパ節や周囲の肝臓や胆管への浸潤が ない初期の癌です。

・Ⅱ期

癌組織が胆嚢の周囲に一部拡がっている状態。近傍のリンパ節(1群) の転移や肝臓や胆管への広がりが疑われる症例を含みます。

・Ⅲ期

癌組織が胆嚢の周囲に中等度に広がり、リンパ節(2、3群)の転移や 肝臓や胆管への広がりが明かな症例を含みます。

・Ⅳ期

癌組織が胆嚢の周囲に高度に広がり、リンパ節(4群)の転移や肝 臓や胆管への広がりが高度な症例や腹膜などへの転移を伴う症例を含み ます。

 5.治療

胆嚢癌の治療の基本は手術療法で、手術適応のないⅣ期の症例に対して全身状態を考慮した上で化学療法を行います。また症状を緩和する対症療法として黄疸軽減のためのドレナージ(胆嚢や胆管に管を入れて黄疸の原因である胆汁を体外に出す)やステント留置(癌組織のため細くなっている総胆管を広げて筒状の人工胆管を入れる)、薬剤による疼痛コントロールなどを行います。

・早期癌(Ⅰ期)

早期癌の中でもごく初期の粘膜内(図B参照)に癌細胞がとどまる場合は、手術で単純胆嚢摘出術だけで根治します。固有筋層(図B参照)に達する場合は胆嚢摘出術+リンパ節郭清を、癌の広がり具合で場合によって肝臓の部分切除を合わせて行うことがあります。

・進行癌(Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ期)

Ⅱ、Ⅲ期と一部のⅣ期の症例で胆嚢摘出術+リンパ節郭清+肝臓の部分切除を合わせて行います。また周囲の臓器(胃、十二指腸、膵臓、大腸など)を合わせて切除することもあります。高度に進行したⅣ期では手術が不可能で、全身の状態によって抗癌剤を投与する化学療法を行います。化学療法は内服薬、点滴、動脈留置チューブ内投与などの方法があり、投与方法、薬剤の種類などによって入院または外来治療で行います。他の重篤な疾患があったり、全身の状態がよくないなど化学療法に耐えられない症例では、疼痛コントロールなどの症状緩和を目的とした対症療法を行います

 6.一般的な予後

病期毎に手術など治療を受けた症例の生存率が明らかになっています。Ⅱ期以上の進行癌は0、Ⅰ期に比べ、治療成績はよくありません。

0、Ⅰ期:

切除後5年生存率 90%以上

Ⅱ期:

切除後5年生存率 35~45%

Ⅲ期:

切除後5年生存率 15~20%

Ⅳ期:

切除後5年生存率 5~7%

 7.予防と検診

胆嚢癌は上記のように症状が出にくく、発見が難しい癌の一つです。40才を越えたら、人間ドックや健診などで、年に一回の腹部超音波検査による定期検診を心がけましょう。また胆石症、胆嚢ポリープのある方はかかりつけ医での定期的な経過観察と必要時の治療を受けましょう