診療科・部門

下部消化管疾患

下部消化管疾患全般について

よりからだに優しい治療をめざして

下部消化管外科を担当するスタッフは、加藤健志・高橋佑典・河合賢二・徳山信嗣の4名+肛門外科 宮崎道彦(非常勤)です。加藤は大腸肛門病学会の専門医・指導医で、他のスタッフも大腸がんの診療経験が豊富で、阪神地域では最も充実したスタッフに恵まれています。全ての大腸がんの診断から治療までを行っていますので大腸がんが見つかれば、検査が揃っていなくてもご紹介ください。私たちのグループが責任を持って診療にあたります。宮崎も大腸肛門病学会の専門医・指導医で肛門疾患の診療経験が豊富です。

下部消化管グループの特色をご紹介します。

  1. 現在ほとんど全ての大腸がん手術が腹腔鏡手術たはロボット手術となっています。本院での全ての大腸癌手術は日本内視鏡外科学会の技術認定医、またはロボット支援手術プロクターが担当します。早期がん・進行がんだけでなく、再発がんや再手術症例に対しても積極的に腹腔鏡手術、ロボット手術を行っております。また、臍部の約2.5cmの創からすべての手術を行う単孔式大腸切除術も採用しています。
  2. 肛門に近い直腸がんにもできる限り肛門温存を目指しています。直腸がんでは術後の排尿機能や性機能障害が問題となりますが、ロボット支援手術の特長である詳細な観察と繊細な手術操作により極力機能を温存しています。また、肛門温存が不可能と判断される症例でも術前治療を組み合わせることで可能な限り肛門温存を目指します。
  3. 他の施設では治療を断念したような超進行がん・再発がんに対しても外科治療と抗がん剤治療・放射線治療を組み合わせてあきらめない治療を実践しています。われわれの再発直腸がんの手術成績は5年生存率約50%です。
  4. 多くの治験・臨床試験に参加し、他の施設で受けることの出来ない化学療法を受けることが可能です。

地域医療連携室を通して、毎日19時まで予約を受け付けています。
内視鏡治療・手術・化学療法・セカンドオピニオンなど、お気軽にご紹介・ご相談ください。インターネットで予約を取っていただければ待ち時間が少なくなります。

加藤 健志 月・火・水・木・金(手術・腹腔鏡手術・ロボット手術・セカンドオピニオン、大腸疾患に関するお問い合わせ)
高橋 佑典 (手術・腹腔鏡手術・ロボット手術・化学療法)
河合 賢二 (手術・腹腔鏡手術・ロボット手術・化学療法)
徳山 信嗣 (手術・腹腔鏡手術・ロボット手術・化学療法)
宮崎 道彦 肛門疾患専門

お問い合わせ

お問い合わせ 加藤健志 (TEL 06-6942-1331、MAIL kato.takeshi.hj@mail.hosp.go.jp)

肛門疾患・排便障害について

Ⅰ. 肛門疾患

肛門疾患の代表には次の3つがあります。

A. 痔核(いぼ痔)

痔核の治療には大きく分けて①内服や軟膏による保存的治療、②硬化薬剤による硬化療法〔薬剤で固める〕、③ゴムバンドによる痔核結紮(けっさつ)〔ゴムで縛る〕、④切除術の4つがあります。当院では以上の治療法をグレードに応じ決定しております(組み合わせ治療が必要な場合もあります)。

B. 痔瘻(あな痔)

肛門周囲に膿が溜まる「肛門周囲膿瘍」の多くの行く末でトンネル様になるのが特徴です。内服治療では完治はあり得ません。当院では痔瘻をタイプに分けて術式を決めております。診断には直腸肛門診だけでなくエコー検査やMRIで客観的に評価します。痔瘻の術式は肛門機能を損なうことが少ない括約筋温存術を初め、瘻管開放術、シートン法(痔瘻結紮術)などを症例に応じて決定しています。

C. 裂肛(きれ痔)

裂肛の治療は、まずは排便コントロールや軟膏などによる保存的治療ですが難治例や肛門狭窄(狭くなること)を伴うものは積極的に手術が必要と考えています。

Ⅱ.排便障害(慢性便秘症、便失禁)

慢性便秘症診療ガイドライン2017では「便秘」とは本来体外へ排出すべき糞便を十分量かつ 快適に排出できない状態。「症状名」でもなければ「疾患名」でもなく「状態名」である。と定義されています。

これまでの便秘の概念とは全く違った検査、治療を行っています。世間一般では「便が出ない」と言えば即「下剤」、「食物繊維」と簡単に済むように思われがちですが実際は簡単ではありません。巷でインターネットや通販などで簡単に漢方茶、下剤、洗腸療法キットが手に入ることは好ましくないことです。

慢性便秘症(排便障害)には大きく分けて結腸型(大腸型)と直腸肛門型があります。例えば水道に例えますと結腸型は「水道管」、直腸肛門型は「蛇口」にあたります。直腸肛門型はガイドラインでは「便排出障害」と記されています。水が出にくいのは「水道管」の問題なのか「蛇口」の問題なのか、すなわち大腸の問題なのか直腸肛門の問題なのかによって治療法が異なってきます。しかし、多くはこれらの原因を区別することなく単なる刺激性下剤(センナ、ダイオウ、アロエ含有)の内服で済まされているのが現状です。最初は良いのですがそのうち効かなくなり挙句の果てに大腸の粘膜が黒色化し神経が麻痺して腸が動かなくなることがあります。このような方は「食物繊維」、ヨーグルトなどの「発酵食品」摂取が逆効果になります。

A. 結腸型排便障害(「水道管の問題」)

いわゆる便秘症がこれにあたります。がんやポリープに代表される腫瘍性疾患の他、クローン病、潰瘍性大腸炎、感染症などの炎症性腸疾患、ダイエット、薬剤性や最近話題の過敏性腸症候群が原因のことがありますので先ずは大腸の精査をお勧めします。下記の直腸肛門型排便障害が除外できれば内服治療を開始します。

B. 直腸肛門型排便障害(「蛇口の問題」)便排出障害

便は直腸まで来るがそこから「出せない状態」や「出っ放しの状態」です。原因には次のような疾患があります。③から⑦は専門的検査が必要です。

  1. 直腸がん、ポリープ
  2. 直腸脱:肛門から直腸が脱出する病気。多くは便失禁を伴っていることが多い。当院では腹腔鏡下直腸固定術を第一選択にしています。
  3. 直腸重積(下図①参照):過度のいきみで直腸が陥入し便が出しにくい状態。直腸脱の前状態と考え直腸脱と同様に腹腔鏡下直腸固定術を行います。
  4. 直腸瘤(ちょくちょうりゅう)(別名直腸腟壁弛緩症) (下図②参照):直腸と腟の壁が薄く排便のいきみで腟側に直腸がポケット状に突出し便を出しにくい状態。子宮摘出の既往のある人に多い。内服治療が無効な際には経肛門的または経腟的に手術を行います。
  5. 恥骨直腸筋奇異性収縮(下図③参照):肛門括約筋の一つである恥骨直腸筋が排便時に本来、緩まなければならないのが緩まない状態。骨盤底筋協調運動障害のひとつです。理学療法が第一選択です。
  6. 直腸がん術後症候群:直腸がんの手術を受けた後(人工肛門にはならなかった)排便コントロールが安定しない(「排便回数は多いが量が少ない」「便とガスの区別がつきにくい」「残便感がある」などの症状)状態。
  7. 便・ガス失禁:年齢、お産、外傷、直腸肛門の手術などが原因で便やガスが漏れてしまう(下着を汚してしまう)状態。お産後何年も経ってから症状が出ることも珍しくありません。また、肛門でなく大腸が原因で失禁を来たすこともあります。諸検査後、先ずは内服治療が第一選択ですが無効な場合には括約筋形成術、人工肛門造設、仙骨神経刺激療法(ペースメーカー留置)などの手術を行います。

排便障害全般的に言えることですが診断には内視鏡検査のほか、肛門内圧検査、直腸感覚検査、排便造影検査などの専門的な検査(院外)が必要です。治療には長時間かかり即効、短期決戦は無理な方がおられます(中には短期で治る方もおられます)。