遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)について
遺伝性乳がん卵巣がんは、一般の方よりも高い確率で、乳がんや卵巣がんを発症する体質です。BRCA1、BRCA2という2つの遺伝子の変化の有無が関係しています。女性は乳がんや卵巣がん、男性は前立腺がんや男性乳がんなどを発症しやすく、また性別を問わず、膵がんのリスクもやや高くなると言われています。この体質を有する方は少なくなく、一般の方のうち300-400人に1人がこの体質であると考えられています。
乳がんは、若い年齢から適切な検診を定期的に受けるなどの対策によって、早期発見・治療が可能といわれています。一方、卵巣がんには現時点で有効な検診方法がなく、早期発見が難しいため、35歳以降(出産を終えたあと、婦人科医師と相談の上)の予防的手術のみが、卵巣がんの発症を予防するのに有用といわれています。
乳がんまたは卵巣がんと診断されたことのある方
2020年4月より、乳がんまたは卵巣がんと診断されたことがある方で、HBOCと診断された方(遺伝子の検査を受けて陽性の判定となった方)は、乳房の予防的手術および再建、卵巣卵管の予防的摘出、乳房造影剤MRI、エコーなどを用いた検診が保険適用で受けられるようになりました。ただし、検診などで早期に病変をみつけられる可能性が高い乳房については、卵巣と同様に予防的切除も選択肢の1つではありますが、必ずしも推奨されるわけではありません。
乳がん、卵巣がんの診断を受けたことがない方
これまでに乳がん、卵巣がんの診断を受けたことはないが、ご家族の中に乳がんや卵巣がんの方がいて気になるという方も、遺伝カウンセリングの対象となります。遺伝子の検査や遺伝カウンセリング費用は原則自費となりますが、ご自身の情報を得ることにより、適切な健康管理やがんの発症や予防につながる可能性があります。また血縁者に、すでに遺伝子の検査を受けた方がいらっしゃる場合、その結果をもとに、通常よりも安価に遺伝子の検査を受けていただけることがあります。詳しくはお問い合わせください。
ご自身が、遺伝子の検査や検診、予防的手術の保険適用対象となるかなど、 詳しく知りたい方は、当院の乳腺外科または婦人科の主治医にご相談いただくか、✉408-iden@mail.hosp.go.jp、 または問い合わせフォーム にお問い合わせください。
遺伝性乳がん卵巣がんの遺伝子の検査が保険で受けられる方
女性
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乳がんと診断されたことがあり、以下のいずれかに該当。
- 45歳以下の乳がん発症。
- トリプルネガティブ乳がんの場合は60歳以下。
- 両側乳がん、もしくは同側に2回以上の乳がん。
- 第3度近親者内(親、子、きょうだい、祖父母、おじおば、孫、いとこ)に乳がんまたは卵巣がんと診断された方いる。
- 卵巣がん、卵管がん、腹膜がんと診断されたことがある。
男性
- 男性乳がん(年齢問わず)。
MEMO
米国の女優アンジェリーナ・ジョリーさんは母、母方祖母、母の姉妹など、血縁者の多くが乳がんや卵巣がんと診断されていました。アンジェリーナさん自身は、乳がんや卵巣がんと診断されたことはありませんでしたが、BRCA1、BRCA2遺伝子の検査を受けることを決め、遺伝的に乳がんや卵巣癌になりやすい体質「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」と診断されました。
その後、がんの予防を目的に、30代で乳房と卵巣卵管を切除することを決意し、自身の経験をメディアで公表しました。アンジェリーナさんは、HBOCに対する世間一般の認知が広まり、より多くの人が適切な検診や予防的切除などの対策を取ってほしいと語っています。