診療科・部門

慢性肝炎

1. B型慢性肝炎

B型慢性肝炎は臨床像が複雑で、経過観察でよい非活動性キャリアから、放置すれば肝硬変へ進展しうる活動性肝炎まで様々な病態が存在します。また、落ち着いていた非活動性キャリアが急に活動性肝炎へ移行したり、未だ肝硬変へ進展していない若年者が肝癌を発症したりすることもあり、定期的な経過観察が必須です。B型肝炎ウイルス増殖に伴い慢性的な活動性肝炎が生じている方を対象に抗ウイルス治療を行います。抗ウイルス治療は、ウイルスに対する免疫を刺激するインターフェロン治療と、B型肝炎ウイルス増殖を抑える核酸アナログ製剤の治療があります。現時点では、抗ウイルス治療によりB型肝炎ウイルス増殖を抑えることは可能ですが、ウイルスを直接駆除することはできません。B型慢性肝炎の治療目的は、ウイルスの活動性を鎮静化させ、活動性肝炎からの肝硬変進展・肝癌発症を抑えることです。

2. C型慢性肝炎

この数年間でC型肝炎治療は急速に進歩しました。以前は発熱や倦怠感といった副作用の強いインターフェロンを注射する治療しかありませんでしたが、2014年以降は飲み薬だけで副作用も殆どなく100%に近い確率でC型肝炎ウイルスを排除できる薬剤(直接作用型抗ウイルス薬(Direct Acting Antivirals; DAA))が開発されました。これにより、以前はインターフェロン治療でウイルスを排除出来なかった方や、高齢や合併症、肝硬変に進行しているなどの理由でインターフェロン治療を行えなかった方も安全に抗ウイルス治療を行えるようになりました。また、HIV感染症を合併しているC型肝炎患者さんに対しても、C型肝炎ウイルス単独感染患者さんと同等の良好な治療成績が得られたことを報告しました。
(Ishida H, et al. Hepatol Res. 2019, in press https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31074580 )

抗ウイルス治療によりC型肝炎ウイルスを排除できても、C型肝炎に対する診療は終わりではありません。ウイルス排除前までに進展した肝線維化の度合いに応じて肝癌発症の危険性が残ります。よって、ウイルス排除後も腹部超音波検査などの定期的な画像検査が必要です。

3. 脂肪肝、脂肪性肝炎

過量の栄養摂取が原因となる脂肪肝は、日本を含めた先進国で増加しており、人口の約30%が脂肪肝に罹っていると言われるほど極めて頻度の高い生活習慣病です。以前は、脂肪肝は治療不要で問題のない疾患と考えられていましたが、最近は脂肪肝の一部は肝臓内に炎症を伴う非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis; NASH)を経て重症化し、肝硬変、肝癌へと進行することが明らかになりました。肝癌患者に占めるNASH患者の割合も増加傾向にあります。単なる脂肪肝なのか、重症化するNASHなのかは血液検査だけではわかりませんので、健診などで脂肪肝を指摘された方は専門医を受診し詳しい検査を受けて下さい。治療に関しては、現在のところ減量が唯一医学的な有効性が示された治療法です。今後は脂肪肝に有効な薬剤開発が望まれています。