近況報告
糖尿病の有無による、持続性心房細動に対する低電位領域アブレーションの有効性に関する、循環器内科医師の尾崎医師の研究成果がJAHAに掲載されました。
2026年07月23日(木)
持続性心房細動に対するカテーテルアブレーション治療において、糖尿病の有無が肺静脈隔離後の追加治療の有効性に影響する可能性が示されました。多施設ランダム化比較試験である SUPPRESS-AF試験 のサブ解析により、低電位領域アブレーションの効果が患者背景によって異なる可能性が明らかになりました。
患者さん・社会への貢献
対象は、持続性心房細動に対して初回カテーテルアブレーション治療を受ける患者さん、特に肺静脈隔離後に左心房の低電位領域を認める患者さんです。糖尿病を合併している患者さんにも関係する内容です。
持続性心房細動に対するアブレーションでは、基本治療である肺静脈隔離に加えて、低電位領域アブレーション等の追加治療を行うかどうかが重要な判断になります。本研究は、糖尿病の有無によって追加治療の効果が異なる可能性を示しており、患者さん毎により適した治療戦略を選ぶことにつながります。
将来的には、効果が期待できる患者さんには適切に追加治療を行い、効果が乏しい可能性のある患者さんでは不要な追加治療を避けることで、治療成績の向上、手技時間の短縮、合併症リスクの低減、患者さんの身体的負担の軽減に貢献することが期待されます。
発表のポイント
- 持続性心房細動に対するカテーテルアブレーション治療において、糖尿病の有無が追加治療の効果に影響する可能性を示しました。
- 肺静脈隔離後に左心房の低電位領域を追加で治療する「低電位領域アブレーション」は、糖尿病を合併していない患者さんでは不整脈再発を減らす可能性が示されました。
- 一方で、糖尿病を合併する患者さんでは、低電位領域アブレーションを追加しても明らかな有効性は認められず、効果が乏しい可能性が示唆されました。
- 糖尿病を合併する患者さんでは、追加アブレーション後に心房頻拍として再発する割合が高い可能性が示されました。
- 「低電位領域があるから一律に追加治療を行う」のではなく、糖尿病などの患者背景を踏まえて治療方針を選択する重要性を示す研究です。
研究の背景
心房細動アブレーションでは、肺静脈隔離が基本治療ですが、持続性心房細動では再発する患者さんも少なくありません。そのため、左心房の線維化や傷みを反映するとされる「低電位領域」を追加で治療する方法が行われてきました。
一方で、低電位領域アブレーションがどのような患者さんに有効かは十分に分かっていませんでした。
本研究では、心房細動と関係の深い併存疾患である糖尿病に着目しました。
研究の手法
本研究は、多施設ランダム化比較試験である SUPPRESS-AF試験 のサブ解析です。
持続性心房細動に対して初回アブレーションを受け、肺静脈隔離後に左心房の低電位領域を認めた患者さんを対象としました。
肺静脈隔離のみを行う群と、低電位領域アブレーションを追加する群を比較し、その効果が糖尿病の有無で異なるかを検証しました。
研究の結果
持続性心房細動患者1347例のうち、343例に左心房の低電位領域を認めました。
糖尿病を合併していない患者さんでは、低電位領域アブレーションの追加により心房細動・心房頻拍の再発率が低下しました。
一方、糖尿病を合併している患者さんでは明らかな再発抑制効果は認められず、心房頻拍として再発する割合が高い可能性が示されました。

今後の展開・社会的意義
本研究は、心房細動アブレーションを「全員に同じ治療」ではなく、「患者さんの背景に応じた個別化治療」へ進めるための知見です。
今後は、糖尿病の重症度や血糖管理状況、左心房の線維化の程度などを含めて、追加治療が有効な患者さんをより明確にしていく必要があります。
将来的には、より安全で効果的な心房細動治療の選択につながることが期待されます。
研究者コメント
尾崎立尚(筆頭著者)
持続性心房細動に対するアブレーションでは、すべての患者さんに一律に追加治療を行えばよいわけではありません。今回の研究から、糖尿病の有無等、患者さん一人ひとりの背景を踏まえて治療方針を考えることの重要性が示されました。
本研究は、多施設ランダム化研究を基盤とした質の高い臨床データを用いて、糖尿病という身近な併存疾患が追加アブレーションの効果に影響する可能性を示したものであり、日常診療に直結する知見だと考えています。
本研究にご協力いただいたすべての患者様に、心より感謝申し上げます。
井上耕一
本研究は、大阪大学循環器内科の仲間たちとおこなった多施設共同の厳格なデータに基づき、糖尿病の有無という身近な臨床指標が治療効果を左右することを明確に証明しました。
このよう研究成果を世界的権威のある『JAHA』誌に発表できたことを大変誇らしく、嬉しく思います。この知見が広く共有され、心房細動治療の安全性と確実性がさらに向上することを期待しております。
用語解説
心房細動
心臓の上の部屋である心房が不規則に震える不整脈です。動悸、息切れ、疲れやすさの原因となるほか、脳梗塞や心不全のリスクにも関係します。
持続性心房細動
心房細動が自然には止まりにくく、7日を超えて続くタイプの心房細動です。発作性心房細動と比べて治療後の再発リスクが高いことがあります。
心房頻拍
心臓の上の部屋である心房から、規則的に速い電気信号が出る不整脈です。心房細動とは異なり、比較的規則的なリズムで脈が速くなることが多く、動悸、息切れ、胸部不快感などの原因になります。心房細動に対するアブレーション治療後に生じることもあり、追加治療によって心房内の電気の通り道が複雑になることが一因と考えられています。
カテーテルアブレーション
足の付け根などの血管から細い管を心臓まで進め、不整脈の原因となる部位に治療を行う方法です。
肺静脈隔離
心房細動の主な原因となる肺静脈周囲の電気信号を、左心房から隔離する治療です。心房細動アブレーションの基本となる治療です。
低電位領域
心臓内の電気信号が弱く記録される領域です。心房筋の線維化や傷みを反映している可能性があり、心房細動の維持や再発に関係すると考えられています。
低電位領域アブレーション
肺静脈隔離に加えて、左心房内の低電位領域を追加で治療する方法です。持続性心房細動の再発抑制を目的に行われることがあります。
糖尿病
血糖値が高い状態が続く病気です。動脈硬化や腎臓病、心不全だけでなく、心房細動の発症や再発にも関係すると考えられています。
論文情報
原文タイトル:Impact of Diabetes on the Efficacy of Low-Voltage Area Ablation for Persistent Atrial Fibrillation: A Subanalysis of the SUPPRESS-AF Trial
日本語タイトル:持続性心房細動に対する低電位領域アブレーションの有効性に糖尿病が与える影響:SUPPRESS-AF試験サブ解析
掲載誌:Journal of the American Heart Association
DOI:10.1161/JAHA.125.047450
掲載年:2026年6月15日
原文掲載URL:https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.125.047450
研究内容に関するお問い合わせ先
国立病院機構 大阪医療センター 循環器内科 尾崎立尚
TEL:06-6942-1331
E-mail:ozaki.tatsuhisa.gh@mail.hosp.go.jp
取材に関するお問い合わせ先
国立病院機構 大阪医療センター 広報企画室
TEL:06-6942-1331
E-mail:onh_pr@kamibu.co.jp
井上耕一 循環器内科科長が「Best Doctors in Japan」および「ドクターオブドクターズネットワーク」に継続選出されました
2026年07月16日(木)
この度、当科の井上耕一科長が「Best Doctors in Japan 2026-2027」および「ドクターオブドクターズネットワーク 評議員・専門医(2026-2029)」に選出・任命されましたことをご報告いたします。
これらは、第一線で活躍する医師同士の相互評価や推薦に基づき選ばれるものであり、井上科長はこれまでも長年にわたり継続して選出され続けております。今回の同時選出は、これまでの診療実績と、高度な専門医療への絶え間ない貢献が改めて高く評価された結果です。
当科ではこの確かな実績を礎に、今後とも最高水準の循環器医療を提供し、地域の患者様や連携医療機関の皆様の期待に応え続けられるよう、医局員一丸となって全力を尽くしてまいります。


上田恭敬先生が「Doctor of Doctors Network 優秀専門臨床医」に選ばれました
2017年03月30日(木)
上田恭敬先生がティーペック株式会社からDoctor of Doctors Network 優秀専門臨床医 2016-2019に選ばれました。
http://www.t-pec.co.jp/service/dd_yuushuusenmoni.html
優秀専門臨床医とは、ドクターオブドクターズネットワーク評議員会において全会一致のもと選考され、当サービスに賛同した医師。高いレベルの専門性を有した現役の臨床医。
優秀専門臨床医の推薦基準
- 評議員本人もしくは、家族が入院や手術が必要となった場合に、お願いしたいと思う専門医。
- 患者からも医師からも信頼がおける高いレベルの専門性。
- 人間味豊かで患者の立場にたった治療。
- 現役の臨床医。
優秀専門臨床医の選考基準
- 評議員全員(関東評議員会、関西評議員会、東海評議員会、北海道評議員会、東北評議員会、九州評議員会)が選考。
- 評議員一人でも反対があった場合選考されない。
STOP MIキャンペーンの主旨を説明します
2017年03月15日(水)
心筋梗塞を予防して、命を落とさないようするための啓発活動である「STOP MIキャンペーン」の主旨を説明する動画を作ってみましたので、是非ご覧下さい。









上田恭敬先生が市民公開講座で講演
2017年03月07日(火)
上田恭敬先生が2017年3月19日(日曜日)14:00~16:00に金沢市文化ホール(展示棟2階 大集会室)でおこなわれる第15回心肺蘇生法市民公開講座「命の大切さを考える」において、「心筋梗塞で命を落とさないために?心筋梗塞の前兆とは?」についての講演をおこなう。
上田恭敬先生が毎日放送サタデープラスに出演
2017年02月21日(火)

上田恭敬先生が2017年2月18日(土曜日)8:00~9:30に放送された毎日放送(MBS)サタデープラスに出演し、ニッポン健康百景「血管が若返るキセキの島 小豆島」において動脈硬化予防のための生活習慣について解説した。
サタデープラスへの出演は今回で5回目となる。過去の出演は下記の通り。
2015年05月02日 「突然死から身を守れ!心臓からの危険信号を見逃すな!SP」
2015年12月05日 「長野県の健康食材」
2016年05月28日 「関根勤の心臓手術に完全密着」
2016年09月03日 「緊急手術から3か月 関根勤の今に密着」
FFRct検査を導入しました

