糖尿病・内分泌内科
基本診療方針
- 糖尿病の診断から治療、合併症管理に至る全領域に対し、全科的に連携して全力で対応しています。
- 2型糖尿病に対する教育入院、強化インスリン療法・GLP-1受容体作動薬の導入に力を入れています。
- 1型糖尿病センターでは、チーム医療で1型糖尿病患者のトータルサポートを行っています。(通院1型糖尿病患者数は180人以上)
- 先進糖尿病治療デバイスの普及・正しい知識(使い方)の啓発に力を入れています。
- CSII(インスリンポンプ療法)/SAP(Sensor Augmented Pump)療法/リアルタイムCGMの導入に力を入れています。(外来導入も可能)
現在までに100名以上のSAP・CSII導入を行い、全国トップクラスの導入実績を誇ります。当院1型糖尿病センター通院患者の6割以上がCSIIまたはSAP療法を行っています。
- 内分泌疾患、特に原発性アルドステロン症の積極的なスクリーニング検査を行い、確定診断を目指しています。
- 病診・病病連携に積極的に取り組んでいます。
大多数を占める2型糖尿病に関して、検査・治療・教育の3本立てのプログラムで対応しています。糖尿病関連の検査では、インスリン抵抗性の評価、頚動脈エコーによる動脈硬化の評価、血圧脈波による下肢血行動態の評価などを併用して、糖尿病の代謝動態および合併症進展の総合的把握にあたっています。
糖尿病の治療では、特に血糖コントロール不良例には強化インスリン療法を積極的に導入し、日本人の2型糖尿病の特性を考慮した治療を施行しています。腎症合併例には低蛋白糖尿病食の指導と血圧の管理を行っています。壊疽や閉塞性動脈硬化症の合併例には、皮膚科、形成外科、循環器科、心血管外科と連携して治療に当たっています。
糖尿病教育では、年3回の外来糖尿病教室と教育入院を実施しています。教育入院は2週間のクリティカルパスを基本としていますが、時間をとりにくい場合には入院日数の相談に応じています。
2013年に開設した1型糖尿病専門外来(現 1型糖尿病センター)(毎週火曜日・第2.4木曜日) 1型糖尿病センターでは、自身も13歳で発症した1型糖尿病患者である医師をリーダーに管理栄養士・糖尿病認定看護師と協力し医師診察前に血糖測定器からの血糖自己測定のデータやSAP療法のデータを直接パソコンに取り込み、データを解析し曜日や時間帯別による血糖変動の特徴やインスリンポンプの使用状況を把握し食習慣・カーボカウント指導などを含め患者さんと日常生活を振り返り、血糖コントロールの改善点発見に努めています。その後診察室に入っていただき、患者、管理栄養士または看護師、医師の3者で次回外来までの方針を話し合います。管理栄養士または看護師の介入を希望されない場合は、通常の医師の診察のみで対応しています。
またインスリンポンプやSAP療法導入,外来CGM検査にも積極的に取り組んでいます。インスリンポンプやSAPの有効な活用を学ぶには入院導入がお勧めですが、入院が難しい患者さんには、外来導入も行っています。
具体的には
- 1型糖尿病を発症して間もない方(同じ病気をもつ患者さんが集まる外来に通院希望のある方)
- インスリンポンプ療法やSAP療法、リアルタイムCGM導入希望の方(インスリンポンプからSAPへ切り替え希望の方)
- インスリンポンプ療法やSAP療法、リアルタイムCGMに興味があるが、導入に不安で相談したい方
- 今まで小児科に通院していたが内科への転科を勧められている方
- 合併症が出現しはじめ、今後総合病院での通院を希望される方
- 2型糖尿病と区別し、1型糖尿病センターで診てもらいたい方
- 現在の通院先で血糖コントロールが不良で相談したい方
- 外来でCGMを使用し血糖値の日内変動を観察したいが、現在の通院先で検査ができない方。
- 1型糖尿病と初めて診断され、入院加療が必要であるが入院施設を迷っている方(すでに入院されている方でも外来で相談の上、転院を受け付けます)。
(注)現時点では外来枠や医療スタッフの人員に限りがあるため、緩徐進行型1型糖尿病(SPIDDM)の方は、1型糖尿病センター外来枠ではなく当科の通常外来枠での診察となる場合がございます。
診療患者数について
2019年度(2019年4月~2020年3月)の当科主観の入院患者数は455名、平均在院日数は13.2日で、糖尿病患者の精査・加療がメインではありますが、当院の特徴である1型糖尿病の入院患者数が46名(うち半数以上が、CSII(インスリンポンプ療法)/SAP(Sensor Augmented Pump)療法/リアルタイムCGMの導入目的の入院)、また下垂体・副腎疾患(内分泌疾患)の精査・加療目的の入院患者数も増えてきております。また、当科共観の入院患者数(手術前後の血糖コントロール、内分泌疾患疑い患者の精査)は450名以上で、院内の様々な科に入院されている患者の糖尿病治療や内分泌疾患も担当しております。
2019年度実績(2019年4月~2020年3月の当科主観の入院患者内訳)
内分泌疾患について
~特に二次性高血圧症(特に原発性アルドステロン症)、副腎および下垂体疾患について~
血圧が120/80㎜Hgを超えて高くなると脳疾患病、慢性腎臓病などにかかる確率や死亡する確率が高くなることが知られています。2016年の国民健康・栄養調査によると、我が国の高血圧有病率(収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90㎜Hg以上、または降圧薬内服中)は40-74歳で男性60%、女性41%、75歳以上では男性74%、女性77%と報告されており、高血圧患者数はおおよそ4300万人と推定されています。日本人高血圧患者の85-90%は、原因がはっきり分からない本態性高血圧症といわれており、元々高血圧になりやすい体質や、塩分摂取過多、肥満、過度の飲酒、運動不足、ストレス、喫煙などが原因で発症するとされています。一方、二次性高血圧症(日本人の高血圧患者の10-15%)とは、特定の原因(ホルモン分泌異常、腎臓病、薬剤)などが原因で起こる高血圧症であり、この二次性高血圧症の中でも特に重要な疾患として原発性アルドステロン症があります。
【 図:わが国の高血圧有病者、薬物治療者、管理不良者などの推計数(2017年)】
高血圧有病者 4300万人
血圧140/90mmHg以上の国民 3100万人
有病者、治験率、コントロール率は2016年(平成28年)国民健康・栄養調査データを使用。
人口は平成29年推計人口。認知率はNIPPON DATA2010から67%として試算。
高血圧有病は血圧140/90mmHg以上または降圧薬服薬中、コントロールは140/90mmHg未満
降圧薬服薬中“または降圧薬服薬中コントロールは140/90mmHg未満。”
原発性アルドステロン症は、副腎という臓器からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌されることが原因で起こります。このホルモンは、体内の塩分を増やす働きがあるホルモンであり、そのため血圧が上昇します。原発性アルドステロン症の患者では年齢や血圧が同じくらいの本態性高血圧症の患者に比べて、脳卒中、冠動脈疾患、心肥大、心不全、心房細動などを合併する頻度が高いことが報告されており、このことからも積極的に原発性アルドステロン症を疑い、診断し、治療を行うことが重要であると考えられます。また糖尿病と原発性アルドステロン症の関連も報告されており、当科では原発性アルドステロン症の積極的なスクリーニング検査を行い、確定診断を目指しております。
その他、クッシング症候群や褐色細胞腫、副腎皮質機能低下症、副腎偶発腫瘍(健診などのCT検査で偶然指摘された副腎腫瘍)や下垂体機能低下症などの疾患の精査・加療も積極的に行っております。
<原発性アルドステロン症(副腎偶発腫瘍)の具体的な検査入院日程例:月曜入院、木曜or金曜退院>
- 月曜日 入院 ABI/PWV、心電図(、必要であれば心エコー)
(事前のCT検査で副腎腫瘍ありの場合、23時にACTH/コルチゾールの採血(日内変動チェック)) - 火曜日 生理食塩水負荷試験(4時間の検査)
- 水曜日 フロセミド立位試験(2時間の検査)
- 木曜日 カプトプリル試験(90分の検査)、頸動脈エコー
(事前のCT検査で)副腎腫瘍ありの場合、1㎎デキサメタゾン抑制試験) - 金曜日 退院
CSII療法/SAP療法・CGM検査について
CSII療法(インスリンポンプ療法)とは
インスリン分泌の枯渇した1型糖尿病患者さんでは、基礎のインスリン分泌も失われており、これが夜間から明け方にかけて血糖値の上昇を引き起こす(暁現象)。また眠前中間型・持効型インスリン注射では夜間の低血糖、その後の高血糖を引き起こす可能性がある(ソモジー効果)。これらの不安定な血糖コントロ-ルを引き起こす基礎インスリン分泌の調節をCSIIでは、超速効型インスリンを小型のインスリンポンプを使用し微量ずつ持続的に皮下注入し、より個々人にあった基礎インスリンの補充を可能とし、血糖コントロールの安定化をもたらします。(時間あたりの基礎インスリン注入量をCSII本体にプログラムできます)当院1型糖尿病センターリーダー医は、自身が13歳発症の1型糖尿病患者でもあり2008年よりCSII療法を自身で実践しCSII療法を熟知しています。現在SAP療法に移行。
(ミニメド 620G日本語対応インスリンポンプ)
SAP療法(Sensor Augmented Pump療法)とは
リアルタイム CGMセンサー(①,②)を体につけることにより、インスリンポンプ本体(③)に血糖値の目安となるセンサグルコース値が常時表示されます(下記装着イメージ参照)。自身のセンサグルコース値が常時表示されるため、インスリン注入量(追加インスリンや基礎インスリン)の設定・調節が容易にできます。自身の設定したセンサグルコース値の範囲を超えた場合に、インスリンポンプ本体がアラームや振動で警告してくれます。また最新のSAP療法(640Gシステム)は、センサグルコース値変動から低血糖を予測し、自動的に基礎インスリン注入を停止することで低血糖を予防する機能をもっています。
CGM(持続グルコースモニタリングまたは皮下連続式グルコース測定)とは
皮下組織にセンサーを穿刺して、間質液中のグルコース濃度を連続的に測定し(10秒ごとに測定し5分ごとの平均値を記録する)、この値を血糖自己測定の値で補正(較正)することにより間質液中のグルコース濃度を血糖値に近い値(センサグルコース値)に換算する。結果5分ごとのセンサグルコース値を連続的に観察できます。現在は6日間の記録が可能となっています。センサーを取り外した後の解析であり、リアルタイムではセンサグルコース値を把握できません。
当院では、臨床検査科とも連携しこの検査をおこなっています。
(Medtronic iPro2)
CGM検査結果の実例
当院40代の1型糖尿病患者さん CSII療法 HbA1c 6.1 % 外来での装着
リアルタイムCGMについて
現在リアルタイムCGMは、急性1型糖尿病と劇症1型糖尿病患者のみに保険適応となっています。当院で現在採用している機器は、専用のモニターが付属の Dexcom G4PLATINUMと と携帯端末がiphoneと一部のAndroidの人が使用できるガーディアンコネクトです。
DexcomG4 PLATINUMとは
患者さんがご自身の血糖状況(グルコース値)を付属の専用モニターで確認できるリアルタイムCGMです。MARD:Mean Absolute Relative difference(平均絶対的相対的差異):10%以下*)と報告され精度の高いリアルタイムCGMと評価されています。
*)FDAより承認済医療機器につき公表される”SUMMARY OF SAFETY AND EFFECTIVENESS DATA”のPMA Number:P120005/S018およびP120005/S031に記載
ガーディアンコネクトとは
患者さんがご自身の血糖状況(グルコース値)をご自身のモバイル機器(現時点ではi phoneと一部のAndroidのみ対応)で確認し、そのデータを家族・保護者などと速やかに共有したりすることができる、アラート機能と遠隔モニター機能の付いたリアルタイムCGMです。