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労作性狭心症・無症候性心筋虚血

病気の説明

病気の説明

心臓に血液を送っている血管(冠動脈)に動脈硬化を生じ、狭くなった(狭窄)ために、心臓の筋肉に必要な血流が届いていない状態を虚血と言います。特に労作時にはより多くの血流が必要になるのですが、冠動脈の狭窄のために、心臓の筋肉に必要な血流が届ずに生じる胸部症状を労作性狭心症と言います。 またご高齢または糖尿病をお持ちの方は、心臓の筋肉が虚血状態にあるにもかかわらず、症状を自覚しないことがあり、無症候性心筋虚血と言います。 症状を自覚しない無症候性心筋虚血であっても、労作性狭心症と比較して、予後は同等・またはより不良というデータもあり、無症状であっても精査・加療が必要です。 労作性狭心症の段階では、心臓の筋肉が壊死に至っていない場合が多く、この段階で診断・治療ができれば、その後大きな後遺症なく生活していけることが多いですが、治療せずに放置している場合、不安定狭心症や急性心筋梗塞に進展してしまう危険性があります。

症状

胸部前面を中心に、圧迫感・絞めつけられるような感じ・つまるような感じで,一本指で指すことのできない漠然とした痛みが典型的な症状です。 身体的労作(坂道や階段を昇る、仕事や家事、入浴など)が誘因となって胸部症状が現れ、安静やニトロペンなどの硝酸剤によりほとんどが数分から10分以内で改善します。 時に上腹部や左肩、または首や顎に広がる症状を呈することがあり、放散痛と言います。このため患者さんによっては「胃が痛い」、「歯が痛い」と言う症状で病院に来院されて、狭心症の診断を受けることもあります。

検査

冠動脈CTA LAD病変
CAG LAD病変

冠動脈に狭窄があっても安静では必要な血流が確保されているため、安静時に行う心電図などの検査では異常を検出できないことが多いです。このため、検査の際には運動または薬剤による負荷検査が有用です。一般に負荷心電図、トレッドミル検査、負荷心筋シンチグラムで虚血の検出が可能です。最近では造影剤を用いた心臓CTを撮像することにより冠動脈の狭窄を発見される機会が増えています。 これらの検査から労作時狭心症または無症候性心筋虚血が疑われた際には、待機的に心臓カテーテル検査目的に入院いただく必要があります。

治療

一般に冠動脈の狭窄に対する治療法として、カテーテルによる治療(経皮的冠動脈形成術:PCI)、外科的手術による冠動脈バイパス手術、または内服加療、の選択肢があります。より効果的に心臓の筋肉への血流を増加させる方法としては経皮的冠動脈形成術、または冠動脈バイパス手術による血行再建術があり、患者さんの病変箇所・病変形態により、どちらが適切な治療法かを判断します。 経皮的冠動脈形成術(PCI)はカテーテル(細長い管)を用いて血管内から治療を行い、バルーン(風船)やステント(金属のコイル)で血管の狭窄部位を広げます。動脈硬化が進展し石灰化を含む病変に対しては、ドリル(ロータブレーター)で石灰化病変を削ることもあります。血管内から治療を行うため、患者さんへの侵襲が少ないです。ただしより重症な病変の場合や他の心臓のご病気(弁膜症など)をお持ちの場合は、冠動脈バイパス手術が必要となることもあります。 また、狭窄部位を治療後にも、今後の狭窄の新規出現または再発を予防のために、動脈硬化の危険因子である、高血圧・脂質異常症・糖尿病に対する治療の継続と禁煙が必要です。