診療科・部門

増田 慎三 医師

現状に満足せず、
常に新しいことにチャレンジしたい
そんな若い先生が活躍できる
機会と場を提供します

外科医長・乳腺外科科長
増田 慎三 医師

私が研修医をしていた時代と今とでは、外科治療に対する考え方も研修システムも大きく変わりましたが、自分自身の研修医時代を振り返ったとき、気力も体力も充実している若い時期に、多くの患者さんと出会い、さまざまな症例を経験できたことは、成長の糧となりました。研修医時代を充実した環境で過ごすことは、間違いなく将来の大きな力になると言えるでしょう。

研鑽を続けた研修医時代に、乳腺外来の選択を決断

私が乳腺専門医になろうと決めたのは、研修医時代のこと。研修先である大阪逓信病院は、当時ちょっとユニークな病院でした。外科指導医の先生方はもちろん一般/消化器外科全般において経験豊富である一方で、部門別のチーフ制が浸透しており、必ず毎朝の院長回診とカンファレンスで統一した治療方針が遂行されていました。それぞれのエキスパートから研修医は最先端の医療を学ぶことができました。自分の特徴や持ち味はどこになるのかと考えながら、研修医同士で切磋琢磨しながら、研鑽を続けることができた充実した3年間になりました。

私は、がんの患者さんから数多くの学びを得てきましたが、乳がんの患者さんとの出会いが特に印象に残っています。初診の診断から、治療方針を決めて、手術や薬物治療、放射線治療を行い、全身を診る疾患です。女性ホルモン環境にも大きく影響する病気ですから、それらを抑える治療は、女性の健康そのものにも直結します。万が一再発したら、再び治療を継続。同じ患者さんと長く付き合っていけるだけでなく、乳がんは好発年齢が40~50歳になるため、女性の人生にとって大切な時期にある患者さんとともに歩むということにも魅力を感じました。

大阪医療センター乳腺外科の3つのキーワード

乳がんは、日本女性のがんの中で罹患率第1位。現在も乳がん患者は増え続けています。乳がんの治療は多岐にわたり、かつ専門性が要求される分野。しかし、日本における乳腺外科の専門医は決して多いとはいえません。当センターの乳腺外科では、「早期発見」(マンモグラフィや高精度乳腺エコーなどハード面の整備と診断精度の維持)、「適切な個別化治療」(乳房温存手術とセンチネルリンパ節生検、薬物療法、放射線治療)そして「新規開拓」(術前化学療法や臨床試験と治験)をキーワードに、診療と研究を行っています。 乳がんの臨床には、外科医以外のエキスパートの力も不可欠。看護師、薬剤師、病理診断医、放射線科医、診療放射線技師、臨床検査技師などと連携したチーム医療を推進しています。再発すれば整形外科や脳外科の専門家にもお世話になりますし、副作用で困れば、総合内科医、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、循環器科、歯科など各専門医にもお世話になります。国立病院機構大阪医療センターが“総合病院である強み“です。毎週定期的に実施するカンファレンスでは、乳腺外科全体の合意として各患者さんの治療方針を決定しています。昨年あるメディアの特集記事で、がん診療拠点病院の5年生存率によるランキングが発表され、当センターの乳腺外科が全国3位と報じられました。これは、私たちが今までやってきたことが数字として表れた結果だと大変誇らしく思っています。

自分で考え、動けるように、研修医を手厚くサポート

冒頭で述べたように、私自身が充実した研修期間を過ごせたこともあり、若い先生にはこの期間にできるだけたくさんの経験を積んでもらいたいと思っています。乳腺外科は、自分が主体的に動いていかなければ成長できない分野。研修医が早い時期から術者の立ち位置で手術を行い、上級医の先生が指導とサポートを行います。また、治療方針の決定など、何か重要な判断をする際には、必ず自分で考えること。考えた内容を、カンファレンスなどできちんと自らの言葉にして伝え、そこから活発な議論を交わしていくという一連の流れもしっかりと身につけてほしいと思います。

当センターの乳腺外科では、標準治療の知識や経験ももちろん得られます。また、臨床試験や治験にも力を入れているので、一歩あるいは二歩先の治療や考え方も身につけることができるでしょう。学会や会議だけでなく、全国あるいは海外の乳腺専門医とのネットワークもあるため、希望すれば彼らとのコミュニケーションの機会を得ることも可能です。また、私自身はこれまで導き出してきた“治療の最適化”を若い先生方に、伝えていく義務があると感じています。現状に満足せずに、常に新しいことに取り組みたい―。そんな意欲のある研修医が活躍できる機会を作り出していきます。

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